林内気温を決める主な要因

(1)林床の放射環境
林内の気温が林外に比べて高温になるか低温になるかは、林外の放射量(日射量と大気放射量) に依存する。晴天日を想定すると、林外日射量に対する林内日射量の比率が重要となる。

林床では日射量と樹木の枝葉からの長波放射量がある。葉面積指数が大きい密な森林ほど 林床の日射量は減少するかわりに、長波放射量が増加する。極端に密な森林の場合、 林床の日射量はゼロに近く、長波放射量は気温に対する黒体放射量に近似的に等しくなり、 正味放射量はゼロに近づく。

本シリーズ研究では、放射環境を簡易パラメータ「木漏れ日率」で代表している。

(2)林内の熱拡散
日中を想定すると、林内の日射量が大きいほど気温上昇は大きくなるが、風が強いほど 熱拡散が大きく気温上昇は抑制される。林内の風速は枝葉の密度(葉面積指数)に 依存するとともに、風向方向の森林幅にも依存する。

本シリーズ研究では森林公園や防風林を想定し、面積が100m平方~1000m平方程度の 森林を対象としている。

(3)林床面下の貯熱効果
大雨後は林床面下の土壌水分量が増えて熱容量が大きくなるため、少ない日射量 と弱い林内風速では土壌の乾燥化に多くの時間がかかる。そのため、日射と風速の強い 林外の地温・気温の上昇に比べ林内の地温・気温の上昇は遅れる。その結果、林外の 気温に比べて林内は低温に、つまり気温差はマイナス側に大きくなる。

(4)ボーエン比の気温依存性
樹木の葉面に日射が当たると、そのエネルギーの一部は蒸散に使われ、残りは葉面温度を 上昇させ、顕熱が放出されて大気は加熱される。よほどの強風でない限り、葉面温度は気温 より1℃程度高くなっており、森林は大気を加熱し、冷却することはない。

密な森林の林床上の気温が低いのは、日陰の効果によるものである。樹冠部は日射量 を吸収し、林床上の気温よりも高温になっている。

放射エネルギーの顕熱と潜熱への配分比(ボーエン比=顕熱/潜熱)は気温に大きく 依存する。これをボーエン比の気温依存性という。高温時(夏)は、たとえ同じ放射量 の条件でも、森林が大気を加熱する顕熱量は相対的に小さくなる。

(5)森林上の一般風速
一般風速が強いほど、鉛直混合が盛んで、林内外の気温差は小さくなる。


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