ザナルカンドにて〜終わりは始まりの場所
諒月なぐさ様
「ユウナ!お疲れ様!」
「良かったわよ、演説。」
「ありがと…リュック、ルールー。」
ユウナは大勢の前で緊張したのか、控え室の椅子に崩れるように座った。
「あれで良かったんだよね…?」
「良かったっていってんだろ?俺、すっげえ感動したぜ。」
「キマリもだ。ユウナはよく頑張った。」
「うん…」
ユウナは微笑んでみせる。皆はその微笑みの意味をよく知っていた。ユウナのその微笑みは無理をしている証。その裏に潜む、どうしようもない悲しみを隠す仮面だということを。
そして少し沈んだ空気を盛り上げようとリュックが言った。
「…ねぇ、じゃあ頑張ったユウナに何かプレゼントしようよ!さぁユウナ、何か言ってよ!したいこととかさぁ、欲しいものとか…」
「え?そんな…」
「ホラホラ遠慮なんかしないで〜!ユウナが頑張って折角笑顔が戻ってきた世界なのに、ユウナが笑わないとみんなつまらないよ〜。」
その言葉でユウナはまた微笑んだ。そして、ゆっくりうなずくとリュックの前に立った。
「じゃあ…一つだけ、いいかな?」
「うん、うん!なになに?」
「シドおじさまにね、飛空挺出してもらえないかな?」
「へ?いいけど…何で?」
「ザナルカンド行きたいんだ。…ダメかな?」
身体の前で軽く手を重ね、首を少しだけ傾けるユウナのいつもの癖。リュックはそれを見るとなんだかムズムズ嬉しくなった。
「まっかしといてよ!オヤジ、絶対『可愛い可愛い姪っ子の願いといっちゃァ聞かないわけにはいかねぇだろう!』とか言うんだからさ!」
「一丁任しときな!何、可愛い可愛い姪っ子の願いといっちゃァ聞かないわけにはいかねぇだろう!」
飛空挺のコックピットにシドの笑い声が響く。シドの後ろのほうでリュックがほらね、という風にユウナにウインクした。
「本当にわがまま言ってごめんなさい!」
ユウナはシドに深々とお辞儀した。
「このくらいきにするな!俺だってまた飛空挺が動かしたくって仕方なかったんだからよ!」
「トタギ!」
「あー分かってる!ほら、ついたぞ。」
飛空挺は遺跡の広い場所に着陸した。
飛空挺が着陸すると、ユウナは再びシドにお辞儀し、一人コックピットを出ていく。ワッカがそれを追おうとしたが、キマリが静止した。
「ユウナは一人になりたがっている。今は邪魔してはいけない。」
コックピットの入り口が閉まるほんの一瞬、いつもアーロンがいた場所に頭を下げるユウナが見えた。
―ザナルカンドの海。
ちょうど夜明けの時刻だった。
『…夜明け前に、海を見に行こう。』
太陽が昇っていく。その光に照らされ、全てのものが夜から目覚めていく。
『海の向こうがパーッと明るくなってさ。空も、海も、全部染まる…』
空の色がどんどん変わっていく。グラデーションがとても綺麗だ。
『バラ色…って言うんだろうな。綺麗なんだ、すごく。』
「想像してたよりもずっと綺麗だね。」
ユウナはへへっと笑う。
…キミはもういない…でも…
「…さーて、帰るッスか!」
ユウナが向きを変え、飛空挺に向かおうとした、その時、
ひゅんっ、
と朝日に向けて何かが飛んでいった。
…ブリッツボール?それに、あれは見たことがある…。船の上で見た…ジェクトシュート!
ユウナはバッ、と振り返った。
そこにいたその人は指笛をひゅうっと吹いてみせる。
「呼んだの聞こえたッス。」
その人はユウナに近づいていく。
「あ…あ…」
ユウナは驚きと戸惑いと喜びに支配されて動けない。
…ありえないことが、…奇跡となって起きた。
「ユウナに言ったろ?最後までじゃなくて…ずっと、って!」
ユウナはうなずき、微笑んだ。そしてかけていった。
今度は、ちゃんと抱きしめてくれる。会いたくてたまらなかった、夢だけど夢じゃない、大切なその人の元へ。
<END>
※ユウナが回想するティーダ君のセリフ、何か違いますねぇ。ゴメンナサイ、忘れました。