つる塚　鶴の墓￤つるの里八代

つる塚　鶴の墓　　つるの里八代：山口県周南市大字八代

慰霊の対象：ナベヅル／創設業種：個人（農業）

周南市八代は「つるの里八代」として、冬季には一帯の田畑を立入禁止にしてナベヅルを保護している。また鶴の越冬地の中心に野鶴監視所を整備し、約３００ｍ離れた駐車場から歩いてこの観察ポイントを訪れるように規制されている。このような鶴を守る八代の人々の暖かい気持ちは古い時代からのもので、この地域に「つる塚」「鶴の墓（上市）」「鶴の墓（松尾）」と３か所の鶴の墓がある。このうち上市のものは「えい鶴地」と呼ばれ８基の墓が集まっている。

つる塚

  文政３年（1820年）の冬魚切居住の宍戸藩士　林此面は農民二
人と共に、字掘貫の山田に落ちていた病みツル１羽を見つけ、これを自
宅で長い間看護に努めたが、ついに死んだので、屋敷の裏山の自家の墓
にねんごろに葬って墓石を置いて供養した。
  現在、下魚切の丘にあるものは、昭和３０年初冬に地域の人が相よっ
て改葬したもので、その開眼は俳人である群馬県最善寺住職　松野自得
師により、広島県瀬戸田耕三寺住職　金本耕三師等が読経供養したもの
である。

（野鶴監視所の解説文から）

鶴の墓（上市）

　鶴の基　由来
　明治二十年、村の掟を犯して　市尻の田で
発砲し、鶴一羽を傷つけ、一羽を即死させた
猟師がありました。此の時負傷した鶴はその
後毎年此の他に渡来していましたが、遂に明
治二十八年、春がすぎてもシベリヤへ帰るこ
とができず、桃木峠に落ちてしまいました。
　これを見た近くの農民瀬来幸蔵さんは、あ
われに思い、自宅に連れ帰り、五十余日の間
看護に努力しましたが、そのかいもなく死ん
でしまいましたので、裏山の林の中に家族同
様手厚く葬り、小さな鶴の墓を自ら刻んで建
て供養しました。
　大正十年、天然記念物に指定されたのを機
会に現在地へ移し、此処を鶴地として、そ
の後　此の地で死んだ碑を埋葬し、旅で死ん
だ鶴の冥福を祈ってきました。
（解説板の説明から）

鶴の墓（松尾）
　農家の裏山の中にひっそりと佇む。鶴の遺体を見つけた人が個々に埋葬し供養していたのだろう。左の小さな石がお墓。解説が上記の上市のものと重なる部分があるが、野鶴監視所の解説文を示す。

　   明治2０年頃には、各地のツルは獲り尽くされて、八代のツルさえ
	  ２０羽に足らぬほどとなり、それすら近隣の猟師にしきりにねらわれる
	  ようになり、まさに絶滅の危機となったので、八代村長は県知事に何と
	  か捕獲を禁止するように熱心に請願した。これを洩れ聞いた山口市郊外
	  の猟師が、禁止にならぬ前にと、下男をつれて八代に来て、市尻の田で
	  発砲して2羽のツルを傷つけ、1羽を即死させた。村人は鐘を打ちなら
	  して、鍬や鎌や棒を手に、集合してこれを囲み、大いになじったが、当
	  時はまだ保護鳥の制度もツル捕獲の禁令もないので、如何ともすること
	  ができず、猟師はツルを持っていばって去った。
		 この時負傷した２羽は、その後も毎年渡来したが、明治28年の春、
	  その１羽は負傷のために春が過ぎてもシベリヤへ帰ることができず、桃
	  木峠に落ちた。字松尾の農民　瀬来孝蔵はこれをあわれんで、自宅につ
	  れ帰り、５０日余の間看護につとめたが、ついに死んだので、家裏の山
	  林の中に、家族同様に手厚く葬って、小さな「鶴の墓」を自ら刻んで健
	  てた。大正１０年に、この墓を現在の位置、字市の古本社域に移して、
	  そこをえい鶴地（ツルをうめるところ）とし、その後、村で病気や負傷
	  のために死ぬツルがあれば、ここに埋葬し、里人、ことに児童生徒たち
	  が、掃除をしたり、花をたむけたりして、旅に死んだツルの冥福を、祈
	  って来た。
		（野鶴監視所の解説文から）

■さすがにつるの里だけあって、マンホールの蓋にも鶴のデザインが見られる。左から「ぼうかすいそう　くまげ」「おすい　くまげ」「おすい　やしろ」

■橋の欄干や道路標識など随所に鶴がいる。

特別天然記念物（昭和30年）と天然記念物（大正10年）の碑

野鶴監視所（左）とその中に掲示してある地元八代小学校の児童の観察レポート、「つる日記」

撮影日：2003/12/04