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ヴィンタートゥーアの音楽院の同窓生だったヴァイオリンのマティアス・エンデルレ、スザンヌ・フランクとチェロのシュテファン・ゲルナーは、その後インディアナ大学やジュリアード音楽院で勉強した後、スイスに帰って来る時にヴァイオリン奏者のマティアス・エンデルレがアメリカのウェンディ・チャンプニーというヴィオラ奏者を連れてきて、弦楽四重奏団が結成されたのです。
グシュタートのメニューイン・アカデミーで更に研鑽を積み、アマデウス弦楽四重奏団やラサール弦楽四重奏団、シャーンドル・ヴェーグ等に習った後、一九八七年、イタリアのエミリアで開催されたパオロ・ボルチアーニ弦楽四重奏コンクールで第二位に入賞、審査員のアマデウスSQ(弦楽四重奏団)やジュリアードSQ、東京SQ、スメタナSQ、アルバン・ベルクSQ、ラサールSQといったそうそうたる審査員たちが二位という内容に不満で、「カルミナこそ第一級のクァルテットだ」という声明をだすことにまでなり、この「証明書」によって彼らの国際的なキャリアは始まったのであります。
初期の録音にはモーツァルトのフルート四重奏曲全四曲を、スイスのフルート奏者ペーター・ルーカス・グラーフと共に演奏したものがありますが、颯爽として素晴らしい可能性を感じさせる演奏でありました。ドヴォルザークの「アメリカ」やドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲なども聞いても、実によくディスカッションされた独自の解釈で、このクァルテットが自分たちの音楽を借り物なしのありのままの自分たちの解釈をもって音楽にあたっていることがよくわかる、素晴らしい内容であります。
特に「アメリカ」などは、スメタナSQのほとんど不滅の名演のおかげで、なかなかそれ以外の解釈は出てこないと思っていたのですが、カルミナSQの演奏は実にその手垢を見事に洗い流し、新鮮な気分で聞くことができました。それぞれの技量も優れていますし、表情も大変豊かで、人によっては表情過多で煩わしく感じられるかも知れません。しかし、下手な安全運転をしているつまらない何をどう感じたのかわからない多くの演奏に比べ、真摯な態度で音楽に向かっている姿が清々しく思えます。
スメタナSQのシュカンパさん(霧島音楽祭でお話したことが懐かしいです)が自分の校訂してヤナーチェクの楽譜を使って若い彼らが演奏するというので演奏会を聞いた後、楽屋を訪れ、その解釈について彼らと話し合ったそうです。シュカンパさんはヤナーチェク研究の世界的権威でもあるわけですから、彼らも熱心にその意見を聞いたことは聞いたのでしょうが、「結局自分たちの音楽は自分たち四人で考えディスカッションして作り上げるしかないのだ」というメンバーの言葉で、いかに音楽に誠実に取り組んでいるか、知ることができると思います。
最近、朝鮮半島の非武装地帯で、演奏会をしたということで、新聞等で話題を振りまいておりましたが、そういうことによらずとも、今後が楽しみな若手の弦楽四重奏団であると思うのですが、どうでしょうか?
スイスの弦というのは、クーレンカンプ、シュナイダーハン、メニューイン、ヴォルガといった人たちが築いてきたもので、弦の本流からするとやや支流になりますが、大ヴァイオリニストたちの薫陶で弦のレベルは随分高いものがあるようです。これがスイスのオケのレベルも引き上げているのでしょう。
弦楽四重奏団も各地に有って、ベルン弦楽四重奏団(一九七一年結成)やローザンヌを本拠とするシネ・ノミネSQ(一九八二年結成)なども活動していて、少ないですが日本でもCDが出ています。室内楽では未だにチェコが質量ともに世界のトップではありますが、スイスもそうなりつつあるというのも、言えないこともないと思うのですが。
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