「夕張問題」






発行 祥伝社
作者 鷲田小彌太
定価 980円+税(1巻〜7巻)文庫版もあり


夕張に関する報道は一時期加熱するばかりで的を得ていないものがほとんどでした。その最たるものがTBSのみのもんたの朝ズバッ!であり朝番組を見ると腹が立ってくることが何度もありました。産炭地域研究する専門家がほとんど存在しないことも原因としてはあると思われますが、ジャーナリストが見た一面的な夕張が紹介され続け、歪んだ夕張像が全国に伝わってしまったことは残念でなりません。

本書も夕張の現状をそのまま伝えているかという観点から見るとすべてに納得できるわけではないのですが夕張を知るためのツールとしては使えそうな気がします。夕張において基幹産業となりえるものはやはり夕張メロンであり、夕張が生きていくには必須な分野との記述は大いに納得できます。この単純なことが多くの報道ではほとんど見ることがありませんでした。

また観光夕張については現状では施設を夕張市が保有し、運営を加森観光が行うスタイルが採用されていますが、本来なら売却をすべきではとの主張も私としては納得できます。現状では加森側もリスクが非常に少なく、施設の更新が行われなければ観光夕張は衰退していくばかりではないでしょうか。大人数を集客する従来型の観光夕張のシステムを再構築することは札幌近郊日帰り行楽地の競合が増える中で決して得策とは言えず、熟考を要する課題といえるでしょう。静かなブームとなっている炭鉱遺産訪問観光も絶対数は決して多くはなく、地元への貢献は現状では非常に小さいものです。

夕張市の再建計画に関しては特に職員給与、職員数に関して本書ではかなり厳しい意見が多く、この夕張市の現状は他の旧産炭地域共通、さらにいえば道内の過疎地域共通の大きな問題です。ただやっと他の市町村レベルになるなどの記述は少々過大な表現ではないかと感じました。
す。

最後に4章夕張再生のシナリオ、5章夕張、その可能性の条件=哲学では様々な今後の行方について記述されています。ここでは納得できる内容と少々夢物語的な内容が錯綜し、読み難い形になっています。夕張の今後の不透明さを逆に実感することになりました。

そうはいっても夕張市が財政再建団体になり騒がれたことが逆に住民を主体とした活動を喚起し、夕張を活性化させているのではないかと先日夕張を車で通り町並みを見ながら感じました。




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夕張問題


 
北海道旅情報巻頭 8.アラカルトレポート