書 名:ガラパゴスの箱舟 / GALAPAGOS
著 者:カート・ヴォネガット / Kurt Vonnegut
訳 者:朝倉 久志
発行所:早川書房
価 格:620 円
発 行:1995/10/31 (原著 1985)
ISBN4-15-011118-9 C0197
滅びゆく旧人類への挽歌
世界滅亡後100万年、孤島で生き延びた人類が遂げた新たなる進化とは?
(帯より)
「役にたたない巨大脳と風変わりな考え方のはびこったその時代」 に対する皮肉があちこちに満ちていて、思わず「プフフッ」と笑ってしまう ことが何回もあった。
役にたたない巨大脳のやることといえば、例えば「人類自らを いかに効率良く殺すかについての知識を蓄積し、その道具を大量生産する ための工場を建てたりする」。
まったく人間のやることといったら、嘘をつくし、見当違いの予測は するし、(進化論を知っているのに) 進化的に非合理的な選択をするし、 ありもしないことを確信していたりするし、…いやはやどうしようもない。
全く別の価値感に沿って、美しく単純に成り立つ世界 (この本では 100 万年後の人類) を小説中に作り上げ、そこから現代を見ることで、 そのバカバカしさを指摘するって手法は「美芸公 / 筒井康隆」にもあったけど、 うまいよねぇ。痛烈だよねぇ。
この小説は
「ワンダフル・ライフ / S.J.グールド」
の第4章に引用されていたので気になって、読みたいと思っていました。
確かにグールドの言う通り、この本は進化についての (おそらく正しい)
ある見方を示しています。予測不可能な出来事によって、いかに簡単に
生物種の未来が変わってしまうことか。特にその生き残りがわずかな数しか
残っていない時には。
また、カート・ヴォネガットの作品は以前に「猫のゆりかご」を読んだ
ことがあって、けっこう気に入っています。
T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp