わんだふる ネパールヒマラヤ2 (1)

はじめに

 2008年03月16日(日)から24日(月)の9日間、ネパール・アンナプルナ・ヒマール展望のトレッキングしてきました。今回のネパール・トレッキングは、2003年12月26日(金)から2004年1月5日(月)のクーンブ・ヒマール地域トレッキング(いわゆる”エヴェレスト街道”)に続いて2回目のネパールのトレッキングでした。クーンブ・ヒマール地域トレッキングについては、「わんだふる ネパールヒマラヤ」のほうをご覧になってください。今回のトレッキングで歩いたところは、ポカラの北方のルムレから、ガンドルン、タダパニ、ゴラパニ(プーン・ヒル)を経由してナヤプルまで周遊する5泊6日のコースでした。このコースのハイライトは、アンナプルナ山群(アンナプルナ南峰(7,219m)、マチャプチャレ(6,993m)など)、それにダウラギリ山群(ダウラギリT峰(8,167m)など)の展望です。特に、プーン・ヒル(3,194m)からの早朝の8000、7000m級の高峰の展望は圧巻でした。また、トレッキング中に見た深紅の花をびっしりと咲かせたシャクナゲの巨木の林は、日本では想像もできないほどで、私にとっては驚きでした。雨季も間近かのためか、夜間に時々大雨に見舞われましたが、それ以外は好天に恵まれ、すばらしいトレッキング体験をすることができました。これらの体験をご報告します。

 今回の報告は、「わんだふるカナディアンロッキーズ」、「わんだふる台湾山脈」、「わんだふるニュージーランドアルプス」、「わんだふるネパールヒマラヤ」、それにに一昨年の「わんだふる中国四川山群」に続くものです。今後、章立てに従って日記風に述べていきますが、一部創作もありますのでご了承ください(高度や時間等は一部不正確です)。よろしかったら、最後までお付き合い願います。

                                                        2008年4月23日(水)

  1.プロローグ 
  2.ネパールへ向けて出発 : 03月16日(日) 
  3.ポカラ経由 チャンドラコットへ : 03月17日(月) 
  4.モディ・コーラを渡ってガンドルンへ : 03月18日(火) 
  5.アンナプルナ山群の展望、その後タダバニへ : 03月19日(水) 
  6.シャクナゲ林を通ってゴラパニへ : 03月20日(木) 
  7.ダウラギリ山群、アンナプルナ山群展望、その後ヒレへ : 03月21日(金) 
  8.ナヤプル、ポカラ経由カトマンズへ : 03月22日(土) 
  9.マウンテン・フライト、カトマンズと帰路 : 03月23日(日)、24日(月) 
     *トレッキング留意事項(感想)* 
 

                                             => わんだふる山中湖(戻り)

1.プロローグ

 2003年の年末に行った”エベレスト街道”トレッキングがとてもすばらしかったので、”いつかは再びネパールへ行けたなら・・”とずっと思っていました。一昨年もネパール行きを検討したのですが、家内が花(ブルーポピー)を見たいということで、中国四川省の大娘姑山へ行きました(もちろんすばらしいところでした)。今回もどこへ行こうか迷ったのですが、最近は寄る年にかなわず体力の衰えが激しく、とても4,000、5,000mの高峰を登ることは不可能であると考えました。それに、私は退職しており、以前に比べれば時間の制約は少なくなったのですが、今度は定職のないアルバイト生活をしており、とても高額なトレッキングには行くことができません。ということで、今回は比較的安価で、かつもともと行きたかったネパールへ行くことに決めました。当然、今回は”エベレスト街道”とは違うところということで、旅行会社が用意していた”アンナプルナ・ダウラギリ展望”トレッキングと”花のランタン谷”トレッキングの2つを検討し、日程の都合から前者を選びました。

 今回は2度目ということで、ネパールでのトレッキングのイメージができていたので、準備にあまり悩むことはありませんでした。それに、最高標高がプーン・ヒル(Poon Hill)の3,185mであり、エベレストの時のように4,000m近くでの宿泊はないので、高山病の心配はありませんでした。また、季節も前回の厳冬期ではなく、3月中旬ということで、防寒の心配もありませんでした。ということで、前回のように、「どうにでもなれ!とにかく行ってみよう!」といった思いつめたような気持ちはなく、リラックスした気持ちで出かけることが出来ました。
 ネパールのヒマラヤは世界の屋根と呼ばれ、世界最高峰のエヴェレスト(Everest:8.848m)を始め7,000m、8,000mを越す高峰がたくさんあることは誰もが知っていると思います。また、ネパールの首都カトマンズのヒンズー教寺院が世界文化遺産として指定されています。

