読書録

シリアル番号 711

書名

ローマはなぜ滅んだか

著者

弓削達

出版社

講談社

ジャンル

歴史

発行日

1989/10/20第1刷
2004/3/3第30刷

購入日

2005/8/26

評価

息子の蔵書。

1992年より過去13年間、塩野七生のローマ史ばかり読んできたが、この本はその前に書かれたものである。塩野七生氏の著作は常に時の最高権力者がいかに振舞ったかに焦点がおかれているが、弓削氏はローマ社会を支えた、社会の仕組み、社会の底辺にうごめく人々も含めあらゆる階層に焦点をあてているので、両方読むと、全体像が見えてくる。

そしてローマの滅亡は氏によれば以下の通りになる。

ローマによって成立した地中海世界がいかに史上未曽有の繁栄を謳歌したとしてもやがてその中心は周辺となるという世界史の発展方向があった。そうした事態になっても四世紀のローマ人たち が、ローマに入ってローマのために働いている上下のゲルマン人たちを差別・蔑視・排除せず彼らと共に、ありのままのゲルマン的生活文化によってギリシア・ローマ文明を変成させてゆく度量を大きくもてなかったために、ローマは地上から消え去ったのである。宣教の初め一切の差別を否定することをその思想の根底においてきたキリスト教ですらローマ帝国に認知されてからはゲルマン人蔑視の呪縛にみずから陥ってい ったのである。

ローマの強さの秘密のキーワードは「オープン」だという説とも符合する。


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