A06.深浦観測所見学、2011年6月25日

編者:近藤純正
2011年6月25日に開催した深浦特別地域気象観測所の見学会についての報告である。 青森県の深浦観測所は、周辺に樹木が成長し観測の障害となっていたが、町役場と住民の理解をえて、 2回にわたる環境整備により桜など33本の伐採、松15本の剪定が行われ、日本海沿岸では北海道の 寿都とともに日本一の環境となった。これを機会に、見学会を開催した。 (完成:2011年6月30日)

本ホームページに掲載の内容は著作物であるので、 引用・利用に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを 明記のこと。

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更新記録
2011年6月28日:概要の作成
2011年6月30日:完成

	目次
	6.1 見学会が開催されるまでの経緯
             第1回目~第5回目の訪問まで
             環境整備の要約         
	6.2 気候観測を応援する会:青森県内のメンバー
	6.3 観測所の見学会(2011年6月25日)
             参加者
             観測所の沿革、重要性など
             現在の観測についての説明
	6.4 観測所の写真


6.1 見学会が開催されるまでの経緯

日本海沿岸の深浦町の史跡公園「御仮屋」に設置されている「深浦特別地域気象観測所(旧深浦 測候所)」の観測データを調べると、年平均風速は34%減少し(1970~2005年)、日最大風速が 10m/s以上の強風日数は年間100日から13日に減少している(1960年代~2000年前後)。

第1回目(2007年3月28日)
筆者は秋田大学の本谷 研博士とともに、2007年3月28日 に現地・深浦観測所を訪問してみると、風速観測値の減少傾向は 「松の成長と南側に繁茂した笹薮(ヤダケ)」によると判断できた。 聞き取り調査によれば、以前の笹藪は現在のように茂ってなく、 眼下に深浦港を見下ろすことができたという(「写真の記録」の 「64.青森県の深浦測候所」を参照)。

深浦南側の桜2007年
写真6.1 深浦観測所露場の南側から南西方向を見る(2007年3月28日撮影)。 手前左手はイチョウ(このイチョウは2011年2月の環境整備で伐採される)。 乱雑に伸びた松の枝(2011年2月の環境整備で枝打ちされる)、やや右手に見える桜5本 (5本のうちの2本は2009年11月の環境整備で間引き伐採される)、左側に見える背丈の高いヤダケの 笹藪が南西風を遮っている(ヤダケは2009年11月と2011年2月の環境整備で、西寄り部分が 刈り取られ、さらに南北の幅が狭くなるように刈り取られる)。 (「身近な気象」の「M47. 気象観測所の 周辺環境を守るー深浦1」の図47.1に同じ)

観測所の周辺環境を観察し、聞き取り調査の結果、環境整備によって①風通しを良くし、 ②日陰を無くしなければならないことが分かった。

第2回目(2007年7月19~20日)
2007年7月19日、観測所のすぐ下の岡町にお住みの金沢兼作さんに案内されて岡町町内会長・兼平惣七 さん宅を訪問し、深浦観測所の環境整備について相談する。

翌日の7月20日、弘前大学の石田祐宣博士とともに深浦町役場を訪問。 企画財政課の担当者とともに副町長・本田満生さん、総務課長・阪崎孝男さん、 社会教育課長・赤平郷親さんに集まっていただき、会議室にて約1時間ほど かけて深浦観測所の重要性と環境整備について説明。引き続き、町長・西崎 哲さんにも同じお願い をしたところ、町長にはよくご理解していただけた。

そのとき以来、兼平惣七さんと阪崎孝男さんのお二人には、深浦を訪問するたびにお会いし、 あるいは手紙・電話によってご相談にのっていただくことになる。

第3回目(2009年6月9日~11日)
2009年6月10日午後、深浦観測所において、当時の青森地方気象台(技術課長・長畑和博 さん、技術専門官・田中啓介さん、水害対策気象官・外川千良さん)及び 深浦町教育委員会(社会教育課長・黒滝 仁さん)の立会いのもと、 観測所周辺環境について整備すべきことがらについて、専門的な立場から 筆者の案を説明した。

