●第31話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:10月12日(木)15時21分34秒 「・・・アルベルトさん、そろそろ動きますか。いつまでもいるわけには・・・」 「そうだな。・・・一応、科学研究所のほうへ行こう。やつらを分断できるかもしれん」  そういうと、アルベルトとシュウは外へ出ようとした。 「サンキュな。トーヤ先生」 「ふぅ・・・怪我もほどほどにしておけ」  シュウが扉を開けようとして― 「開かない?!」 「なにぃ・・・ほんとだ。勝手口は?」 「・・・だめだ」  トーヤが勝手口を調べ、ため息をつく。 「どーなってるんだ!?」 「あぁ、なるほど。こーゆー事ですか」  ロイがのんびり呟く。彼はケインにもうひとつ頼まれていた。二人が建物に入ったら玄関と勝手口のドアノブをひもでひとつなぎにすること。 「ま・・・時間稼ぎ程度ですけどね」  ケインは木の上で考えていた。このままでは、自警団とずっとにらみ合いになる。この町が気に入った彼としては、はやくこの一件を終わらせたい。さらには、あの人形と仲良く遊ぶ少年のことも気にかかる。 「あの年頃は繊細だからな・・・みんな傷つかずに幸せに決着つける方法があればなぁ・・・」  つぶやいて。彼はふと、いいアイデアを思いついた。 「な!?・・・」 「動くな騒ぐな大声出すな。多分、お前の首が飛ぶほうがはやい」  リサと別れて少しあるいたところで、アーシィの首に鋼線が巻かれた。犯人は、ケイン。手には黒い革のグローブ、振り子の糸を首に巻かれたのだ。 「お前たちに人形の回収を依頼したやつの家はどこだ?案内してもらう」 「なんのために?」  ささやくような声で会話する。主導権はケインにある。 「もっとも合理的に事態を収める方法がある。その為には依頼主に依頼を撤回してもらう必要がある」 「なんだって?」 「・・・俺は、無意味な殺しをしたくない。無意味な争いもだ。この一件、このままでは平行線のままだ。それに、ケリをつけたい」 「・・・こちらも聞きたいことがある」 「なんだ?」 「君の依頼主は、それを望むのか?それ以前に、僕たちと接触していいのか?」  ケインは軽く肩をすくめると 「依頼は『尾行すること』だ。接触は禁じられていない。それに、最初にいったはずだ。もっとも合理的だと」  アーシィは考える。確かに、このままではにらみ合いのままだ。それを、合理的に収拾できるなら、その意見を聞いておきたい。 「・・・いいよ。案内する。ただし、武器を納めてくれないか」 「ありがとう」  ケインから、殺気が霧散した。  イブの家。今日は図書館が休みなので、彼女はここにいた。そして、二人の訪問者をもてなしていた。一人は人形回収を依頼した内のひとり、アーシィ、もう一人はケインという男。 「つまり・・・例の依頼を撤回して、NO294を父の親戚の子として引き取る、と?」  その提案に、イブも、そしてアーシィも眼を見開いた。 「そうだ。NO294―彼女はコッペリア効果で本物の魂を持った。これは、人間との違いは本当に紙一重ということだ。彼女を人形に戻すのは人間の魂を破壊する事と変わりない。ならいっそ、ルークの娘のあんたが引き取れば、無駄なにらみ合いも収まり、彼女も、彼女と仲のいい少年も、自警団もアーウィルも俺も、そしてあんたも、八方丸く収まると思うんだが」  出された紅茶を味わいながら、ケインは語った。眼鏡のレンズを光らせて。 ●第32話 投稿者:タムタム  投稿日:10月12日(木)23時09分22秒 「ん〜、確かにその通り。だが、君達は大きな勘違いをしていた様だね」  そう言うと、アーシィはイスにもたれ掛かりながら紅茶に口をつける。その様子はすでに、先ほどの事を忘れたかのような落ち着き様である。そして、空になったカップを置くとケインに話し始めた。 「一つ言っておこう。依頼内容は決して覆らない」 「どう言う事だ?」  殺気をみなぎらせてケインが身を乗り出してくる。だが、アーシィはそのままの姿勢で先を続けた。 「最初は邪精霊の仕業だと思ったから、人形に戻すはずだった。だが、実際はコッペリア効果によるもの。君の言ったように、すでに人間と変わらないあの子を人形に戻す気は始めから無い」  そこまで言って一息つく。すでにケインの体から殺気が消えている。 「それは、さっきの提案を受け入れると言う事か?」 「元から目的が一致していただけさ。第一、人形に戻したらリオ君が悲しむ。・・・大切な人を失う悲しみは知っているつもりだよ」  それだけ言うと彼は少しうつむいた。 「あれ?」  クラウド医院の窓から二つの影が外に出る。どうやら扉からではなく、窓から脱出したようだ。 「なるほど。出入り口は扉だけではない。と言う事ですか」  どうやら、常識のみで考えていたロイにとってはいい勉強になったようだ。そして、歩き出した二人を尾行?し始めた。 「まだついて来てますね」  後ろを見ずに、シュウがアルベルトに話しかける。いい加減何か行動を起こしたいが、いい案が浮かばない。仕方なく、二人はそのまま歩き続けた。 ●第33話 投稿者:ashukus  投稿日:10月13日(金)19時16分24秒 「・・・・・・(そうだ!!)」 しばらく歩いているとアルベルトが何か思いついたようだ、突然足を止める、そして 「おい、シュウ少し休んでいくぞ」 そう言いながらアルベルトはシュウに目でサインを送っている 「えっそんな暇は・・・・・・えっああ、そうですね休みますか」 また木の上から本を読みつつ二人を監視しているケインの姿をしたロイ 「こんな時に休憩ですか?まぁいいですけどね」 そう言うとロイはまた本を読み始めた 少し休憩した後アルベルトは化粧用の鏡を取り出した、その鏡でちらっとロイの方を見る 「・・・・・・・・(ニヤリ)オイ、シュウ」 アルベルトはシュウに何か耳打ちをする、シュウはそれに小声で反論する 「いやですよ、役所に怒られますよ」 「いいからやれ!!」 仕方なくシュウはロイのいる木の前まで来る、本に熱中しているロイはそれに気が付かない 「ぶつぶつぶつぶつ・・・・役所に怒られてもホントに知りませんからね」 そう言うとシュウは『居合抜き』の構えをとる、木を切り倒すつもりなのだ、そりゃ役所に何か言われるのは当然だ 「ハァッ!!(アルベルトさん本当に知りませんよ)」 シュウが刀を振り抜く、このくらいの木ならば一刀両断・・・のはずだった ガキィィィィィン 「あれっ?」 マーシャル武器店特売品、台所から戦場まで幅広く使え、ナイフ2本付きでお値段そのまま980Gの刀が砕け散った 「ああっ!!俺の1ヶ月分の給料が!!・・・・・・ナイフ2本付で980Gってのが怪しかったんだよな〜どうりでもろい」 「バカヤロウなにやってんだ!!どけ!!オレがやる」 アルベルトは槍を構え木に突っ込んでいった ブォン 金属音とデカイ怒鳴り声で本から目を離したロイ 「公共の場で騒ぐなんて非常識な人達ですね」 と、アルベルト達に目をやったその時、自分の座っている木が傾き始めた ギ、ギィィィ バサーッ 「どうだ!!ったく手間掛けさせやがって」 「アルベルトさん、やっぱりこれはまずいですよ・・・・」 シュウの話も聞かずアルベルトは監視者を捕らえにかかる、一方のロイは落ちたショックで魔法が解け元の姿に戻っている 「くそっ、あのケインとかいう奴どこ行きやがった、おいそこのガキ!!、金髪で眼鏡をかけた奴を見なかったか」 「ガキ?失礼な人ですね、人にものを聴くにはそれなりの態度というものがあるのではないですか」 「コイツ!!生意気なヤロウだな」 今にも暴れそうなアルベルトをシュウが押さえようとした時、聞き覚えの有る声が聞こえた 「おい、アル、落ち着け」 「あん?」 アルベルトが振りかえるとイヴの家での話を終えたアーシィが立っていた 「ん〜君がロイ君だな、ケインから話は聞いた、君も私達を監視していたわけか」 「俺達を監視してたのはあのケインとかいう奴だ、こんなガキじゃねぇ」 「本当に失礼な人ですねあなたは」 アルベルトとロイの間に険悪なムードが流れる 「二人ともやめるんだ、問題は解決したんだ、私達がこれ以上争う必要はない」 「解決したってどういう事ですか?