◆ 引越しと、いぬ つれづれノート (12) / 銀色 夏生

Tsurezure Note 12
作品名:引越しと、いぬ つれづれノート (12)
作 者:銀色 夏生
発行所:角川書店 角川文庫
    2003年6月25日 初版発行
定 価:590 円(税別)
ISBN4-04-167350-X C0195 \590E


10 巻目からは毎年 6/25 に発売されている 1年分の日記(2002/04/01〜2003/03/31)、「つれづれノート」シリーズ 12 巻目。

前巻で悩み、遂に離婚した夫 Iさん(イカちん)はまだしばらく登場する。 東京にいるうちは、メールや電話のやりとりがあり、ふたりの関係のチグハグさが 一段とあらわになる。 相手を見極めないうちに結婚してしまい、なんか違うぞと気が付いてももう遅い。 きれいに別れるということの難しさ。読んでいて暗くなる。 こういう結婚って世間では良くあるんだろうなぁ。

7月からは実家がある宮崎に引越し、生活はがらりと変わる。 田舎で、自然だ。実家の狭い離れでの仮暮し。 でも、そこには新しい世界への自由が感じられる。 生活の基盤を築き、新しい家を作り、子供を育てる。蚊に刺されながら。

そして、犬。本人もあまり好きではないと言いながら、一大決心して、 家族の一員となるミニチュアダックスフントの「マロン」。 犬を飼うということの良い面も悪い面も、ぞくぞくと起こる出来事。
子供たちの可愛さ、子犬の可愛さ、が写し取られた写真が楽しい。

相変わらず、心の底での個人主義的信念は随所に見られる。
以下の記述は強く印象に残った。同感。
-p431-
 大災害も大事故も戦争も、それを知らなかったら、ないのと同じ。 今は地球上の大きな出来事をまたたく間に知ることができるが、そんな テレビや新聞がなかったとしたら、知らないまま毎日を過ごすだろう。 知って、遠くの関係ない他人が首をつっこむことが、親切なのか、大きな お世話なのか。
 結局は、小さな小さな自分は、小さな小さな自分の目の前のことに 誠実に生きていくのがいいのでないか。
 最も身近なものに、丁寧な視線を向けること。
 そんなことが大事だと、いつも、思う。忘れがちだけれども。一番 着実な反戦運動は、毎日を真面目に暮らし、目の前の人や物に愛を向ける ことだと、私は思います。
ページの端をちぎってマークしたところ、本が厚い割には少ない。 毎日の作業的な記述が多く、人生に思いめぐらす場面があまりなかったか。
page 32, 34, 36, 42, 43, 66-69, 72-73, 75, 96, 97, 126, 149, 165, 174, 189, 195, 221, 235, 290, 350, 353, 354, 360, 383, 429, 431。

今までこうだと思っていた価値観がひっくり返される面白さ。
-p75-
井の中の蛙、大海を知らず
されど
空の青さを知る
p97「ファンレターはもう読まない」というのはちょっと残念。
手紙を書いたことがある訳ではないけれど。

2003/11/16 Takakuni Minewaki
2004/09/29 last modified Takakuni Minewaki

つれづれノート (13)
銀色 夏生好きなものMINEW home

(c) Takakuni Minewaki