BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第6話:「80£でどうだい?」

目標はLyceum劇場、"LION KING"が始まったばかりで大評判をとっているらしい。ダメモトで、box officeで聞いてみるつもりだった。場所は調べてあった。しかし、調べるまでもなく、そこはものすごい人でごった返していた。

開演30分前。華やかに着飾った人々を縫うようにして進む。突然、大男が立ちはだかった。

"Show? 80pounds! "

ダフ屋だった。たしか正規には最高でも35ポンドくらい、エージェント経由でも40か45くらいだろうから、相当ふっかけている。これはチケットはなさそうだな。

そしてやっぱり、明日も明後日もsold outだった。box officeが空いていたわけだ。当日のreturn ticketに行列する意欲も元気もない。コンシェルジェに頼むほどのこだわりもない。まあ、別の芝居にでもしようか。でも、ちょっと悔しいなあ。

コヴェント・ガーデンに曲がる角では学生がサンタ帽子をかぶってキャロルのハーモニーを聞かせていた。ガーデンには小さなスケートリンクが出来ていた。Schaftesbury St.を西へ行くと14年間のロングランを続けている"LES MISERABLES"だ。前回、私が来た13年前にもかかっていたわけだ。これがなんと"TONIGHT AVAILABLE"(当日券あり)だった。まもなく開演。タイミングは素晴らしい。

しかし、このミュージカルはたしか3時間を優にこえる長さだ。この空腹に耐えられるだろうか? 結局、芸術よりも食欲を優先して、中華街へと向かった。

(第6話:「80£でどうだい?」 了)

text by Takashi Kaneyama 1999

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