アーシィさん」 アーシィはイヴの家であった話の内容をアルベルト達に話した 「うまい具合に事が進んだな、これであの3人も彼女を人形に戻そうとすることはないだろう」 物陰からアーシィの話を聞いていた義腕の男アーウィル 「さて、そろそろ自分も町に戻るか、あの隠れ家ともお別れだな」 そう言うとアーウィルはまず公園へ向かった、少女の名前を考えながら ●第34話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:10月13日(金)21時52分08秒 「おい。ウイップアーウィル」 「ん? ああ、あんたか。何か用か?」  いつの間にか、アーウィルの傍らに黒装束の男が立っている。 「何か用か、だと? 貴様、仕事もせずに何を考えている。このままではまずいぞ」  微かに怒気を孕んだ声を放ち、男がアーウィルの胸倉を掴み上げる。 「仕事ねぇ……あの話なら、ナシだ」 「何だと!? 何の為に貴様を雇ったと思っているんだ!」 「ああ、存分に利用させて貰った。おまえら人間は、一部の個体を除いて、組織にならなければ何の利用価値も無いが、 あんたらの組織はなかなか役に立ったよ」  アーウィルの表情が、変化した。いつもの穏やかな笑いではなく、顔を覆った仮面にひび割れが生じ、その亀裂から微かに素顔がのぞくような、 底冷えのする笑み。 「き、貴様……」 「脆弱な人間種族ごときが調子に乗るな。おまえらなどにあの娘を渡すものか」 「おのれ……」  呻くと同時。男は隠し持っていたナイフをアーウィルの首筋に打ち込んだ。 「それで? その程度でこの自分を葬れるとでも思っているのか? 救い難い愚かさだな、人間よ」  打ち込まれたナイフは、首筋の皮膚表面で止まっている。いくら力を込めても、一ミリも動かない。 「さて、死体を残すと面倒だな。二度とこの街に手を出さないように、警告として念入りに”解体”しておまえのボスの所に送り返してやる」 「このバケモノ……」 「そう言われても、何とも思わんよ。事実だからな」  その言葉と同時に、アーウィルの左手が男の喉笛を握り潰した。  右の義腕<戮皇>が、不満そうな唸り声を上げた。 「欲求不満だな、<戮皇>。その内、好きなだけ”運動”させてやる。今は、寝ていろ」  とりあえず、男の死体を”解体”し、魔法で転送する作業を終了させると、アーウィルは今度こそエンフィールドに向けて歩き出した。  微かに、憂鬱そうな表情で。 「自分のような”物”が存在することは、それ自体があの娘や人形達に対する侮辱だよな……」  巨大な義腕の肩部外骨格装甲を撫で、呟く。 「ちょっと長いが、トゥーリア=キューズ=フォーセリアなんてどうだ? <戮皇>よ」  <戮皇>は、猫科の猛獣が喉を鳴らすような唸りで応じた。 「そうか。賛成か」  アーウィルは破顔した。 ●第35話 投稿者:YS  投稿日:10月14日(土)04時39分28秒 「・・ふあぁ・・眠いですね・・」  ロイはひたすら暇だった。事件は何もかも予定の・・許容範囲内で解決した。少なくともこの事件にかかわった、心やさしい人達にとってはそのような結果に終わった。  あの後、人形はリオの家ですぐに見つかり、イヴの親戚ということで役所で登録された。人形だということが広まるといろいろ問題もあるからだ。  今は彼女は・・トゥーリアという名前を貰い、イヴの家とリオの家・・そして、図書館を行き来する日々を送っている。彼女が来る用になってからアーウィルの顔を出す回数も少し増えたようだ。 「・・暇なのは平和な証拠ですか・・」  先日持っていた分厚い本ーー応用魔法大辞典ーーはすでに読み終わっていた。実は持ち出し禁止だったので、あのあとイヴに少々小言を言われた。  今、ロイは何気なく窓の外を眺めながらぼーっとしている。窓の向こうではトゥーリアとリオが楽しそうに遊んでいて、由羅がそれを隠れて・・いるかは別として・・見ているようだ。 (・・トゥーリアーーターリアーー喜劇の女神の名ですか・・)  彼女の周りに笑顔がたえないことから、ふとそんなことを考える。 (・・やっぱりこの街の人は面白いですね、あの二人を心配して物陰から見守る人もいるなんて・・)  ロイの思っていることは事実とはだいぶ違うのだが、それはロイにとっては気にする必要の無い問題だった。  