読書録

シリアル番号 646

書名

忘れえぬ言葉 父から息子たちへの伝言

著者

角田紀之(ただゆき)

出版社

愛生社

ジャンル

名言集

発行日

2002/3/30発行

購入日

2004/07/21

評価

ご町内の角田氏が引退後まとめられた100の忘れえぬ言葉集。著者のサイン入りの本をいただく。なかなかよい言葉が選びぬかれている。同じ業界の同じような環境で生きてきたためか、本HPの名言集と重複する言葉も沢山ある。いきなりジャック・ウェルチのControl your destiny or someone else willがでてくる。この言葉が大好きでいろんなところでつかわせてもらった。

今年の3月朝日新聞が長谷川如是閑の言葉として紹介していた「男は結婚して女の賢さを知り、女は・・・」は実はサマセット・モームの言葉だったと知る。ブライアン・サイクス氏やジェームス・ワトソン氏ならそれはY遺伝子のためだよとでも言うのかも知れない。

ゲーテの「人はみな、わかることだけ聞いている」という言葉はユリウス・カエサルの「多くの人は自分が見たいと欲するものしか見ない。」とかなり近い表現だ。養老氏なら「バカの壁」があるからだとのたまうのかも。

レイモンドチャンドラーの小説「プレイバック」にでてくる言葉も好きだったが、角田氏はチャンと選んでいる。

角田氏自身の言葉として「人は叱ることによっては育たない、褒めることによって伸びる」が紹介されている。子供を叱るのは日本の文化で褒めるのは米国の文化を思っていたのでまったく同感。役所の政策も禁止、禁止で、インセンティブによる誘導ということをしない。

渡辺昇一も好きな人だがこの人の「何歳になっても、知的生活の中心は、孤独の内で考え、孤独で読み、孤独で作業する時間である」という言葉も心にしみる。

パスカルの「こんなに長い手紙を書いてしまってすみません。私はそれを短く書く時間がなかったのです」も身につまされる。
それよりなにより心せねばならないのは福沢諭吉の「馬鹿者の世の中に、独り利口ぶるは一種の馬鹿なり」であろう。角田氏によれば万葉集の大伴旅人の歌「あなみにく 賢しらをすと 酒飲まぬ 人を良く見れば 猿にかも似る」があるそうだ。古来日本では謙譲の美徳が重要視される。しかし南方熊楠のように馬鹿となって熊野の古木を守った例もあるので時には馬鹿になって社会を変えないと進歩はない。


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