第119話:列車にも乗りたい。 |
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ドロヘダには、セント・ピーターズ教会というのは、どうもふたつあるらしい。St. Peter's church of Irelamdの方へと歩き、工事中らしいが庭に入っていったら難なく骸骨のレリーフを発見してしまった。大晦日にドロヘダまで来るツーリストなどというのは、ほとんど(たぶん、まったく)いない。まだ1時前だが、ダブリンに帰ろう。ニューグレンジもタラの丘も、また来れるだろう。 バスは3時20分までなかったが、鉄道は1時57分があるはずだった。往復で買ったバスのチケットがもったいない気もしたが、なにしろアイルランドで一度も列車に乗らない、というのも癪だった。 ドロヘダの地図では、鉄道駅は方角だけ示されて圏外である。こういう場合、中心部からけっこう距離がある。しかし、今日は時間もあるし、荷物はほとんどない。 かくして約15分歩き、1時57分のダブリン行きがあることを確認して切符を買った。まだ時間があるせいか、ほとんど人気がない。プラットフォームで背伸びをしていたら、さっきまで新聞を読んでいたじいさんがやって来た。
じいさんは改札係であったのだ。 やがて人が増え、55分に列車はやって来た。私はベンチで隣だった老女に先を譲ってから乗り込んだ。なんの疑いも持たずに。 (第119話:列車にも乗りたい。 了) text by Takashi Kaneyama 1999 |
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