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第43回 工房の 劇団”仔熊座” 第1回公演「有栖〜或いは What Happened at Tedeo 」
わ〜! 凄い〜!
観客の歓声が聴こえていた。
第1幕が終わって、舞台裏に戻ってきた輝豸雄にもその声援は届いていた。
「よし、いい感じだ」
「いいよね、いいよね。」
「いけるな、俺たち」
「俺たちの公演はリアリティが命だ。」
「解ってるって。」
「そうだよ、そうだよ。」
「だから、、これを飲め」
「ん?」
手には、”赤いキャンディ”が握られていた。
「次の第2幕で、小瓶の水を飲むシーンがあるだろう」
「うんうん。」
「そこで、水と一緒にコイツを飲め。」
「どうなるんだい?」
「説明している暇はない、さあ幕が上がる、いいか、絶対飲むんだぞ!」
第2幕が始まった。
「あぁ、”わたしを御飲み”って書いてあるよ。早速飲んでみよう。」
輝豸雄は云われたとおりにキャンディを飲み込んだ。
舞台の照明が落ちて、小道具が大きなサイズのものに置き換えられるハズだったが、舞台が暗転する事は無かった。
舞台袖の監督を見る。輝豸雄と目が合った。
その瞬間、なんと、輝豸雄の身体が縮み始めたのだ。
見る見るうちに、輝豸雄は小さくなった。
おぉ! 凄い演出だ。
どうやって、小さくなったんだ!
観客から、感嘆の声が溢れ出す。
が、次第に歓声は罵声に変わって行った。
あまりに小さくなってしまった輝豸雄が客席から見えなくなってしまったのだ。
客席から、舞台に座布団が飛ぶ。
バッキャロー!何にも見えねぇじゃねか!
さっさと芝居をやれ〜
急に幕が下りた。
客席からの罵声が渦となって沸き起こる。
舞台の上の輝豸雄には、一体何が起きたのか、全く解らなかった。
その後、劇団仔熊座の公演を見たものはいない。
輝豸雄たちは、伝説になった。
第44回に続く