このときには、旧測候所の庁舎と宿舎は解体され、新露場の整備も済んでおり、以前の 敷地内にあった生い茂った生垣も撤去されていた。未整備部分は、露場 フェンス外の北東側に茂った雑草があり、風止めとなっていた。

そのほか、南西側の笹薮や密に植えられた桜、さらに乱雑に伸びた松の枝によって、 露場の風は弱められ、時刻によっては日陰が生じていた。

2009年6月11日朝、新町長・吉田 満さんと面会し、環境整備の件とともに、 住民に対する講演会を開催させていただくようお願いした。

住民の自主的な集まり「歴史を学ぶ会」の主催による講演会「気象と歴史―過去500年に学び 未来へ生かそう」が2009年11月14日(土)の午後に役場の文化ホールで開催されることが決まった。

いよいよ筆者が深浦へ出発する直前のこと、深浦町役場から講演会は中止するとの電話があった。

講演会は中止になったが、私は町会議員や住民の皆さんに深浦観測所の重要性を訴えるために、 予定通り旅立つことにした。

第4回目(2009年11月13日~16日)
2009年11月13日(金)午後1時ころ、深浦町役場の休憩席で新聞記者と打ち合わせていたときのこと、 ボランテアガイドの工藤安昭さんにお会いでき、車で3日間も南北に長い深浦町(十二湖なども含む) の広範囲を案内していただくことになる。町議員はじめ、多くの住民・文化人・観光客にビラを配布し、 深浦観測所の重要性を訴えた。

気象台から要望がない限り、深浦観測所の環境整備は進まないことがわかったので、深浦からの帰途、 青森地方気象台に寄り、台長・堤 之智さんに深浦町役場へ電話でよいので、 「役場が環境整備に協力していただけるならば気象台としてもありがたい」 という内容の連絡をしていただきたいと懇願した。

その後、深浦町に聞き合わせしたところ、青森地方気象台長から深浦町へ電話 連絡などはこなかったとのことである。そのため、環境整備は中断してしまった。

2010年度になってから、こうした状況を気象庁長官・櫻井邦雄氏ほか気象庁幹部に訴え (2010年5月13日)、さらに仙台管区気象台長・藤村弘志氏に訴えたところ(6月9日)、 藤村台長はその日のうちに青森地方気象台の新台長・大島広美氏に連絡された。後日、大島台長が 深浦町を訪問されて町長・吉田満氏と相談していただいた結果、中止になっていた市民講座が 開催されることになる。

第5回目(2010年9月15日~19日)
中止になっていた市民講座が2010年9月18日(土)に開催できた。 そうして、深浦町と住民の理解のもと、2011年2月下旬には観測所の環境整備が行われることになる。

市民講座があってから、地元の岡町町内会長・兼平惣七さんにお願いし、「気候観測を応援する会」に 町内から5名の方が参加してくださった。

環境整備の要約
第1回目(2009年11月上旬):
(1)露場の南側の笹薮を部分的に刈り取る、
(2)天狗巣病の桜や混みあった桜の伐採(雑木2本と桜10本)、
(3)露場フェンス北東側について、斜面の下まで雑草と潅木の刈り取り。

第2回目(2011年2月下旬):
(4)松15本の枝打ち、
(5)桜・雑木・イチョウの21本を伐採、
(6)露場南側の笹薮の南北幅が狭くなるよう刈り取り。
この第2回目の環境整備案は「A01.気候観測応援会情報(1)」の図1.1 に掲載されている。

2回の環境整備が行われて、桜など33本が伐採、松15本の乱雑な枝が切り取られた。

この状況を実際に見ていただくために見学会を行うことにした。そうして、「気候観測を応援する会」 に新しく参加してくださる方も増えた。

第6回目(2011年6月23日~26日)
見学会の開催前、2011年6月23日に青森地方気象台で談話会(新台長・高尾俊則氏、新次長・菅原 光夫氏)、24日午前には弘前大学でゼミ、24日午後には青森県気象災害連絡会で特別講演を行い、 気候変動と社会の問題や深浦観測所の重要性を訴えた。

6.2 気候観測を応援する会:青森県内のメンバー(敬称略)

今回の見学会を機会に、新しい入会者も増え、2011年6月末日現在のメンバーは次の通りである。

深浦町
兼平惣七(岡町町内会長)
本田一栄(岡町町内副会長)
木村勝三郎(岡町町内会)
工藤正昭(同上)
堀内不二男(同上)

西﨑正二(深浦町教育長)
工藤安昭(ボランティアガイド、いわさき子どもクラブ理事・生物観察クラブ担当)
阪崎孝男(元深浦町総務課長、前会計管理者)

青森市
岡前憲秀(青森県気象予報士会会長)

弘前市
力石國男(弘前大学名誉教授)
児玉安正(弘前大学准教授)
石田祐宣(弘前大学助教)

6.3 観測所の見学会(2011年6月25日(土)、11:30~12:30)

参加者(合計20名)(敬称略)
菅原光夫(青森地方気象台 次長)
久塚栄一( 同上 防災業務課 調査官)

兼平惣七(岡町町内会長)
木村勝三郎(岡町町内会)

西﨑正二(深浦町教育長)
阪崎孝男(前深浦町会計管理者)

工藤安昭(ボランティアガイド、いわさき子どもクラブ理事・生物観察クラブ担当)
七戸律香(小学5年生)
柳谷弘樹(小学4年生)
秋徳航太(小学3年生)
神馬海輝(小学3年生)
柳谷樹音(小学1年生)
神馬海輝(小学1年生)

児玉安正(弘前大学気象学研究室 准教授)
石田祐宣( 同上 助教)
庄司 優( 同上 修士2年)
高橋啓太( 同上 修士2年)
栗山奨平( 同上 学部4年)
高橋未来( 同上 学部4年)
近藤純正(東北大学名誉教授)

2011年6月25日(土)、現地に集合し約1時間の見学会を行う。
最初に参加者の自己紹介、続いて、深浦観測所についての説明を行った。

今回、小学生が参加したことは幸運である。彼らは将来にわたり重要な気候観測所が深浦に存在 していることを覚えていてくれるからである。 筆者は、次回の深浦観測所の見学会の際には子供向けに、たとえば「お天気の話や空気の実験」 をしてみたいと思った。

注: 本会の活動として、「・・・市民講座等により教育・普及活動を行う。・・・」 が含まれている。「身近な気象」の「M53. 気候観測を 応援する会ー発足」の目的・組織・内容の「内容」を参照。

観測所の沿革、重要性など
深浦気象観測所(旧深浦測候所、現在の正式名称は深浦特別地域気象観測所)は、標高66.1mの史跡 公園「御仮屋」に1940年(昭和15年)1月1日に開設され、観測を開始してから70年余になる。

参加者には、「気候観測応援会」の「A55.深浦特別地域気象観測所」 (2ページ)を配布し、沿革、重要な観測所としての深浦観測所、環境整備の概要、などについて 説明した。

前述の通り、2回(2009年11月上旬と2011年2月下旬)の環境整備により、桜など33本が伐採され、 松15本の乱雑な枝が切り取られ、さらに露場南側の笹薮の大部分が刈り取られ、笹薮の東西の長さと 南北幅が短くなり、風通しと日当たりがよくなったことを説明した。

この良好な環境が今後も管理・維持されるならば、深浦観測所は日本海沿岸で日本一の観測環境 に恵まれた観測所となり、観光にも生かすことができる。

注:日本海沿岸で日本一の観測所
北海道の寿都観測所は1889年9月1日に寿都港のすぐ上の標高15.7mの地点で観測を開始し、124年の 長い歴史がある。三陸の宮古と高知県の室戸岬とともに環境に恵まれた日本の3基準観測所の一つ である。しかし、寿都観測所は1989年9月22日から現在地の標高33.4mの合同庁舎に移転し近く には住宅がある。
これに比べて、現在の深浦観測所の周辺には住宅はなく、環境の面では寿都より優れているが、 観測期間は70年と短い。気候観測所としての重要性からすれば、寿都が日本海沿岸で日本一であるが、 今後を考えると、深浦が日本海沿岸で日本一の環境に恵まれた重要な基準観測所となる。地球温暖化 を正しく監視していく意味で、深浦の良好な観測環境は管理・維持していかねばならない。


今後の環境整備上の注意点
今回の見学会で松の枝の剪定された状態を見たところ、筆者の提案が十分に伝わっていないようで ある。注意点を再度ここに記しておきたい。

御仮屋の南側範囲に生えた松の幹は垂直に立つのではなく、南西から北東方向に傾いていることからも 分かるように、深浦観測所の強風は南~南西寄りである。ここには藩政時代からの老松は5本ほど、 残りは新らしく生えた松である。西端に生えていた老松の1本は数年前の強風で幹の途中から折れ、 後日、根本から伐採された。

由緒ある残りの老松を保護する観点から、南~南西寄りの風に対して横方向にのびる枝は切り落と しておくがよい。これらの枝は強風に対して抵抗として作用するので、切り落として倒木を防ぐ。 これは観測所の強風観測にとっても好都合である。今後の環境整備では、このことに注意して欲しい。

観測露場周辺で行われる毎年の草刈など環境維持・整備で重要なことは、露場は (1)風通りがよいこと、(2)日当たりがよいこと、(3)周辺の環境が時代によって大きく 変らないことである。これら3項目を覚えていて欲しい。


現在の観測についての説明
現在の観測露場内の測器・観測項目について、青森地方気象台次長・菅原光夫氏により、 実物を見学しながら観測原理などを説明していただいた。

参加者集合写真
写真6.2 深浦観測所の見学会参加者の集合写真。

見学会風景
写真6.3 見学会の風景。気象台次長・菅原光夫氏による観測機器の説明を聞く参加者(露場の 西側から東向きに撮影、石田祐宣氏提供)。

6.3 露場周辺の写真

以下は今回の見学会で撮影した深浦観測所(深浦特別地域気象観測所)の写真である。

写真の説明文に、今後の環境維持・整備上の注意点も記しておいた。

南西小山から西方向
写真6.4 露場の南西側にある少し高い地点から西方向を撮影。赤矢印はヤダケの刈り残しの西端を 示す。 ほぼ同じ地点から撮影した写真6.1(2007年3月28日撮影)と比較すると、通路沿いにあった5本の桜は 2本が間引き伐採され、ヤダケの笹薮の東西の長さと南北の幅が小さくなったことがわかる。

露場の南側の樹木
写真6.5 露場の北西側から南方向を見た樹木の状況。

南から北方向
写真6.6 露場の南側から北方向を撮影、3枚を合成したため多少のひずみがある。写真の右端の 手前に小高い地点がある。前記の写真6.4はこの小高い地点から撮影されたものである。写真中央の 遠方(北方向)に日本海がある。環境整備により、この方向の見通しが良くなった。

南から北方向
写真6.7 西側から東方向を撮影、3枚を合成したため多少のひずみがある。写真中央の鉄塔 は測風塔。測風塔の左方にあった桜などの樹木5本は第1回目の環境整備(2009年11月上旬)で 伐採され、露場の北側の風通りは良くなっている。

南から北方向
写真6.8 北側から南方向を撮影、3枚を合成したため多少のひずみがある。露場のフェンスの左側が 広く草刈されているのは良いことである。さらに左側に見える残りの草も毎年刈り取ることは一層 望ましい。この草は1年に2mほどに成長するので注意して毎年刈り取ろう。

南から北方向
写真6.9 東側から西方向を撮影、3枚を合成したため多少のひずみがある。露場のフェンス東の 外側も広く草刈されているのは良いことである。毎年刈り取ろう。

南から北方向
写真6.10 露場南西にある小高い地点から北西方向を撮影、3枚を合成したため多少のひずみがある。 この小高い地点にあったイチョウは露場に日陰をつくっていたので、伐採された。中央手前の松も 露場に小さい日陰をつくるので、さらに枝打ちしてほしい。

南から北方向
写真6.11 展望台から東の露場方向を撮影、3枚を合成したため多少のひずみがある。 写真中央付近の手前の建物はトイレ、そのすぐ向こう側に並んでいた桜の幼木は伐採されたために、 手前の展望台から露場の方向に吹く北西寄りの風通しはよくなった。展望台は御仮屋の西端にある。 この展望台の下のすぐ右側には、数年前の強風で倒木した老松の切り株がある。(

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