back
to menu

Believe

へろろーん。久しぶりに小説だー。
FF9がもうすぐ発売されるし、なんとなく未練がましい(謎)感じだけど。
FF8のスコリノらぶらぶでいってみよー!!(バカ)


「実は、面倒を見てもらいたい人がいるのです。」
学園長室に呼び出されたスコールに学園長はそう言った。
スコールにはその言葉が極めて不快に聞こえた。
「面倒を・・・・?」
彼は眉間のしわを深くしつつ聞き返した。
「えぇ、女の子なんですけどね、先日SeeDになったばかりなんですよ。」
「なぜ、僕が面倒を見なければならないんですか?」
歯に衣着せずにスコールは言った。
「まぁ、そう言わずに聞いてください。その子はまだ14歳なんです。SeeDになれるのは15歳からなんですが、特進でSeeDになったんです。しかし、やはり、まだ判断力がないというか、とにかく、君の仕事を見学させてあげてほしいんです。」
相変わらず笑顔を崩さずに言う学園長に、スコールは言葉をなくしてしまった。
自分は人に面倒をみてもらうことなどあまりなかった。自分一人で生きようと決めてからはずっとそうだ。だから、人に面倒を見てもらっている人間は嫌いだった。
ただの僻みでもあったのかもしれない。
それは認めてもよかった、だが、やはりいい気分ではなかった。
「どうぞ、入ってきてください」
スコールの有無も聞かずに放たれた言葉に促され、一人の少女が入ってきた。
「レナです。よろしくお願いします。先輩。」
にこりと笑ったその表情にはまだ幼さが残っていた。その隣では、学園長も穏やかに微笑んでいた。
「わかりました・・・・・・・・。引き受けます・・・・・」

確かに、レナはすごかった。
その日、スコール達の戦闘に居合わせたとき。その実力は発揮された。
「ファイアぁ!!!!」
少女の掲げた華奢な両手から放たれた火球は、本来唱えられた呪文の3倍以上のファイガ級であった。瞬時にして焼け焦げたモンスターの屍を見下ろしたスコールはその力を実感させられた。
これなら、すぐにでもSeeDとして一人前に仕事をしていいはずではないか。
はじめのうちは持ちつづけていたスコールのそんな疑問は二日目にはすっかり消えうせた。

「・・・・あんたに教えてもらうことなんてない。」
二日目、仕事で戦場にむかう途中の列車のキャビン、突然レナはスコールにむかってそう言い放ったのである。
スコールが、戦闘の内容を説明しようとしたときだった。
「勘違いしないで、アタシあんたに面倒見てもらうつもり、最初からなかったから。アタシ、あんたよりも強いって、自信あるのよ。それに・・・・・」
少女は唇を歪めた。
「男は信用しない性分なの。」
踵を返し、レナはキャビンから出ていった。
これにはスコールも驚いた。見るからに、優等生といった感じの第一印象を持っていたため、この落差は相当のものだった。
同時にスコールは急激に不安を覚え始めた。
レナがとんだ二面性を持っているのは、全く、構わない。しかし・・・・・・
(あんなのを俺が面倒を見るのか!?)
無意識のうちにスコールは自分にこの仕事を任せたあの学園の創立者を呪わずにはいられなかった。
他人が、どんな性格だろうと、関係ないのである。別にそんなことに興味はないし、勝手にしてくれ、と思うのだが、面倒を見るとなればそれは違う。
レナと入れ違いに入ってきたセルフィは通路を去っていくレナに目をやり、
「なんか、感じ悪いね〜、あの子」
と眉をひそめた。
SeeDはあくまでも「ガーデンが世界に誇る傭兵」なのだ。
その傭兵が、指令を聞かずに成り立つはずがない。
それにしても、学園長にはいい子モードで接していたレナを学園長はあえて正式なSeeDにせずに、スコールに世話を頼んだ、ということは、彼にはレナの本性が見ぬけていたのだろうか。

