書 名:遺伝的アルゴリズム 3
編 者:北野 宏明 (きたの ひろあき)
発行所:産業図書株式会社
定 価:4,300 円(税抜き)
1997年9月4日 初版
ISBN4-7828-5145-6 C3-3055 \4300E
「遺伝的アルゴリズム(1993)」「遺伝的アルゴリズム 2(1995)」
に続く、遺伝アルゴ・シリーズ第3弾の本である。
このシリーズを読み進むと、この5年のうちに、当初は得体のしれなかった
遺伝的アルゴリズム
(または GA:Genetic Algotithm)という手法が、
急速に広がり、磨かれ、応用・実用されるようになってきたか
ということがわかる。
本書の構成が、実用、研究応用、探索基礎研究、と3つの部に分けられている ことに見られるように、現在でも研究から応用までのそれぞれの フェーズにおいて、研究は進みつつあり、さらなる可能性の広がりを 感じさせる。
本書に紹介された多分野での実用例から、今や GA が(対象によっては)
大いに役に立つ手法であることは明らかであると言っていいだろう。
それらは、エアコン制御、バスダイヤ生成、プラント運営計画、
エレベータ制御、ボーリング位置配置、分子系統樹推定などである。
これまでは、条件が複雑すぎたり組み合わせ数が多すぎて、
手を出すことさえできなかった問題に対してさえ、実用に耐える解を
示すことができるようになった。また、従来手法を上回る解を短時間で
探索できるようになった。
GA は、問題に対するアプローチの仕方(ポリシー)であるので、
対象分野はさまざまであり、実装の詳細においてはそれぞれに
異なる工夫が施されている。
第 III 部では、さらに高次の適応行動の創出、生命の起源を探る
探索研究の試みが紹介されている。
11 章のプログラマブル PFU チップを用いた目的関数の合成は、
IC チップの論理回路が、(汎用的に)自動で設計できる可能性を
感じさせる。
12 章のマルチエージェントによる協調行動の創出は、サッカーの
チームプレイのような、あるいはアリの社会行動ような、分業や他個体との
協力が、自動的に設計できるようになる可能性を示している。
13 章はちょっと僕には難解だが、遺伝子とタンパク質を
シミュレートした比較的単純なソフトウェア世界での、
生態系の相互作用や複雑さの進化を解析・考察している。
このアプローチによって、初期生命誕生の秘密が明かされて行くかも
しれない。
T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp