◆ 人間の進化と性淘汰 I / チャールズ・ダーウィン ◆

Book Image 書名:人間の進化と性淘汰 I
   The Descent of Man and Selection in Ralation to Sex
著者:チャールズ・R・ダーウィン Charles Robert Darwin
訳者:長谷川 眞理子
発行:文一総合出版
定価:3800 円(税抜)
1999年9月15日 初版第1刷発行
ISBN4-8299-0121-7 C0045 \3800E


第1部 人間の進化

 第1章 人間が何らかの下等な種に由来することの証拠
 第2章 人間と下等動物の心的能力の比較
 第3章 人間と下等動物の心的能力の比較について(続き)
 第4章 人間がどのようにして何らかの
     下等な形態から発達してきたかについて
 第5章 原始時代および文明時代における、
     知的・道徳的性質の発達について
 第6章 人間の近縁関係と系統について
 第7章 人種について

解説

 人類の進化と多様性の理解 内田 亮子
 性淘汰と種の利益 矢原 徹一

原著は 1871 年に出版されたものですが、それを現代の進化研究の立場から 再び見直してみようという「ダーウィン著作集編集委員会」により 再翻訳され、128 年後!の 1999 年に出版されたものです。
2巻に分かれていて、これは上巻、特に人間の進化起源について 書かれています。 下巻も読書中ですが、そちらは性淘汰(性選択)が主な話題になります。

なんといっても進化論の生みの親、ダーウィンその人ですから、 頭のキレはすんばらしく、その思考にただただ感心するばかり。 それどころか、現代の進化研究でさえ、まだまだダーウィンに追い付いていない と思える点も多々あります。
発想の的確さ、それを支持するための証拠の提示、反論への考察。 科学的思考というものの見本といえます。 ダーウィンは僕が科学者として一番に尊敬する人です。

「信仰」「道徳心」「利他行動」「社会性」など、 人間に特有?の精神的進化に関する考察はとても示唆に富んでいて面白い。
また、最後の章での「人種」についての考察も納得させられる。 (人間は全て1つの種であり、人種は、明確には分けられない。)

末尾の解説を読むだけでも、現代の進化研究がどこまで進んでいるのか、 よくわかるようになっています。

僕は進化論を分かった気になって 生命進化に関するホームページ を書いたりしているわけですが、本書を読むと僕が思いつく程度のことは 全てダーウィンの後追いであることが明らかになるので、なんかもう 「生命のよもやま話」なんて書くのが恥ずかしくなってきます。 ダーウィンはすごすぎます。

◆ 人間の進化と性淘汰 II / チャールズ・ダーウィン ◆

Book Image 書名:人間の進化と性淘汰 II
   The Descent of Man and Selection in Ralation to Sex
著者:チャールズ・R・ダーウィン Charles Robert Darwin
訳者:長谷川 眞理子
発行:文一総合出版
定価:6000 円(税抜)
2000年2月12日 初版第1刷発行
ISBN4-8299-0122-5 C0045 \6000E


第2部 性淘汰

 第8章  性淘汰の諸原理
 第9章  動物界の下等な鋼における第二次性徴
 第10章 昆虫における第二次性徴
 第11章 昆虫(続き)――鱗翅目
 第12章 魚類、両生類、爬虫類における第二次性徴
 第13章 鳥類の第二次性徴
 第14章 鳥類(続き)
 第15章 鳥類(続き)
 第16章 鳥類(続き)
 第17章 哺乳類の第二次性徴
 第18章 哺乳類の第二次性徴(続き)
 第19章 人間の第二次性徴
 第20章 人間の第二次性徴(続き)
 第21章 全体のまとめと結論

解説

 性淘汰と配偶者選択の進化:ダーウィンの提唱から 130 年たって  巌佐 庸
 人間理解のための進化的アプローチ 長谷川 眞理子

この巻を読み出したのが 2001年 5月、読み終えたのが 2006年 5月。 なんと5年もかかってしまいました。いやはやダーウィンさんごめんなさい。
もともと僕は読むのが遅い方だし、 500 ページある大著なので(上巻の2倍)気軽に持って歩けず、 通勤時などに読む機会が少なかったというのが原因です。 そんな言い訳はどうでもいいんですが。

本巻の内容は、「性淘汰(性選択)」を示すと思われる大量の例示の積み重ねです。 オスとメスはなぜ違うのか? それをもたらす仕組みは何か? それを解き明かすために、昆虫に始まり、魚類、爬虫類、鳥類、哺乳類 にわたって、集められるだけの情報を示し、考察しています。 個々の例はとても興味深く、時々ある挿絵もすばらしい。
それらによって、生物種に限らず、メスがオスを選ぶこと、 オスはメスを巡って競争し争うこと、それが長い世代続くことによって オスとメスの違いが生じてくることを説明しようとしています。
… これほど多くの、そしてこれほど系統関係の離れた多岐にわたる種類において、 驚くほどに同じ法則が両性の差異を制御しているということは、動物界のすべての 高等な分類群において、一つの共通の要因、すなわち性淘汰がはたらいていると 考えれば、すべてが理解可能となるだろう。(第21章、p456)
これだけ沢山の例を集めながらも、断言はしていません。ダーウィンの中では 確かな考えとしてあったかもしれないけれど、すべての人を納得させるほどの しっかりした理論には至らなかった。控えめで、慎重な人です。
実際、性淘汰理論が生物学者に注目されるのは本書の出版後 100 年以上たって からでした。それほど理解されにくい考え方だったのです。 そしてやっと最近、動物行動学の分野で証拠といえる実験結果がゴロゴロと 発表されるようになってきた。 ダーウィンさんは今頃天国で「ほれみろ、わしの言った通りじゃったろう」 とほくそ笑んでいることでしょう。

末尾の解説もよくまとめられています。 現代の性選択理論(巌佐 庸)、人間の進化的理解(長谷川 眞理子)について 概要を知りたい方はまずここを読むと良いでしょう。

2001/06/19 Takakuni Minewaki
2006/06/06 last modified Takakuni Minewaki

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