 ヒマラヤとは、一般的には,東西約2,400Km、南北200から300Kmにおよぶ壮大な山塊地域を言うそうです。このヒマラヤの中核をなすのがネパール・ヒマラヤです。ネパール・ヒマラヤはいくつかの山群に分かれていますが、今回目指したところは、ネパール・ヒマラヤの中央に位置するアンナプルナ・ヒマール(Annapurna Himal)という地域ですが、プーン・ヒル(Poon Hill:3,185m)からはダウラギリ・ヒマール(Dhaulagiri Himal)のダウラギリ山群も展望できます。

 アンナプルナ・ヒマールは、アンナプルナT峰(8,091m)、南峰(7,219m)、を初めとして、7000m級の高峰、峻峰が11座ほどそびえ立っています。山名はサンスクリット語で「豊饒の女神」を意味するそうです。この山群のトレッキングは、クーンブ山群(エベレスト周辺地域)と並んで人気のコースです。

 ダウラギリ・ヒマールは、アンナプルナ山群の西に約50kmにもわたって連なる大きな山群で、ダウラギリT峰(8,167m)を盟主として8座の7000m級高峰を擁しています。トレッカーはアンナプルナ山群に比べて少ないようです。

 今回のトレッキングは、ポカラ(Pokara:500m)からバスに乗ってルムレ(1,350m)まで行き、そこからチャンドラコット(Chandrakot:1,590m)、ガンドルン(Ghandrung:1,950m)、タダバニ(Tadapani:2,721m)、ゴラパニ(Ghorapani:2,874m)(&プーン・ヒル(3,194m))、ヒレ(Hile:1,550m)と巡って、ナヤプル(1,050m)まで下り、そこからバスに乗ってポカラへ戻るというコースです。トレッキングの途中ではアンナプルナ南峰、マチャプチャレなどのアンナプルナ山群が間近に眺望でき、プーン・ヒルでは早朝のアンナプルナ山群とダウラギリ山群の大パノラマが展望できます。またトレッキングコースは、シャクナゲの大木の林の中を通っており、3月から4月にかけてすばらしいシャクナゲの深紅の花に染まった山々を見るできます。
 トレッキングコースはきれいに整備されており、途中所々にレストラン兼宿泊所のロッジがたくさんあり、お土産店も多く出店していました。今回のトレッキングでは、10数名のシェルパの人々に支援してもらっています。

 ここで、ネパールについて簡単に説明します。ネパールは、かつては国王を戴いた王国でしたが、今は民主化され、共和制に移行しようとしているところです(国情が未だにやや不安定のようですが)。国は東西に長く、そのほぼ中央にカトマンズ盆地があり、そこに首都カトマンズが置かれています。
 緯度は日本の奄美大島と同じくらいですが、標高は1300mから1400mで、気候は雨期と乾期とに分かれているそうです。12月は乾期で、雨はほとんど降らないとのことでした。12月の気温は、最高20度、最低2度くらいとのことで、日中と朝晩の寒暖の差が大きいようです。乾期のカトマンズは雨が降らないため、とても埃っぽいとのことです(私の場合は、今回もそんなに感じられませんでしたが)。
 日本との時差は、マイナス3時間15分です。すなわち、日本の午前10時は、午前6時45分となります。通貨単位はルピーで、1ルピーおよそ2円くらいでした。宗教はヒンズー教(カースト制度がある)が主であるようですが、チベット仏教なども混在しているようです(一般の日本人にはよくわかりません)。

 それでは、これから「わんだふるネパール・ヒマラヤ2(アンナプルナ・ダウラギリ山群)トレッキング」の体験をご報告します。是非最後までお付き合いください。



2.ネパールヘ向けて出発 : 3月16日(日)

 16日(日)、早朝に所沢へ車で行き、そこから成田空港行き高速バスで成田に向かった。高速道路は混雑することもなく、予定通り2時間で成田空港に到着した。8時40分、空港出発ロビーに集合。今回のツアーは、ツアーリーダーを含め15名であったが、関西空港から出発する人が6名いたので、成田に集合したのはツアーリーダーを含めて9名であった。で、10時40分キャセイ(Cathey)航空CX501便で経由地の香港に向かった。

 香港までのフライト時間はおよそ6時間で、香港には現地時間14時50分(日本時間15時50分、時差1時間)に到着した。ここで関西空港からのメンバーと合流した。乗り継ぎの接続が悪く(料金が安いため仕方がないのかな・・)、4時間ほど香港空港で時間をつぶすことになった。ぶらぶらと見るだけのショッピングをしたり、カフェーで休憩したりして時間を過ごした(カフェーでは日本円での支払いはできたが、おつりは香港ドルとなる)。