戦場についた時も問題の少女は強力な魔力にものを言わせ、つぎつぎと敵を排除していき、活躍したのに間違いはないが、スコールの注意を聞いていなかったがために、問題を起こしたのだった。
そのしわ寄せは当然、監督者であるスコールに回ってきた。
いつも顔を隠すような不気味な格好をしているガーデン教師にねちねちと説教され、挙句の果てに、SeeDレベルまで落とされたのである。
不本意極まりなかった。

「スコール、聞いてる?」
我に返ったスコールの顔を心配そうに覗き込んでいたのはリノアだった。
レナが来てから六日目の夜、スコールとリノアはガーデン2階のデッキで会っていた。
忙しい仕事の合間を縫って会うときはここで、と二人で決めた場所だった。
今日、スコールは最近本当に忙しかったため二人で会うのは一週間ぶりだった。
しかし、せっかく久しぶりに会ったのに、仏頂面でずっと遠くを見ているだけの男に、リノアは不安になった。話しかけても、あいまいに返事をするような反応しか示さなかったのである。
「仕事、大変なんだよね」
黒髪の少女は一生懸命笑顔を作った。
まるで、スコールが昔の冷血で無愛想な男に戻ってしまったかのような気がして、必死に彼が微笑み返してくれるのを待った。
しかし、男は笑わなかった。表情ひとつ変えず、身動ぎさえしない。
その眼が自分を冷たく見下ろしているような気がして、リノアは不安げに瞳をさまよわせた。
スコールには目にはリノアが、なんだか、無神経でなにも考えてない生き物のように映っていた。
自分がとても大変なのをまるでわかったようなフリをしている。そんな気持ちさえわいてきて、それが怒りに変わるのは時間の問題だった。
スコールの凍りついたように動かなかった無表情な顔が、次第に憤慨しているような表情に変わっていくのを、リノアは見た。
このままではスコールが自分から離れていく、そんな気がした少女は必死に、スコールを引き戻そうと考えた。
そして再度、精一杯の笑顔を作った。
「スコール、笑ってよ。」
その瞬間、スコールの中でなにかがプツリときれた。
「あぁ、わかった。わかったよ。笑えば、笑えばいいんだろ!?」
急に声を荒げ、唇を割り、かなり強引に笑顔を作った。
かと思うと、急に冷たい表情のない顔に戻り
「これで満足か!?」
と恋人に向けるにはふさわしくない、突き刺すようないいかただった。
見る見るうちに、リノアの黒瞳がうるんだ。
「なっ・・・なによっ!そんないいかたするわけ!?元気付けてあげようとしてるのに!」
「余計な世話なんだよっ!」
「も・・・・もういいよっ!!!!!」
リノアはたまらなくなって駆け出していった。エレベーターの前でばったりアーヴァインに会ってしまい、アーヴァインが真っ赤になった瞳をみて「あ」と口を開けた瞬間、少女は有無を言わさぬ勢いでエレベーターに駆けこみ、ドアを閉め、一階に行ってしまった。
デッキに一人残ったスコールは、体の周りの温度がずいぶん低いことに気がついた。
それが、気温のせいだけではない、ということには気がつかなかったが。
「喧嘩でもしたのかい?」
背中に声がかかったのはそのときだ。その声の持ち主が誰かわかっていたため、スコールは振り向かなかった。星空に目を向けたまま動かない。
「かわいそうに、リノア、泣いてたよ〜。」
テンガロンハットの男はゆっくりとスコールの隣に歩いてきて手すりにひじを持たせかけると、スコールと同じ格好をしてして夜空を眺めた。 すれ違ったときのリノアの涙を不信に思い、やってきたのだ。
「リノア、サイファーのとこにでもいったかもね〜、それでなくてもスコールがあきらめるなら、リノアは僕がもらっちゃおうかな〜?」
スコールの顔は仮面のように動かなかった。
「リノアに、嫌われちゃ」
「うるさいな」
アーヴァインの言葉を強引に切ってスコールがまたも怒鳴った。
「かわいそうに」
アーヴァインは短く呟いた。
「ホントに、かわいそうだね、あんたは。」
再び呟いたアーヴァインをスコールがギロリと睨んだ。
「なんで俺がかわいそうなんだ?」
「いろいろ、忙しすぎて、気が滅入っちゃって、恋人に傷をつけたことも気づかないくらい気が滅入っちゃって、本当にかわいそうなスコール君。」
アーヴァインが唇の端を持ち上げ、皮肉っぽくニッとした瞬間、急に電灯が消えた。
「おっとっと、12時だ。消灯の時間だ。早くしないと、ここも閉められちゃうね〜。」
スコールとアーヴァインはエレベーターで一階におりてきた。
幸い、まだロックはかけられていなかった。一階につき、アーヴァインは自室に帰っていったが、スコールは図書館前のベンチに座り、一人考え込んでいた。

