1.序文 〜来し方行く末を見つめて〜

吉田剛士


それなりの年齢になってきたせいか、身の回りにいろんな変化があったり、身近な人が亡くなったり、時の移ろいをひしひしと感じます。どこまで行けるか、あるいはどこで野垂れ死にするかわからない、実に危うい人生であることも身にしみてきました。

つくづく思うに、私は音楽家としても人間としても、実に未熟な存在です。

今日まで音楽の仕事を続けて来られたのは、ひとえにオフィス・マリオネットの素晴しい仲間に恵まれ、また、それと同時に、多くの方々のご厚意に支えていただいたおかげです。もし、私がそれらの「出会いと導き」を省みず、偏狭に閉じた自己の世界観に埋没していたなら、一介のマンドリン弾きであることに甘んじ、せいぜい小器用で場当たり的な人生に終始していたことでしょう。思うに今日まで、オリジナルな表現活動の機会に恵まれているのは、奇跡的なことです。改めて感謝の気持ちを忘れてはならないと思っています。

今この場に立って痛感することは、現在に至るその軌跡こそが、私のすべてであるということです。日々の生活も人間関係も、全てその軌跡の中から培われてきたものです。そして今後も、この奇跡的な日常の継続によってのみ、私が吉田剛士であり続ける事が出来ると確信しています。マンドリンは私の武器であり、砦たるマリオネットは、私のライフワークそのものです。

ふと立ち止まり、来し方行く末に思いを馳せるこの瞬間、私は改めてこの自分のライフワークに邁進していく決意を新たにしています。


2.更なる可能性と広がりを求めて 〜マリオネット・マンドリンオーケストラ〜