 19:00、香港ドラゴン(Dragon)航空KA102便に乗り換えて香港を出発、およそ5時間のフライトでネパール・カトマンズ(Kathomandu:1,300m)にようやく到着した。現地時間21:40分(日本時間0時55分、時差3時間15分)である。入国チェックを行い、荷物を受け取り、空港を出ると、大型のマイクロバスが待っていてくれた。カトマンズは標高1,300mくらいであるが、日本に比べるとかなり暖かかった。
 バスはカトマンズの市内(裏道のような細い道)をくねくねと走って、22時40分にようやく宿泊するホテル(Radison Hotel)に到着した。何もしていないのだが、およそ20数時間の旅でかなり疲れた感じではあった。でも再びネパールへ来たのかと思うと、とてもうれしく思った。
HongKong Airport

【閑話】:香港からネパールまでの飛行機内での英会話の練習

 ようやくドラゴン航空102便に搭乗し、座席についてほっとしていたところ、私(B席)の隣のA席(窓際)にアラブ系と思われる顔をした30才前後の若い男性が座った。彼は、最初窓際のF席に座っていたのだが、間違っていたらしく、反対のA席に移ってきたのである。それだけなら別にNoProblemなのだが、飛行機が離陸してしばらくすると、彼は私に英語で話しかけてきた。もちろん、私は英会話は得意でないし、旅行中に英会話にトライして見ようなどという気持ちはさらさらなかった。それで、私は「I can't understand English.」と答えて、会話から逃げようとした。ところが、彼は私の「I can't understand Englishi.」の発音が悪くて理解できなかったのかどうか、また話しかけてきた。あまり逃げるのも、日本人一般の名誉を傷つけてしまうのではないかと思い、やむをえず彼の英語を必死になって聞き、質問に答えることに決心した。もちろんヒアリングは不得意なので、何度も質問をしたし、また私が答える”英語”は当然Broken Englishiなので、相手も何度か聞き返してくる。

 ようやく分かったことは、彼はネパール人(ネパール人はいろんな人種がいるようで、顔だけでは判断がつかないようである)で、日本の愛知県のある企業にビジネスで訪問し、その帰りだとのことであった。彼はネパールのIT企業のVice Presidentで、日本のSoftware開発関連ビジネスをやろうとしているらしかった。私も以前IT企業に勤めていたので、その点では少し話が出来た。彼はビジネスの合間?に日本の相手企業の人から関西をあちこち連れて行ってもらったらしく、日本語はまったく分からないのだが、結構日本の知識を持っていた。特に日本の歴史に興味があるようで、法隆寺等のお寺の名前や平安京といったようなことまで知っていたのには驚いた。

 彼はムスリム(イスラム教徒)で、したがって肉類は一切食べないヴェジタリアンであるそうだ(機内食は特別にヴェジタリアン用のものが用意されていた)。また、日本からのお土産に設楽焼きの狸の焼き物やマネキン猫、あんぱんまんの絵本、谷村新司のCDなどを買ってきたらしく、いろんな質問をされてしまったが、まあ日本のお話なので、何とか話を合わせて、とりあえず時間を稼ぐことはできた。日本は今回が3度目であるが、東京は観光をしていないとのことだった。また6、7月頃に日本を再訪するとのことであった。彼は私にBusiness Cardを渡し、「今度日本へ行くときは東京で電話をするがよいか?」と聞かれ、まさか断るわけにもいかず、つい「Oh,Yes.」と言い、私もPrivateなCardを渡し、「電話をくれたら富士山周辺を案内しましょう」などと答えてしまった。あわわわ・・・どうしましょう。

 その他、以前のネパールでのトレッキングや今回行くところなどいろんなことを話したのだが、要は私は飛行機の中でゆったりとすることもできず、必死になってPoorな英語力でネパール人と英会話?を試みる羽目になってしまったということである。フライト時間の3分の1くらいの間緊張しながら話していたように思われるくらいである。更に、カトマンズのホテルのベッドの中でも、”ああ話せばよかった”とか”こう答えればよかった”といったことが気になって、夢にまで彼と英会話をする羽目になってしまった。本当に疲れたフライトであったと思う。トレッキングの前から、おおいに精神的に疲れてしまった。

 *カトマンズの飛行場で荷物が出てくるのを待っていると、また彼にばったりと会った。それだけなら別に問題はないのだが、その場に彼の素敵な奥さんとかわいい娘さんがきており、二人を紹介され、当方はどうしたらよいのか分からずあわててしまい、おおいにあせってしまった。でも、彼の家族がなぜ空港の荷物受け渡し場所にまで入ってこれたのかいまだに不思議である。