ちなみに、アルベルトはあの後リカルド隊長などにいろいろ言われたらしい。  シュウは給料を前借りして新しい刀を購入した。今度は試し切りも済ませてある。  ケインは事件が解決し、別の仕事を求めて契約書を片手に街をさまよっている。  ロイはいつものように、アーウィルとディムルはよく、図書館に出入りしている。 「・・さて、この街ならきっとすぐに退屈しのぎになるような事件がまた起きてくれるでしょうから、今は平和を楽しみましょうかね・・」  そう思いながら、今度は童話のコーナーに向かう。意志を持った人形の物語を探すために・・。 ●第36話 投稿者:タムタム  投稿日:10月15日(日)18時46分42秒                      『探索授業』  マリアはさ迷っていた。辺りは暗く何も見えない。それどころか、ここが何処なのかも分からない。落ち着いて考えるが、手がかりになるような記憶も無い。 「なんだろう?」  先ほどまで何も無かった場所に、小さな光が見える。深い考えも無しに近寄り、引きつった表情を浮かべると脱兎のごとく走り出した。  小さな光は低い唸り声を上げると、マリアの跡を追いかける。暗闇でよく見えないが、狼くらいの大きさがあるように見える。後ろを振りかえる余裕も無く、一目散に走るマリアの前に明るい光が差している。迷いも無しにマリアはその光の中へ飛び込んだ。 「うう〜」  何だか体が重い。さっきの夢のせいだろうか?取り合えず、窓から差し込む朝日をまぶしく感じながらのそのそと起きあがる。そして、窓の傍まで歩み寄り、カーテンを開くと綺麗な青空が広がっている。 「良い天気〜☆」  先ほどまでの憂鬱な気分は綺麗さっぱり吹き飛ばし、いつもの格好に着替え始める。すでに夢の内容などは頭から消え、代わりに<探索授業>の事でいっぱいだった。 「おっはよ〜☆」 「おはよう」  前方を歩いていたシェリルに声をかけ、一緒になって歩き出す。 「今日、晴れて良かったね」 「うん」  今日は魔法学園の探索授業。表向きは、薬草などの見分け方に対する知識を深めるため。となっているが、実際はほとんどピクニックのようなものである。  今回の目的地は雷鳴山。モンスターが出るかもしれないので、自警団からアルベルトと、公安に長期休暇を出したため、暇になっているヴァネッサが付き添うことになっている。  まあ、モンスターがいるような所を目的地にしなくてもよさそうだが、一応は授業。そこにしか生えない薬草もあるのである。 ●第37話 投稿者:美住 湖南  投稿日:10月15日(日)21時39分44秒  アルベルトとヴァネッサが探索授業の付き添いに行く前日、さくら亭で2人は酒を飲んでいた。建て前もあるが、本音は「きっと、なにかある」という不安感に襲われ、ならばお酒の味でも味わっておこうという事だった(らしい)。 「おい、おまえらそれくらいにしとかねぇと二日酔いになるぞ」  さくら亭でバイトをしているディムルがたしなめる。今のところほろ酔いだが、このままだと倒れかねない。 「いいじゃなぁ〜い、2人がつきあってくれるって言うんだし。ディムルくんも飲まなぁ〜い?」  いつの間にか一緒に飲んでいた由羅。こっちはもう泥酔だ。 「由羅、おまえはいいが、アルベルトとヴァネッサは仕事があるんだぞ。それにおれは18だ。飲めるはずがねぇだろ」  酔っぱらい相手に本気でおこっているディムル。仲良くなったため、年上でももう呼び捨てだ。敬語が苦手という節もあるようだが。 「ディムル、由羅相手におこってもしょうがないわよ。それにね、こうしたほうが早いのよ。 ゆ〜ら〜ぁ。メロディが心配するよ」  パティはでろでろになっている由羅を揺らし、耳元で囁いた。 「そうだわぁ〜。もう帰らなきゃぁ。・・んじゃぁねぇ〜」  ふらふらと歩いている由羅を後目に、 「成る程な。・・こっちの方は・・・・・・もうしっかりできあがってるな」  ほろ酔いと泥酔の中間あたりをさまよっていたようだが、すでに泥酔だ。 「まぁだまだこれからよぉ!だいじょうぶにゃんらからぁ!!」  ヴァネッサはグラスに入っている酒を飲み干すと、カウンターに叩きつけた。 「俺だってだいじょうびゅだぁぁぁ!!もっとのみゅかりゃなぁぁぁ!!!」  