膵炎 Q&A

Q:膵炎と言うのは膵臓の病気ですね。そもそも膵臓は体のどの辺にあるのですか?
A:お臍より少し上の「みぞおち」と言われているところにあります。
みぞおちには胃もありますが、そのちょうど後ろ側に位置しています。
だから立体的に考えると、背中にも近いわけです。
形はコッペパンみたいに横に長くて、右側で十二指腸につながっています。

Q:どんな働きをしているのですか?
A:大きく分けて外分泌と内分泌のふたつの機能があります。
外分泌機能は、いろいろな消化酵素を含む膵液を出す働きのことです。
理科の授業で、唾液に含まれているアミラーゼという酵素の名前を聞いたことがありますか?

Q:確か・・・でんぷんを分解する酵素だったでしょうか。
A:そうです。これは膵液にも含まれています。
他にもたんぱく質を分解するトリプシンや、
脂肪を分解するリパーゼという酵素も入っています。
膵液は膵管という管を通って運ばれて、胆汁を運んでくる胆管と合流し、
最後に十二指腸へつながる構造になっています。
食事が、胃から十二指腸へ流れてきたとき、この膵液と混ざって、
消化・吸収を助ける働きをしているわけです。

Q:すると消化酵素を出す働きが外分泌機能なのですね。では内分泌機能は?
A;内分泌機能は、ホルモンを産生する働きのことです。
よく知られたホルモンでは、血糖値を下げるインスリンが、膵臓から分泌されています。
したがって内分泌機能は、糖尿病の発生とも関係してます。
 
Q:よくわかりました。ところで今日の本題は膵炎ということですが、
どういう病気なのでしょうか?
A:外分泌機能のほうの異常で起こります。
一言で言うと、膵液が膵臓自体を消化するために、炎症が起こってくる病気です。
膵液は本来、膵管の中を流れているわけですが、流れが滞ったり、逆流したりすると、
十二指腸へ注がれる前に誤って活性化して、膵臓本体を溶かしてしまうわけです。
お酒の飲みすぎとか、胆石症とかが、主な要因になります。
事故でお腹を強く打って起こることもあります。
急激に発症する急性膵炎と、長い時間をかけてゆっくり起こる慢性膵炎に分けられます。
どちらも中年男性に多い病気です。

Q:どんな症状でしょう?
A:急性と慢性に分けてお話します。
急性膵炎で最も多いのは、みぞおちの部分の強い痛みです。
吐き気、嘔吐、膨満感、それから今日の題名にもある背中の痛みもよくみられます。
さっきお話したように、膵臓はお腹の奥に位置しているので、痛みが背中にも及ぶわけです。

Q:その症状だと私なら胃でも悪いのかと思ってしまいそうですが・・・
A:そうですね。来院する時たいていの方は、「胃が痛いんですけど・・・」とか言って、
なかなか膵炎までは思いついてはいないようです。
でもひとたび急性膵炎が重症化すると、血圧が低下したり、呼吸状態が悪くなったり、
腎不全などを引き起こしたりして、命の危険もあります。
だから見逃してはいけない病気のひとつなのです。

Q:なるほど、気をつけなければいけない病気なのですね。
では、もう一方の慢性膵炎はどんな症状なのですか?
A:慢性膵炎でも同じような症状が出ますが、程度は急性膵炎よりも軽い傾向にあります。
お腹の左上の痛みや、背中の鈍い痛みを訴えることもあります。
お酒好きの人が多いので、症状が治まっているときは、ついアルコールを飲んでしまって、
再発を繰り返すことが多いです。
病気が進行すると、膵臓の組織が壊れて、膵液を作れなくなるために、
かえって痛みの症状がなくなることもあります。
膵液の量が減ると、食事の消化吸収が悪くなって、
結果として下痢とか体重減少とかが起こります。
それから、インスリンの分泌が悪くなると、糖尿病にもなります。

Q:膵炎かどうかの検査はどうするのですか?
A:まず血液や尿を採って、膵臓から出るアミラーゼをはじめとした消化酵素を測定します。
もしも量が増えていれば、膵炎の可能性があります。
お腹のレントゲン写真では、膵炎に特有な、腸のガスが写っているかを調べます。
慢性膵炎では膵石という細かい石ができて、レントゲンで見えることがあります。
さらに、超音波検査やCT検査で、膵臓の状態をみて診断をします。
また最近はMRCP(磁気共鳴胆道膵管造影)という、磁気を使って
膵臓の状態をみる検査もできるようになりました。

Q:膵炎と診断された場合、どんな治療をするのですか?
A:急性膵炎では、食事をとると膵液が出て、膵臓の炎症をさらに悪くするので、
絶食の必要があります。
でも飲まず食わずでは、体がまいってしまうので、入院して点滴を行います。
同時に膵臓の炎症を抑えるために、酵素阻害薬、抗生物質、鎮痛剤などを使います。
軽症ならば1〜2週間くらいで良くなってきます。
でも重症のときは、命の危険があるので、全身管理が必要なこともあります。
手術になることは少ないですが、胆石が原因になっているときや、
膵のう胞という袋のようなものが膵臓にできているときは、適応になることもあります。

Q:入院になるのですか。大変ですね。
ではもう一方の慢性膵炎はどのような治療するのですか?
A:慢性膵炎では、痛みが激しければ、入院して点滴を行うことがありますが、
たいていは通院治療が可能です。
まず食事ですが、アルコールが原因のことが多いので、これは絶対禁止です。
食べすぎに気をつけて、腹八分目を心がけ、特に脂肪分を控えなければなりません。
そして炎症を抑える薬を、しばらく飲んでいただきます。
慢性的な病気は、根気よく治療することが大事なのです。
また、合併症で糖尿病になってしまったときは、注射でインスリンを補います。

Q:すると膵炎になった人は、その後もずっと食事に気をつけることが必要ですね。
A:そうです。宴会ではビールではなく、お茶にしておいてください。
料理の味付けが濃いと、膵液がいっぱい出るので、薄味にしておきます。
コーヒー、紅茶のようなカフェインの入った飲み物、コーラやサイダーなどの炭酸飲料、
唐辛子やマスタードのような刺激の強い香辛料とかも、ほどほどにしておいてください。
でも食事を抑え過ぎると、ビタミン不足になることがあるので、
野菜や果物をバランス良くとることも大事です。

Q:ストレスは関係しますか?
A:ストレスも膵炎悪化の要因なので、毎日少しでもいいからリラックスの時間を設けて、
好きな趣味をしてみるとか、軽いスポーツを行ったりして、発散を心がけましょう。

Q:わかりました。要は、食事や習慣を含めた日常生活での自己管理が、
膵炎を治療するうえでなにより大切ということですね。
A:はい、そのとおりです。


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