そのころ、寮のほうに歩きついていたアーヴァインは、一人の人物に会い。スコールのことを話していたのだった。

深夜の2時になってもスコールは立ちあがらなかった。
しかし、さすがに睡魔が襲ってきたのか、時折瞼を重たそうに閉じたりしていた。
そして、とうとうまどろみかけたときだった。
「スコール先輩!!!」
閉じかけた瞼をこすり、向こうから走ってくる影を見極めようと、スコールは目を細めた。しかし、それは、彼がいま、一番見たくもない顔だった。
「レナ・・・・・・」
既に会いたくもなかったというのが如実にスコールの顔に現れていたらしい。
「そ、そんなに嫌な顔しないでください。謝りに来たんですから」
少女は苦笑した。なぜか、丁寧な口調である。
「すいません、ほんっとにすいません。」
「どうしたんだ?」
と少女の監督者は再び不安になった。レナが謝っているのだ、きっと、相当とんでもない問題を引きおこしたに違いない、と直感的に感じていた。約一週間レナを見てきて、その性格は実感してきたつもりだった。レナが教官たちがいるわけでもないのに謝るなど、よほどのことがない限り考えられなかったのである。
「だっ・・・・て、先輩は、私のせいで・・・そ、その、かの・・・彼女・・・と喧嘩した・・・・・って・・・・・・」
なぜか問題児レナは言葉をつっかけながら言う。その瞬間、スコールの顔が凍りついた。
「誰がそのことをっ!?」
「セルフィ先輩が教えて・・・・っていうか、それでお説教されちゃいました。『あんたが問題ばっかり起こすから、スコールが苛立ってリノアと喧嘩してしもたんや!謝ってきィ!』って」
少女はセルフィの口調をそのまま真似て言った。
(セルフィ!?なんでセルフィが知って・・・!?・・・・アーヴァインが言ったのか・・・・・!?)
目を大きく見開いたまま動かないスコールに、レナは言った。
「すいません、私何度でも謝りますから、リノア先輩に謝ってきてください。ほんとは、ほんとは私がリノア先輩に謝るべきなんですけど、でも、私が謝ったってどうしようもないし・・・・」
「あんたは関係ない」ら喋っていたのを遮るように唐突に放たれた言葉にレナは顔色を変えた。
「・・・・・・やっぱり・・・・、男は信用ならんっ!!」
元のレナの口調に戻っていた。まだ子供っぽい頬を真っ赤にしている。
「最悪だ!最悪だ!せっかく謝りに来てやったのに、意地なんか張りやがって!!ふんっ!勝手にすればいい!リノア先輩はあんたにはもったいないんだ!あんたみたいなバカ男は先輩とつりあわないんだからっ!!」
少女は早口ではき捨てると、喋りすぎたのか、ぜいぜいと肩で息をしていた。先ほどまでの「丁寧で遠慮気味な後輩」の態度は微塵も見られなかった。少女は少し息をつき、静かに言った。
「・・・・・頭に、血が上りすぎました。すいません。・・・・・・・・・・・行ってください。」
スコールは答えなかった。
「リノア先輩がガーデンから出て行くの、アタシ、見たよ。」
スコールの肩がわずかにぴくんと反応した。
「もう、戻ってこないかもしれないね!?」
突然、スコールは立ちあがった。レナはその意味を理解してようやく頬を緩めた。
スコールは駆け出していた。