アルベルトも同じくグラスに入っている酒を飲み干すと、カウンターに叩きつけた。こうなると大人の威厳は台無しだ。すでに台無しになっている人もいるかもしれない。 「誰か来てくれ・・・」 「ほりゃぁ、速くつぎゅのよぉ〜(ほらぁ、速く注ぐのよぉ〜)」 「速く注げぇぇぇぇ〜〜」  2人が二日酔いになっては生徒の方が迷惑する。すでに、二日酔いをする領域に入っていると思うが。 「ほら、注いだぞ」  まさに、見計らったかのようにクレアがやってきた。心配になりやってきたと思われる。 「兄様!!皆さま困っているではありませんか!早く帰りますよ!!! パティ様、ディムル様、ご迷惑をおかけしました」  深々とお辞儀をしてアルベルトは引きずられていった。力のなさそうな少女が身長2メートルにもなろうかという男性を引きずるのを見るのは恐ろしいものである。 「・・・・」 「・・・・」 「・・・ヴァネッサは・・・・おれが連れて帰るよ。家のあるところは一緒だし」 「そうね。お願いするわ。後かたづけはしとくから帰っていいよ」 「あぁ。すまねぇ。・・おら、ヴァネッサ、かえっぞ」  年上に対する敬意もなにもない言葉遣いだ。 「としうねににゃんてこというにょよぉ(年上になんてこというのよぉ)」 「いつもなら別だが、そんな状態になったヤツを敬えっつーことじたい間違っていると思うぞ」 先ほどのアルベルトと同じ状態で引きずっていく。背の低い年下が背の高い年上を引きずるというのもこれはこれで恐ろしい。 「本っっっ当に明日、大丈夫なの?」  これが、パティの偽らざる心境だったという。 「次の日に重要な仕事があるヤツに酒は二度と飲ませねぇ」  これがディムルのこれからの教訓になった。 ●第38話 投稿者:ashukus  投稿日:10月16日(月)15時55分17秒 と、そんなわけで?一行は雷鳴山へたどり着いた 「(いててててて、二日酔いか・・・しかしなんでオレが付き添いなんて・・・・しかもこんな奴と一緒じゃなきゃいけねぇんだ)」 アルベルトはヴァネッサを睨んでいる、それに気が付いたヴァネッサ 「なによアルベルトくん、言いたい事が有るならはっきり言ってちょうだい!!」 ヴァネッサも二日酔いのようだ、なにかイライラしている 「ああ、言ってやるぜ公安の女狐め!!」 「失礼ね!!役立たずの巣窟の自警団のくせに!!」 「あんだと!!役立たずは公安の方だろうが!!・・・それになんだ?その口紅は」 「な、なによ、新色なのよこれ」 「ふん、化粧品ってのはな自分に合った物を選ぶんだよ」 アルベルトとヴァネッサの口論はどこかで聞いたようなお決まりの方向へ話を変え授業の付き添いなどほったらかしだ とりあえず表向きの授業内容である薬草の見分け方ということで薬草を探しているマリア、シェリル、そしてクリスの三人組み 「ぶ〜☆薬草無いじゃない」 「おかしいね、いつもはよく生えてるのに」 「そういえば、アルベルトさん達は?」 シェリルの問いにクリスが後ろを指差して答える 「た、だぶんあの人影がそうじゃないかな」 三人のはるかと遠くに二つの人影が見える、耳を澄ますと微かに声が聞こえてくる 「・・!!オレが化しょ・・真髄・・・・・・・やる・!!」 「・・・・男・・・・う・・なんて・・趣・してるわ!!」 「男が化・・ない・・・偏・だ!!・・・男も美し・・・・・だ!!」 授業に付き添っている筈の二人は歩くのが遅いのか、自分達三人が速いのか遥か遠くにいた 「いつのまにか、離れちゃったみたい」 「戻った方が良さそうだよ」 二人の方へ行こうとしたシェリルとクリス、と、ある事に気が付く 「あれ、マリアちゃん?」 気が付くと先程まで隣にいたマリアの姿が無い 「どこ行っちゃったのかな?もしかして一人で先の方に行っちゃったとか」 シェリル達の先には暗い森が広がっている 「と、とりあえずアルベルトさん達を呼んできましょう」 「う、うん」 シェリルとクリスはまだ不毛な争いを続けているアルベルトとヴァネッサの方へと走っていった ●第39話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:10月16日(月)17時37分04秒 「あれぇ〜? みんなどこ行っちゃったんだろう……」  昨夜の夢の中ほどではないが、森の中は結構暗い。  