進化について考える際の大前提があります。
今、僕達が見ているのは、生き残ったものだけです。発想の転換が必要です。 例をあげましょう。
消えてしまったもの達の声を聞くことはできません。
あなたは、「野球」について何にも知りません。 「野球って何だろう」と思い、調べる事にしました。これは、間違っていますよね。
手に入れやすいデータと言う事で、 最近5年間の夏の甲子園大会の優勝チーム、 についての情報を手に入れました。データを並べて見てみると、5チーム全部、投手は「左投げ」でした。
そこで、あなたはハタとひざを打って、
「そうか、野球って、左手で投げるスポーツなのか!」
甲子園大会を目指して、汗と涙を散らす数千の高校野球チームの中には、 様々なバリエーションがあるし、右投げ投手だって沢山います。 どのチームだって「優勝してやるぅぅ」と思っています。 (いや、思っていないのも多数いるかもしれないが。)
5チーム全部が左投げだったのは、たまたまサンプリングの偶然か、 それが勝ち残るために、なにか有利だったからです。
「野球」を「生命」に置き換えると、少し考えやすくなります。
今ここにいる、生き残った生物だけ見ていても、生命の本質は
見えないんです。
消え去ったものについても、できるだけ沢山のサンプルを集めて、
時間順に考えるべきです。
十分多くの優勝チームのサンプリングをして、統計的に有意に
「左投げ」が多かったとしましょう。
その場合、左投げに向かう「方向性」を決めたのは、「野球という
環境に適していた」という要因、つまり選択圧のせいだと思います。
ミクロに見ると、夏の全国高校野球大会では、左投げ投手の1球より、 右投げ投手の1球の方が打たれる確率が高い、ということです。
方向性(何の戦略を残すか)を決めているのは、環境(対戦相手)の
選択圧です。
人間の場合、過去の試合を参考にして戦略(左投手で行こう)を
決めたりするので、戦略の変わりかたは完全にランダムとは
言えませんが。
「少数有利」という選択圧もありますから、どのチームも左投げ
投手を使い、左投手を打ち込む練習を積むと、左投げが多数派
となったある時点で、「右投げ投手が有利」という選択圧に
変わるかもしれません。
それは、予測できません。
T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp