BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第41話:バスにしようか、鉄道にしようか?

バス・ステーションは税関の裏だった。どうも昨日降りたところとは違う気もするが、あまり深く考えないようにしよう。

各方面への時刻表は、トナーが切れかかったコピー機でコピーしたものだった。ダブリン←→ゴールウェイ、ダブリン←→ドニゴールの分をコレクションする。チケット売り場、出発ゲート、両替、キャッシュディスペンサー、スナックとドリンクの売り場、数多くの椅子。長距離の発着場ではおなじみのものが、わかりやすく揃っている。国のサイズも、街のサイズも大きくないのだ。

誰かがやって来て、誰かが去っていく。別れがあって、出会いがある。鉄道駅とはまた違った、少し埃っぽくて、危険な雰囲気がして、ちょっといい加減で、親しみのこもった感じがバス・ステーションにはある。

コノリー駅はすぐそこだったが、大規模な改装工事中だった。ガラスと鉄とコンクリートのモダンな建物になるのだろうか。しかし、その場合でも19世紀新古典主義のファサードはそのまま残すだろう。アイルランドは、古い歴史をもちながら、いままさに急成長中のEUの優等生でもある。

多くの会社が、ヨーロッパの拠点をアイルランドに置いている。アップルのアッセンブリー工場、ベルリッツの出版部門の本部。そして、人口の多くを25歳以下が占める。伝統と新しい力。

駅のインフォメーションでいくつかTimetableをもらい、笑顔でお礼を言った。川を渡って南へ。少しずつ街になじんでいく、この瞬間が愛おしい。

さあ、バスで行こうか、列車で行こうか。

アイルランド第2日、まだ午前10時45分だ。

(第41話:バスにしようか、鉄道にしようか? 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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