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第29回  工房の 最近困っている事

輝豸雄は携帯電話を持ち歩かない。
どちらかというとハイテク機器は好きな方の輝豸雄だったが、
携帯電話となると、話は別だ。
便利だとは思うが、必要性は感じていなかった。
得意先から電話で追い回される様な営業活動はしていなかったし、
携帯電話の小さなスイッチを快適に押すには、輝豸雄の肉球は大きすぎたのだ。

  

それでも、
輝豸雄も「携帯を買おうかなぁ、、」と思う時がある。
最近は、公衆電話が減ってしまって、電話がかけられなくなってきたのだ。
やっと、公衆電話を見つけても、壊れていたり
話し中だったりして、困る事が増えてきたのだ。

あんまり、前の人が長電話だと、普段は温和な輝豸雄もついつい苛立ってしまい、
思わず、声をかけてしまうのだった。

  「もしもし、僕、電話がかけられなくて、クマっているんです。」 と。
                                                   第30回に続く