第129話:「ママ、サンタさんが手を振ってるよ!」 |
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いつものようにオコンネル通りからバスに乗って、ショッピングセンターの次で降りた。いまだにこのバス停の名前を知らないまま、ダブリンを去ることになりそうだった。 6時ですでに街は暗闇に覆われていた。
小さな女の子ふたりと母親が、通りの向こう側を見て歓声をあげていた。 パブの屋根の上で、電飾でふちどられたサンタクロースが手を振っていた。点滅制御でまるで手を振っているかのように見える、安っぽい仕掛けではあった。
女の子はふたりとも、懸命にサンタクロースに手を振り返していた。もちろん、サンタは疲れも見せずに手を振りつづけている。母親まで、一緒になって手を振っている。 人が人に優しくなれる時期がクリスマスであるなら、どんなかたちであれ、人を幸せにする存在はやっぱりサンタクロースなのだろう。私にとってのサンタクロースは、この無邪気な子どもたちだった。 (第129話:「ママ、サンタさんが手を振ってるよ!」 了) text by Takashi Kaneyama 1999 |
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