読書録

シリアル番号 859

書名

これから何が起こるのか 我々の働き方を変える「75の変化」

著者

田坂広志

出版社

PHP研究所

ジャンル

ビジネス

発行日

2006/12/11第1刷
2007/2/7第3刷

購入日

2007/06/08

評価

2007/2/3に椿さんが「最近読んだ中ですごく良かったので、お知らせします。特に知的プロフェッショナルの部分が気に入りました」と推薦があったので鎌倉図書館に予約しておいたところ4ヶ月後の6日 、手にとることができた。

いわく

(1)情報革命によって、劇的な「権力の移行」が起こる
(2)消費者が、企業を使って「商品開発」を行うようになる
(3)企業は「販売促進」よりも「購買支援」をしなければならなくなる
(4)ビジネスの本質が「商品の提供」ではなく「ライフスタイルの提案」になる
(5)「良い商品」を創っても売れない時代が到来する
(6)「他社の智慧」や「顧客の智慧」をマネジメントしなければならなくなる
(7)知識社会では「知識」が価値を失ってゆく
(8)「収益」戦略よりも「収穫」戦略が重要になる
(9)そして「日本の時代」が始まる?

2日かかって読破。

(1)「権力の移行」が起こるということの意味は権力とは情報を操作する力であり容易に、安価にほしい情報を入手できれば今までの権力者は力を失うという意味では合意。その例としてプロシューマーなる概念が紹介される。ただGoogleのような検索会社にパワーシフトしただけかもしれない。

(3)企業は「販売促進」よりも「購買支援」の章で著者は従来「販売代理」をしていたミドルマンが「購買代理」をするようになる。ひいては「購買支援」から「開発支援」に移行し、コンシエルジ化すると予言する。「購買支援」とか「開発支援」はいわばグリーンウッド氏が在職したエンジニアリング企業が大企業相手に提供していたサービスだが、情報伝達コスト低減のおかげで大衆相手に可能になるとのご宣託である。

(5)「良い商品」を創っても売れない時代が到来する で著者は「良い商品」が売れなかった例としてマック、ベータを上げる。マックはOSが優れていただけでアプリケーション、ハード、周辺機器などではウインドウズにに負け、VHSは映画会社の映画ソフトは多かったためにベータに勝った。 勝ち組は商品生態ともいうべき周辺の全てで優れていたためである。グリーンウッド氏のみるところソニーにはiPodに先行してクリエがあったが自社事業部のもつ著作権保護に力がはいりすぎてパソコンでmp3圧縮する技術を提供しなかったためiPodが圧勝した。差別化をめざすとその閉鎖性の故に壁に突き当たる。アンケート調査は質問者が誘導する回答しかえられない。ブロゴスフィアをウォッチして顧客の深い欲求を知ることが出来る。こうしてパレートの法則に従うロングテールマーケットを確保するのだ。

(7)知識社会では「知識」が価値を失ってゆく という章は椿さんが気に入った「知的プロフェッショナル」の部分だ。著者は従来の知識労働者(ナレッジ・ワカー)との違いを

1.仕事に使った時間ではなく成果で報酬を得る

2.自分を商品とは思っていない

3.自分の仕事を作品と思っている

4働き甲斐、職業人としての能力、人間としての成長という目に見えない報酬を求めて仕事をする

5.自分の個性を大切にした仕事をする

の5つを上げている。「知的プロフェッショナル」を「アーティスト」に置き換えれば理解可能。むかし米国人を仕事をしたとき、できばえがよいと上司が「君は本物のアーティスト」だと言っていたのを思い出す。

(9)最後の「日本の時代」が始まるというキャッチフレーズはこの本を売るための戦略とお見受けした。私は日本はまだ自律的に考え行動する人口の総人口にしめる割合がまだ低く、著者の予想のようには展開できないのではと危惧する。

著者の理論的バックボーンはドイツの哲学者ゲオルグ・ヘーゲルの「弁証法」と複雑性理論のようだ。


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