森の中に何かがちらりと見え、そちらに歩き出して、気が付くと誰も居なかったのだが…… 「う〜ん。どっちから来たんだっけ……」  どちらを向いても同じような景色の中で、方向感覚が狂っている。自分がどちらから来たのかも解らない。  ……と、 「何? 今の音?」  微かに、爆発音が聞こえる。間違いない。なにしろ、しょっちゅう魔法を暴発させているマリアだ。 爆発音は聞き慣れている……と言うより、人生の一部だ。 「ぶ〜☆ そんなことないもん!」  誰に向かって突っ込んでるんだ、君は。 「あ、あっちはさっき何か見えた方……」  あ、無視した。くそ。  ……と、それはさておき、マリアはいつもの後先考えない無謀さで、その爆発音の聞こえた方角へ走って行った。 「誰が後先考えない無謀なのよ!」  ふん。 「うわ……何これ……」  そこは、森が急に開け、一種の広場のようになっている場所だった。  しかし、直径が数メートルはある岩がごろごろし、視界は狭い。かくれんぼには最適だろう。  そしてそこに…… 「これ……間違いなく魔法で融かした痕……でも、こんなのって……」  その広場の中心は、直径百メートルはあるクレーターになっていた。凄まじい高熱を叩きつけられたかのように、 岩が半ば融け、半ば蒸発している。 「あつっ……!」  そのクレーターの縁に触れたマリアは、慌てて指を引っ込めた。  熱い。このクレーターは、まだ形成されて間もないのだ。 ●第40話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:10月16日(月)18時17分35秒  ケインは、雷鳴山をさまよっていた。薬草を手に入れ、売りさばくために。    前回の仕事でアーウィルから1000Gもらったのだが、不足していた薬品類、保存食等等を買い込むと半分ほどに減っていた。  なおかつ、エンフィールドには実績と信頼を勝ち得ている何でも屋、ジョートショップがある。商売敵としては、やりにくい相手だ。町の人間なら、ジョートショップを選ぶだろう。  彼は今、セントウィンザー教会に居候している。軒先に寝ていた所を神父に哀れんでもらったのだ。そして、収入の三分の一を渡し、ときには孤児院を手伝う代わりに寝床と食事を提供してもらうのだ。それからは午前中は孤児院の手伝い、午後は町をふらふら歩き、仕事を見つけようとしている。    今日は、今朝から薬草を取りに来た。孤児院で使うものだし、売れば小銭程度にはなる。  彼はナイフを振るって道を開き、薬草を入手していた。そのナイフは、見た目はごく普通だ。刃渡り25センチ、柄は15センチほどの、ナイフだ。だが、それは見た目の話だ。  『守護する白爪』、ケインは『ファング』と呼ぶが、師匠から譲られたそれは魔剣だった。刃には2,3の魔法文字が刻まれている。  効果は、魔法を含むあらゆる攻撃を障壁で阻む。こちらの攻撃は素通りして。刃の金属はやたらと強固な魔法合金らしく刃こぼれひとつ起こさない、でたらめな武器だ。  無論、弱点もある。発動に集中力が必要で、発動中はルーンバレットや魔力なしの振り子一つ使うのが精一杯なのだが、たいした事ではない。 剣の効果に比べれば。 「まあ・・・これだけあれば十分かな?」  持ってきた袋は薬草が八割がた入っている。クラウド医院に売れば、収入としてはぼちぼちになるだろう。  帰ろうとした、その時。  ズッドオオオォォォンンンン  轟音と衝撃があたりに響く。 「・・・なんだ?近くはないようだったが・・・魔法、だよな、絶対」  呆然と一人呟く。地鳴りもしたようだ。 「・・・いって、みるか・・・?」  薬草入りの袋を抱えて、ケインは爆音の方へと歩き出した。   そこは、まるで巨大なクレーターだった。あたりには蒸気がたちこめ、そう時が流れていないことを示している。まだ近寄っても火傷しそうだ。 「なんっ・・・?なんじゃこりゃ?」  絶句して、意識のどこかで考える。これだけの事をやれる存在を。  マリアが現われたのは、彼があっけにとられているその時だった。