 ホテルのロビーで、ツアーガイドから、「明日は5時45分のモーニングコールで、朝食は6時半から、7時半にはホテル出発との連絡事項があった。早速部屋の鍵をもらい、部屋に入り、ゆったりする暇もなく、明日の荷物の仕分けを行った。トレッキング中不要なものはホテルに預け、さらにトレッキングに持っていくもののうち、トレッキング中に自分が持つものと、ポーターに持ってもらうものとを仕分けなければならない。自分の持つものは、30Lのザックと、雨具、水筒それに若干の着替え程度であるので、とても軽い。一方、ポーターに持ってもらうのは、大型のダッフルバッグで、いろんな物が入っているので、10kg以上はあったかもしれない。”悪いなー!”とは思いながらも、こちらは体力がないので、お願いするしかない。ありがとうございます・・・その後バスに入って、寝たのは12時半過ぎとなってしまった。

 注)ホテルでは、ツアー会社より1人あたり3,000ルピーの両替パックがあったので、それで日本円の両替を行った。トレッキング中は大きなお金を使うことはほとんどないということでった。



3.ポカラ経由 チャンドラコットへ : 3月17日(月)

 朝、モーニングコールで目を覚ました。天気は晴れているようだが、例のスモッグのような曇り空で、どんよりしているように見えた。左写真にあるように、ホテルの前は狭い道路で、両側に観光客用のみやげ物店や両替店、レストランなどがあった。近くにはスーパーマーケットもあり、帰りのときはショッピングもした。
 すぐに荷物の整理を行い、ホテルに残す荷物とトレッキング中ポーターに運んでもらうダッフルバッグをまとめ、ドアの前に出した。それから朝食をとり、あわただしく今日持つザックを背負ってロビーに集合した。皆元気そうであった。
 7時30分、大型マイクロバスに乗り、空港に向かった。マイクロバスは相変わらずごみごみとした狭い道路を走り、およそ30分で空港の国内線乗り場に到着した。
Radisson Hotel Hotelから見た門前道路


双発機Yetti(雪男) ポカラ(Pohkala)飛行場 トレッキング出発地(ルムレ)

 飛行機は天候のせいかなかなか飛ばず、1時間くらい待たされ、9時にようやく双発プロペラで、約30人乗りのポカラ(Pokala)行きの飛行機(Yeti(雪男))に搭乗することができた。しかし、再び待たされること30分、離陸したのは9時半であった。前回のルクラ(Lukra)行きよりはましだったかもしれない。良しとしよう

 およそ25分のフライトで、ポカラ(Pokhala)の飛行場に着いた。ポカラの標高はおよそ500mで、亜熱帯地方ということで、暖かいというよりは暑いといった感じであった。
到着後すぐに、大型マイクロバスに乗り、トレッキングの出発地であるルムレに向かったが、道中の景色はあまり記憶にない。ただバスはどんどんと標高を上げながら走り、ようやく到着した地点ルムレはおよそ1,350mの標高であった。

 ここは家が数軒あるだけで、他に何もないところで、降りるとすぐに支度をして、11時45分に今日の宿泊地であるチャンドラコット(Chandrakot:1,590m)を目指して歩き始めた。標高差はおよそ200mで、30〜40分の行程である。
 空は曇っていたが、暖かく、トレッキング日和とでもいえようか。途中の道筋はのどかな農村の風景で、石積みの平屋の農家ときれいに作られた段々畑が続いていた。写真を撮りながらゆっくりと歩き、ちょうど13時にチャンドラコット(Chandarakot:1,590m)の宿泊ロッジに到着した。

途中の農村風景 見事な段々畑 チャンドラコットの通り道 宿泊ロッジ(Nirvana)

 到着すると、直ちにティータイムとなり、シェルパから恒例?のティーとクッキーのサービスがあった。皆、まずはほっとして、今日見てきたことやこれからのトレッキングの話をした。晴れていれば、チャンドラコットからアンナプルナ・サウス(7,219m)やマチャプチャレ(6,993m)が大きく見えるそうだが、今日は曇り空で何も見えなかった。残念!
 ティータイム後はまだ時間の余裕があったので、スケッチにトライした。ところが、途中からかなり激しい雨が降り始め、あわててロッジに退散し、部屋でくつろいだ(夜には雨は上がった)。

 18時30分に夕食があった。メニューはほとんど日本食といってよく、トンカツ、イワシ、ラーメン、ポテトフライなどなど・・・明日は6時起床ということで、食後はすぐに部屋に戻った(外は雨で、他に行くところもないのだが)。部屋には、小さな板のベッドが2つあり、その上に、シュラフとインナー・シュラフを敷き、その中に入って寝るようになっていた。20時に就寝。明日は天気がよく、アンナプルナ山群が見られますように!!

絵:チャンドラコットの通り道

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