◆ 羊の宇宙 / 夢枕 貘 + たむらしげる ◆

Sheep's Universe
作品名:羊の宇宙
作 者:夢枕 貘
画 家:たむらしげる
発行所:講談社
    1998年2月20日 第1刷発行
    1998年5月25日 第3刷発行
定 価:1,400 円
ISBN4-06-209051-1 C0793 \1400E

(c) TAMURA SHIGERU

映画「クジラの跳躍」 が公開されたせいか、あちこちの本屋でたむらしげるの絵本や CD-ROM が並ぶようになりました。 それらを見かけるたびに買い込んでいます。(^_^)

この「羊の宇宙」も、そういう絵本の並びの中に見つけました。 物語を夢枕貘さんが書き、たむらさんが絵を描いたものです。 絵はふんだんに盛り込んであり、たむらさんの味を満喫できます。 緑の草原と山並み、数々の空想イメージが美しい。

カザフ族の羊飼いの少年と、老物理学者が対話を楽しむ。 彼らは全く違う世界からやってきてたまたま出会ったのだが、 意気投合し、世界について、時間と空間の共通理解に近づいてゆく。 この展開も知の好奇心に満ちて、わくわくスリリングです。

この本の中でとても好きな、確信を突いた、カザフ少年の言葉。

少年「…けれど、速いってことはそれほど意味があることじゃないんだ」

少年「たとえば、これまで、街まで、馬で行って、帰ってくるのに、 一日かかってるんだ。それを、車で半分のスピードでやれるようになったら、 どうだと思う?」

老物理学者「一日に一度、街まで出るとして、半日時間が余るんじゃないのかい」

少年「違うよ。その人は、一日に、二度、羊の毛を車に積んで、 街まで出かけてしまうことになるのさ。余った時間に、働いてしまうんだよ。 速くなるということは、時間が余ることじゃなくて、 もっと忙しくなるということなんだ」

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1998/12/09 T.Minewaki
2002/04/29 last modified T.Minewaki

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