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1997年9月25日のビッグコミック(小学館)の表紙を開くと飛び出してくる画は、ビッグコミックのファンの方々には鮮烈に印象に残ったことでしょう。
青い水中に身をまかせた裸婦は、繊細に描かれ写真のようなカットでした。このとびらは現在、池上氏が描くカットの代表作となりました。
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池上氏の作家生活30周年を記念して描かれたこの作品は、41ページにわたるピュアなオリジナル作品。これ以前からの池上ファンにとっても、驚かされた方は多いでしょう。
池上ファンであった私も『近代日本文学名作選』とこの作品により、池上氏の作品の見方を大きく変えました。この衝撃が、今、「池上遼一.database」になっているのです。私は今まで漫画作家に対してこんなにものめり込んだことはありません。このことは、コミックだけでなく初出誌の収集にまでのめり込む熱烈なファンになったきっかけにもなりました。そして、そのことに関して”馬鹿者”と言われても決して後悔しない私は、現在に至るのです。
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1995年2月に発売された谷崎潤一郎原作の「刺青」をはじめとして、近代日本文学を代表する文豪たちを原作とする「地獄変」「お勢登場」「籐十郎の恋」「松風の門」「天守物語」の6作品は、池上氏の新たなるオリジナル性を強くアピールしました。この流れの延長線上になる「水中花」は、ストーリーも池上氏自身によるオリジナルでした。このオリジナル性も近代日本の文豪に対して肩を並べる勢いを、私は感じています。
強烈な描写力を持つ絵師・池上遼一の作品を近代日本の文豪が読んだとき、彼らは、「水中花」という作品にどういう評価をくだすのでしょうか。
池上氏は、以下のように、語っています。 |
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結局、絵柄というのは、文学でいえば文体だとボクは思うね。稚拙な絵でも、その絵が内容とあっている場合もあるし。絵柄と内容を分けて考えることは、まんがの場合、ありえない。
引用: ビッグコミック・オリジナル 新人コミック大賞増刊号1998年10月12日号 「オレのまんが道」
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池上氏は、『近代日本文学名作選』の「著者インタビュー」の中で、「『近代日本文学名作選』全6作品を書き終えての感想」 として、以下のように語っています。 |
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いや、いろんな意味で大変勉強になりました。こういった耽美的というか、幻想的なものを、以前からずっと描きたかったんですが、なかなかチャンスがなくて、まあ「ビッグコミック」だったら、許してもらえるんじゃないかと...。本当は、全部ボクのオリジナルで描ければよかったんですが、自分で納得できる物がつくれなくて...。コミック原作者の方の力を借りることも考えたのですが、いっそ、自分の好きな文学作品を原作にもらってこれないかなと...。 |
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『近代日本文学名作選』を振り返る1997年8月21日のインタビューから、約20日後の9月10日に発売された「水中花」。このインタビューが行われていた時に、「水中花」は描かれ始めていたことでしょう。『近代日本文学名作選』を描ききったとき、池上氏はその経験から大きな自信を得たと推察できます。
「水中花」は池上氏にとって、『近代日本文学名作選』の”次のステップ”であり、真剣な取り組みになったはずなのです。”池上遼一の本気(マジ)”....それは、ビッグコミックの表紙をめくったときから、鮮烈にアピールしたのです。 |
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