マリオネット・マンドリンオーケストラ 5thコンサート

文:「奏でる!マンドリン」編集部



 2011年7月23日(土)、大阪の高槻現代劇場大ホールにてマリオネット・マンドリンオーケストラ5thコンサートが開催された。例年の如くステージには約80名のメンバーが上り、客席は1200人近い聴衆で埋め尽くされ、大変な盛況感のあるコンサートとなった。

 マリオネット・マンドリンオーケストラ(以下マリオケ)は、ポルトガルギターのパイオニア・湯淺隆とマンドリン奏者・吉田剛士によるアコースティックユニット「マリオネット」のオリジナル楽曲を専門に演奏するオーケストラとして、吉田剛士指導・指揮のもと、2006年に結成された団体。日本人としての感性と、ラテン系撥弦楽器の魅力を生かした曲作りを進めてきたマリオネットの楽曲を、新たに合奏曲として発展させた独自のレパートリーで、マンドリン合奏の新たなスタンダードを提案している。

 毎回、数多くの新しいレパートリー(全曲マリオネットのオリジナル作品!)を演奏するが、今回も数多くの新しいレパートリーを交え充実したステージを披露した。昨年はゲストに中国古筝デュオの鶯と燕(インとイェン)を迎え共演したことが記憶に新しいが、今年はマリオネットのポルトガルギター奏者:湯淺隆が特別出演。マリオケ結成後、5回目のコンサートにして初めてマリオケとの共演を果たした。

 湯淺隆と吉田剛士のデュオ「マリオネット」は、マカオ観光局が全国の主要都市で開催する「マカオの夕べ」コンサートでもここ数年レギュラー的に出演しているが、今年は各地元のマンドリンオーケストラと共演する新企画が既に鹿児島、長崎、大分、松山、徳島などで開催されている。今回のマリオケ5thコンサートの内容はその企画を部分的に反映したもの。また、マリオネットが中心となり、12/2〜5に世界遺産の街マカオでマンドリンオーケストラの大合奏をするツアーを企画しており現在、全国からの参加者を募集しているが、それを含め大きな流れを持つ一連の企画の一つに位置づけられたコンサートとなった。

演奏曲目は以下の通り。

第1部
オーケストラ演奏 第2部
アンサンブル演奏
1st 榎素代子  2nd 手塚かよ  Mandola 榎和哉  Mandocello 森本和幸  Guitar 谷治毅  Bass 柴田大樹 第3部
オーケストラ演奏 特別出演:湯淺隆(ポルトガルギター) オーケストラ演奏 アンコール

 演奏曲目はいずれもマリオネットのオリジナル作品をマンドリンオーケストラ用に編曲したもので、かつてTV番組やCM、演劇などで使われた作品も多い。
 第1部は全曲新しいレパートリー。繊細さの目立つ静かな流れのプログラムとなった。
 そのまま続けての第2部はお決まりの小編成コーナー。今年は標準6パート各1名という編成。マリオケ第1回目から小編成ステージの編曲を担当しているメンバー森本和幸の編曲で動きのある2曲を演奏した。
 休憩を挟んでの第3部、最初の3曲はポルトガルギター湯淺隆との共演。マリオネットのエッセンスを吸収し、こなれてきたオケとの調和したサウンドは安定感を感じさせ、情感豊かな演奏で聴衆を魅了した。続いて全国で展開する「マカオの夕べ」コンサートでの定番曲を3曲、ラストにはバージョンアップした「南蛮渡来」を演奏。10分近いドラマティックな大曲となった「南蛮渡来」は合奏曲として内容・ボリュームともに充実し、今回のコンサートのラストを華々しく飾った。

 前回もそうであったが、回を重ねるごとに、結成時に聞かれた「本家マリオネットと比べて云々」という感想は影を潜め、マンドリンオーケストラとして独自の存在感を強め、逆に大合奏ならではの魅力も聴衆に届き始めているように思える。

 代表の吉田剛士が「有難いことにオーケストラとしての出演機会も増え、私たちの楽曲が取り上げられる機会も増えつつあることを実感しています。」と当日パンフレットのあいさつ文に書いているが、実際に昨年の4thコンサート以降、この一年のマリオケの動きを振り返ってみよう。

そして今回の5thコンサート直後の7月27日 全国高校ギターマンドリンフェスティバルにいたるまで、定演以外の大きな催しで数多くのゲスト出演を果たしている。
 さらに今年の10月13日(木)には大阪国際交流センター大ホールで行われる「マカオの夕べ」コンサート大阪公演への出演が予定されており、なにかとマカオ関連の動きが目立つマリオケであるが、こうして振り返ってみると、意外にもマンドリン関連の主要なフェスティバルなどにも関わっており、本筋での注目度の高さも少なからず窺えるのである。

 同じく、吉田は以下のように記す。
「私たちの音楽は、特定のジャンルに分類されにくいものですが、あえて言えば軽音楽です。しかし、決して「軽い」音楽と戯れているわけではありません。どんな音楽でも、真摯かつ謙虚に向き合わない限り、表層的な楽しみに終わってしまいます。より高みを目指す意識の総体こそが、メンバー個々人の技量を超え、一つのオーケストラとして感動を与える音楽を生み出すものと信じています。そのような感動を一瞬でも客席の皆様と共有することができればこの上ない幸せです。」
 独自のレパートリーで活動する、ある意味で特殊ともいえるマリオケだが、音楽の本質を素直に追い求めたいという思いは他の多くのマンドリンオーケストラの目指すところと共通するのではないだろうか。更なる発展が望まれる。