読書録

シリアル番号 878

書名

21世紀の地球環境

著者

高橋浩一郎、岡本和人 編

出版社

NHKブックス

ジャンル

環境

発行日

1987/4/20第1刷
1989/9/1第6刷

購入日

2007/8/13

評価

娘の蔵書

今まで知っていることしか書いてないと思って通読したことはなかった。だがふと手にとってみると伏見康治先 生が序文を書いておられる。それによるとこの本は先生が代議士になったとき科学社会から絶縁されまいと自ら主催したリンクス・セリウム(山猫学校)の成果 だという。リンクス・リセウムの山猫を意味するリンクス(lynx)はガリレオの時代のローマのアカデミーがアカデミア・デイ・リンツェイと呼ばれたこと に習ったという。アカデミーはプラトンが主催した学校であるが、アリストテレスの学校はリセウム(lyceum)と呼ばれたのでより実証的なアリストテレ スにならったという。

いずれにせよ今まで書いたいくつかの環境関連の論文に間違いがないか確認する目的で目を通すことにした。

高橋浩一郎氏は80年周期の経済現象であるコンドラチェフの波は気温のサイクルに20年の位相遅れて追従していると指摘する。そして社会の変動もこれに伴 い、1603年の江戸幕府成立、1716年の吉宗の享保の改革、1787年の寛政の改革、1868年頃の明治維新、1945年の第二次大戦と80年周期で あるという。そうすると2025年頃大きな社会変動が来ることになる。

朝倉正は大多数の気象学者が陥っている炭酸ガスの温室効果という物理学の第二法則に違反する論を前提とする展開をしている。

田中正之(まさゆき)氏(東北大教授で森永先生の弟子)は海洋は大気中の二酸化炭素の50倍の貯蔵容量を持つ が、海水中の分子状の二酸化炭素、炭酸水素イオン、炭酸イオンの解離平衡による緩衝作用により、大気中の二酸化炭素濃度が増えても、自らの炭素貯蔵量をわ ずかにかえるだけで平衡に達してしまうことと大気と平衡にある表層の下に温度跳躍層という安定層があって深層への二酸化炭素の輸送を妨げているため海洋の 吸収能力は制約を受けているとする。

グリーンウッド氏は1992 年に妊娠回数と年収の相関から世界の人口増加を予測し、エネルギーのGDP弾性率から二酸化炭素の排出量を予測したが、茅陽一氏は世界エネルギーモデルに よる大気中の二酸化炭素濃度上昇を予測する2つのモデルを紹介している。すなわち;イェール大学の経済学者ノルドハウスのエネルギーモデルとオークリッジ 連合大学のエドモンズ・レーリー・モデルである。

ノルドハウスのエネルギーモデルは化石燃料と非化石燃料の大体弾力性は一定とし、究極可採量、資源枯渇による価格上昇、炭素税の税率と開始時期、大洋の二酸化炭素吸収吸収率などをモデルに組み込んでいる。

エドモンズ・レーリー・モデルは従来型エネルギーは枯渇性としてロジスティック関数を採用している。またエネルギーの価格と供給量の関係はバックストップテクノロジーの概念を利用して関係を定めている。エネルギー需要は弾性値型の需要関数を採用している。

Rev. December 1, 2013


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