96. 白百合の花のふしぎ

著者:近藤 純正
自然に咲いた白百合の花の種をどこに蒔くか、その周辺に他の草花があるか無いか など、生える場所の条件によって咲く花の数が1個から32個に大きく変わった。 (素案の作成:2023年8月14日、完成:2023年8月25日)

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  	もくじ
            1 はしがき
            2 2022年の夏、1本に5個の花が咲く
            3 2023年の夏、1本に1~32個の花が咲く
            まとめ

1.はしがき

2022年のこと、風で運ばれてきたのか、小鳥が運んだのか分からないが、わが家の庭に1本の 白百合に花が5個ほど咲いた。このことを意識して散歩道で観察すると、白百合は1本に ほとんど1~2個の花である。webサイトを探すと、この白百合は台湾原産の「タカサゴユリ」 に似ている。
知人の東京大学の木村龍治名誉教授(気象学)が調べたところ、ウィキペディアによると、 「(タカサゴユリは)初年度は茎や花を出さずに数枚の葉を出すだけで球根を太らせ、 球根が充分太ると翌年度以降に茎を伸ばして大型の花をいくつも咲かせる。 その場所の日当たり具合により球根の太り方に差があり、球根の状態により茎長や花の数などに 差が生じる。」とのこと。これをヒントに再度webサイトで調べると、沖縄原産の「テッポウユリ」 にも似ている。後述の観察から、わが家に咲いた白百合の正しい種類は不明としておく。

わが家の庭の条件:ナス、ピーマン、トマト、キウリ、枝豆、落花生、トウモロコシ、 ゴーヤ、ネギ、タマネギ、小松菜、春菊、大根、ジャガイモ、里芋などを植えている。 これら野菜は年によって植える種類を変え、毎年4~5種類を植えている。 ネギは連続して生えており、毎年増えた球根は間引いている。 春菊は花が咲き種が落ちて連続してどこかで生えている。小松菜や大根は春に花が咲き、 種が落ちてたくさんのコバエができ、おひたしにして食べる。

また、ほぼ1年中花を付けるペチュ二ア、夏に長期間咲くキク科のマリーゴールドなどの花も 植えており、これらは種が落ちて毎年のように自然に生える。 スミレも春~夏に咲き、青シソとシソも種が落ちて毎年ひとりでに生える。

雑草や生えすぎた青シソ、秋に枯れた草花、台所でできた廃棄物は庭の堆肥箱 (手製:1m×1m、深さ0.5m)に入れている。毎年または2年に1回の頻度で、 近くの公園で集めた落葉も堆肥箱に入れている。その堆肥は庭の畑に埋めている。 野菜の種を蒔く前には、化成肥料を適当に撒くだけで、追肥はほとんど撒かない。 野菜の殺虫剤は使わない。虫のつくソラマメなどは植えない。

わが家は住宅地にあり、多くは庭に植木を植えているが、わが家だけは野菜と花である。 私の考えでは、300平方m以下の都市の住宅地では、樹木を植えると雑草は生えにくいが 日当たりと風通しが悪くなる。わが家の塀はコンクリーや石積みなどではなく、 風通しのよい日陰にならないメッシュフェンスである。


2.2022年の夏、1本に5個の花が咲く

2022年のこと、白百合の花がひとりでに咲いた。この種は風に乗ってなのか小鳥が運んだ のか不明である。1本に5個の花が咲いたことから、散歩するとき観察すると、道ばたにも 白百合が咲いており、多くは1本に1~2個の花である。わが家の庭の5個は特別である。 種を採って翌年に植えてみることにした。

花5個2022年
図96.1 白百合の1本に花5個が咲いた、2022年夏


3.2023年の夏、1本に1~32個の花が咲く

昨年の2022年に採った白百合の種をいろいろな場所に植えてみた。3つの鉢植えに蒔いた 白百合は、いずれも1本につき1~2個しか花がつかなかった(図96.2)。 根本からの背丈はどれも0.3~0.5mである。開花した花の長さは15cm前後である。

鉢植えには1本に花1個、2023年
図96.2 小鉢に種を蒔いた白百合には1本に花1個づつが咲いた、2023年8月10日


ところが耕した所に蒔いた種からは10個、12個、16個、・・・最大32個の花・つぼみがついた。 図96.3は最大32個の花・つぼみがついた写真である。耕した所の白百合の背丈はいずれも1m~1.2m であるが、図96.3の白百合の背丈は最大の1.2mもある。この根本の周辺には何も 生えていない場所である。開花した花の長さは、すべて15cm 前後で鉢植えの花の長さと同じである。

耕した所には1本に花32個、2023年
図96.3 耕した所には1本に最大32個の花・つぼみがついた、2023年8月10日


白百合は、周辺に他の草花がない所に生えれば、つまり独占できる土の面積が広ければ、 のびのびと育ち、花も多くつける特徴を持つものだろうか?痩せた土壌より肥えた土壌 (白百合の好きな土壌)など環境に支配されるだろうか?
以上は、すべて家屋の南側の庭に生えた白百合である。家屋の東側にある堆肥箱と 家屋の間に自然に生えた(意識して種を蒔かない)白百合は日当たりは南庭の約1/3 であるが、10個の花が咲いた。花の数は日当たりにさほど影響されないようだ?

つぼみの先端(顔)は斜め下向き、開花も斜め下向きである。ほとんどの白百合は 日が経つにつれて顔は少しずつ上向きになり、ほぼ水平に近づく。花によっては、 水平より最大20度ほど上に向ける。
個々の花の開花期の寿命は10日前後であり、白色から褐色に変わって1~2日で枯れて落ち、 めしべが残る。


4.まとめ

白百合は、根を広く伸ばせる場所で、しかも土壌の環境のよいところに生えると背丈が 1~1.2mまで伸び、花の数も多くなる。鉢植えは根を広く伸ばせないのか花は1本につき 1~2個で、背丈は0.3~0.5mである。

秋になれば、3個の鉢に咲いた各1~2個の花の種と、各10~32個の花の種を区別して採取し、 来年もまた蒔いてみたい。秋~冬には球根ができているか否かを確認したい。

岩手大学の松波麻耶准教授に調べてもらったところ、バラやユリなど、多くの花卉に 見られる現象だそうである。1つの茎に多くの花輪をつける「帯化(たいか)」の現象 (一種の奇形)ではないかとのことである。

種が欲しい方には差し上げます。

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