15.地球温暖化を見つめ直す(中)
―都市の”熱汚染”深刻化―


これは、環境新聞社・堀内義之氏が近藤純正の談話をもとに、2008年11月19日付
環境新聞に掲載された「地球温暖化を見つめ直す(24)」の内容と同じです。

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 観測環境の変化も影響
 さらに、観測所の環境変化や移転などによる観測条件の変化もある。 樹木やツルが生えることで風通しが変わり、連続した気候観測が行えなく なることがままある。さらには、測候所の敷地がマンション用地として売り に出されているケースまであり、気候観測にとって深刻な問題だ。

千葉や神戸、下関は、港湾近くに観測所が移転したケースだ。海岸付近は 風通しがよく低温と考えられがちだが、実際は舗装された道路や広い駐車場 などが多く、熱を蓄えやすい。この三カ所では、移転した直後に気温に 大きな不連続が生じ、神戸では一気に0.65℃も上昇している。

 都市化の影響については、緑地の減少による蒸発散量の減少を始め、 消費エネルギーの増加、ビルの高層化による天空の減少など、数多くの 要因が挙げられる。都市化による温度上昇は、場所ごとの気温から各地方 平均の温暖化量を差し引くことで求められる。これを熱汚染量と位置づけた。

 東京は約2℃昇温
 1993~2007年の15年間移動平均の都市温暖化量を2000年時点 の都市温暖化量(熱汚染量)として、91都市について見ると、都市温暖化量 が1.4℃以上の地点は、東京、千葉、鹿児島の3都市だ。また46都市が、 0.7~1.4℃となっている。

 つまり、91地点中の過半数に当たる気温上昇は、日本全体の温暖化量 である0.67℃の2倍以上の1.4~3℃も温暖化したことを示している。

 東京について見ると、1923年の関東大震災後から都市化の影響が表れ 始め、45年の大空襲による消失後、戦後復興に伴い50年ごろから再び都市化 の影響が大きくなっている。そして60~80年の経済の高度成長期には昇温率 が最大になった。その後も昇温量は増加しており、2000年の時点では 1.96℃にまで達している。

 また都道府県庁の所在地である34都市についても、平均を取って温暖化量 を経年変化で追ってみた。それによると、やはり高度成長期に気温上昇が 急激になっており、その後緩やかな傾斜ながらも上昇が続いている。 2000年における都市温暖化量の平均値は1.0℃だ。つまり都道府県庁 所在都市でも、日本全体の温暖化量の2倍以上の昇温が生じていることになる。

 さらに、大都市を含む都道府県庁所在都市を除く中都市でも、都市温暖化量 の平均値は0.5℃という結果になった。(談=近藤純正・東北大学名誉教授)

―次回の(下)に続く―

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