日も、だんだん出てきた。あたりが少し明るくなってきた。
真っ白な朝靄のなかを目のさめるような鮮やかな水色が歩いていた。
「寒い、寒いな」
リノアは呟いた。言葉が白い霧となり、冷たい空気に溶けていった。
行く当てはない、とりあえず、バラムに行って列車に乗って・・・・・・・
やはり、デリングシティに帰るべきなのだろうか。
空気を吸いこむと、肺に氷の粒が突き刺さってくるようだ。朝方の冷たい気温を体感したリノアは、なにも、外に出ることはなかったんではないか、と深く後悔した。
(でも、スコールが悪いんだから!!)
『余計ナ世話ナンダヨ!!!』
再びスコールの言葉と冷たい形相を思い出し、心臓を氷の手でぎゅっとつかまれたみたいに息苦しくなり。泣き出しそうになってしまった。
しかし、冷たさのあまり、表情さえ変えられず、涙は出なかった。
(あんな顔、久しぶりに見た。出会ったばっかの頃は、よくあんな顔でひどいこといってたっけ・・・・。)
油断、していたのかもしれない。リノアとスコールが割れない仲となってからは、スコールは冷たい顔を見せたことはなかった。出会ったばかりにあんな顔したとしても、リノアはそれほど傷つくことなどなかっただろう。
もうそんな顔はしない、とスコールを信用しきっていたから、その分悲しいのだ。
それくらいのことは、リノア自身もわかっていた。
(信じちゃ、いけなかったのかな?)
スコールの前には、今でも透明な壁があり、やはり、自分は近づいてはいけなかったのかもしれない、と孤独感がふつふつ胸に湧き上がってきたときだった。
靄の向こうから、黒い影が近づいてきた。
(今)
(もしも)
(スコールが)
(ああして私を探しに来てくれたら)
どんなに嬉しいか。近づいてくる黒い影を眺めながら、黒髪の少女はそう思った自分自身を惨めなものに思いなして自嘲気味に微笑んだ。
影は近づいてくるにつれ輪郭がはっきりしてきた。
「!!」
リノアはその影は、自分の前を通り過ぎて行く他人だとばかり思っていたため驚いた。
影はリノアの前で止まって微笑んだのだ。
「っどうし・・・・てっ・・・・・」
目頭が熱くなってきて、涙が込み上げてきて、リノアは言葉を飲み込んだ。喋ったとたん、それが嗚咽になってしまいそうだったから。
「リノア・・・・・ほんとに・・・すまない・・・・」
少女が必死にこらえていた涙は、その瞬間あっけなく頬を伝った。
影はリノアが、今一番来てほしい人だった。
「ス・・・コー・・・・ルぅ・・・」
まるで子供のような涙声。
スコールは急に愛しくなってリノアを折れよとばかりに抱きしめた。
「悪かった。俺が悪かったんだ・・・・・・」
リノアの小さな手が細い指がスコールの服をぎゅっとつかんだ。
「余計な・・・・お・・・世話・・・じゃなかっ・・・・た・・・の?」
精一杯言った皮肉も涙に溺れているため言葉にはなっていなかった。
しかし、少女を抱きしめる男はそんな聞き取りにくい言葉も逃さずに聞いてやった。
「やっぱり気が変わったんだ。やっぱり、世話を焼いてくれ」
リノアは顔を上げた。頬に涙の走った後が残っているが、瞳の奥から微笑んでいた。
「・・・・・寒いな、そろそろ戻ろうか・・・・・」
スコールが優しくリノアの肩を抱き、来た道を歩き出そうとした。
しかし、リノアは首を振った。
そして、スコールの顔がいいようのない悲痛なものに変わった。リノアがやはり自分と一緒にガーデンにいることを拒絶したのかと思ってしまったのだ。
「違・・・・・う・・の・・・・」
落胆している男の腕をしっかりとつかみリノアは首を振った。 白い指が腕に食いこんでいるのではないかと思うくらい強く。
「も・・・・すこ・・・・だ・・・け・・・・」
「え?」
「もう少し・・・だけ、こうし・・・・て、いさせて・・・・」

あぁ・・・・、そうか・・・・

冷たい空気の中。
信じることは悪いことではない。
白い霧ににじむ二つの影は1つに重なった。
信じるから、傷つけられても信じられるから、大切なのだ。
明るくなるまで、まだ、もう少しだけ、二人に時間はありそうだった。
・・・Fin



back
to menu