ビアテイスター研修受講記 Introduction to Beer Evaluation
皆さんワインの利き酒をするソムリエのことはよくご存じだと思います。
それと同じようにビールの味を評価するビアテイスターという資格が日本に新しく登場いたしました。
日本地ビール協会(JCBA)というところが研修と資格認定をあわせて1995年から始めたのものです。
ビール大好きの私としては以前から是非研修を受講したいと思っており、東京で開催されるという
情報を聞き早速受講を申し込みました。
今回私が受講した研修はイバリュエイトクラスというコースで、ビアテイスター研修の基礎編にあたるものです。
1日の研修を受けた後、最後に資格認定試験があり、筆記試験と
官能実技(官能といっても、ビールを飲んで味を評価するということですが・・)両方の試験を50点以上取ればイバリュエーターに、両方の試験を75点以上取ればアドバンスドイバリュエーターに認定されます。
イバリュエーター資格の上位資格にはビールの審査などをおこなうジャッジクラスと、ビールの官能評価を中心とするマスターイバリュエートクラスの大きく2つの資格に分かれています。
ジャッジクラスは計6日間、マスターイバリュエートクラスは計3日間のコースになっています。
私は幸いアドバンスドイバリュエーターに認定されましたので、両方のコースを受講して上位資格にチャレンジできることにはなったのですが、いかんせん両コースとも講習がほとんど平日で、日数も多いためなかなかトライ出来そうもありません。
時間の都合のつく方は是非トライしてみて下さい。
費用についてですが、イバリュエイトクラスの研修費用が10,000円認定試験が3,000円です。ただし、講習会を受講するには日本地ビール協会の会員になっている必要があり、会員になるには入会金20,000円と年会費6,000円を毎年支払う必要があります。
合計すると、39,000円をいっぺんに支払わないと研修会の入り口を入ることが出来ないわけです。会社の費用として考えればこれくらいの額は安い方ですが、個人として(小遣いで)払うにはかなり金額が張るという感じです。
東京での研修は1997/8/31(日)9:00〜大手町のJAビル国際会議室で開催されました。
私は地下鉄東西線で8:50頃に大手町に着き、会場に入ったときが丁度9:00位でした。
勝手な想像で大してたくさんの受講者はいないだろう、せいぜいいても50人くらいかななどと考えていたのですが、なんとなんとおおきな会場いっぱいに200〜300人くらいの人がぎっしりと座っているでは
ないですか?
これには私は正直びっくりしてしまいました。
細川内閣の規制緩和以来、地ビールブームがまき起こりビアテイスターの研修にこんなにたくさんの
人が来るようになったのかと、ひとしきり感慨に耽っておりました。
そうこうするうちに研修開始です。
冒頭に日本地ビール協会会長の小田さんが挨拶をされましたが、実際の講習はDesigning Great Beers等の著作のあるRay Danielsをはじめとする3人のアメリカ人講師が代わる代わる説明をし、同時通訳がその内容を
訳すという形で進められました。
講習資料はすべて英語で、片面コピーで38ページという分量です。
この種の講習形式の常として同時通訳の人は英語はうまいのですが、とりたててビールの醸造やテイスティングに詳しいというわけではないので、残念ながらちょくちょく誤訳をします。
そのため、予備知識無しに初めてこの研修を聞きに来て、それなりに内容を理解するというのははっきり言ってちょっと無理という雰囲気です。
ただ、受講者の多くは地ビール会社の社員だったり、酒販関係やレストラン関係とおぼしき人が多く(私のような自家醸造家も少し)、結構基礎知識を持っている人も多いようで、判る人は判るという感じで
研修は進んでいきました。
研修内容は、
ビールの材料
ビールの醸造方法
オフフレーバー(以下4種の官能実技あり)
酸化(Oxidized)
ジメチルサルファイト(DMS)
ダイアセチル(Diacetyl)
イソバレリック酸(iso-Valeric Acid)
ビアスタイル(20種程度の官能実技あり)
メルツェン
IPA
ピルスナーウルケル
ギネスビター
ブラウンエール
ブーングーズ
トラピスト・オルバル
アンカースチーム
オレゴンハニービア
SAPPORO 黒ラベル
等々
といった内容です。
材料や醸造法などは自家醸造家であれば知っていて当然という感じの内容で、同時通訳の誤訳も笑って聞ける余裕もありましたが、その次のオフフレーバーについてはほとんど耳学問しかなく、まして官能実技など初めてでしたので、短い時間の中で4種類ものオフフレーバーを理解し、舌と鼻で判別できるまでにはいきませんでした。
その次のビアスタイルは結構飲んだことのあるものも多くあり、それなりに愉しくテイスティングの勉強が出来ました。
研修の途中にテレビ朝日が取材に来るなどの一こまもありましたが、昼食をはさんであっと言う間に時間が過ぎて、試験の5時になりました。
筆記試験は確か30問くらいで3択か4択の選択問題でした。
こちらはあまり難しくなくて拍子抜けでした。
一方官能試験の方は右の写真にあるように計4杯のビールが出され、2杯はビアスタイルの問題で、もう2杯はオフフレーバーを判定するものでした。
(真ん中に置いてある大きな瓶は舌を洗うためのミネラルウォーターです)
オフフレーバーは悩みましたが、結果からすると1つあたって1つ間違ったのでしょう。
問題の正解についての説明などはありませんでした。
テイスティングしたビールの銘柄の一覧表はくれました。
私は官能試験の4問が早めに終わったので(長く考えてもどうせ判らないので)、早めに退出してサンクトガーレンが無料で提供してくれていた地ビールを1杯試飲させてもらいました。
他にも何人か早めに退出している人がいましたが、地ビール会社の社員という人がいて次の研修はいつかなどという質問をしていました。
仕事がらみで受講している人もいたようでそう言った人に試験は酷だな等と思った次第です。
試験結果は30分ほど待ったあと口頭で合格者の氏名が発表されました。
9月号の日本地ビール協会発のニュースレターにも合格者の氏名と人数が発表されていました。
東京と大阪の2日間でアドバンスドイバリュエーターの認定が89名、イバリュエーターの認定が112名とのことでした。
皆さんもビールのテイスティングに興味をお持ちでしたら参加されてみてはいかがでしょうか?
尚、この日は家に帰ってみるとダイアナさんが自動車事故で亡くなったというニュースが流れていました。
とても驚いたのと、随分と悲しい気持ちになりました。
この日はその意味でも記憶に残る日となってしまいました。

Morio Murakami Presents 30/Nov/1997
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