読書録

シリアル番号 635

書名

文明の生態史観

著者

梅棹忠夫

出版社

中央公論社

ジャンル

歴史

発行日

1974/9/10初版
1998/1/18改版

購入日

2004/06/18

評価

鎌倉図書館蔵。

1974年初版の古い論文集である。川勝平太の「文明の海洋史観」に言及されていたので読む。

世界史を生態学の遷移(サクセッション)にアナロジーで説明しようとするものである。

ユーラシア大陸を横長の楕円形で描くと、中心通る右肩上がりの線が描ける。ここが乾燥地帯だ。東端に日本があり、西の外れに西洋がある。日本と西洋を第一地域としてその他は第二地域とする。

第二地域では中国古代文明、インド文明、地中海・イスラーム文明が発生した。乾燥地帯からの暴力で生じたアロジェニック(他成的)なサクセッションである。乾燥地帯からのかく乱で古代的専制の面影を残し、封建時代を持たず、巨大な専制帝国が継続し、近世では第一地域の植民地となった。全体主義的社会である。精神界の指導者と俗界の指導者が後世まで一体化していた。封建時代をもたなかったため、均等相続である。中国ブロック、ソ連ブロック、インド・ブロック、イスラーム・ブロックがかっての清帝国、ロシア帝国、ムガル帝国、トルコ帝国の亡霊としてのこる。

第一地域はユーラシア大陸の辺境にあり、自然環境にも恵まれてユーラシア大陸の古代文明を受け継いだ後は封建制、絶対王権、ブルジョア革命、資本主義というオートジェニック(自成的)なサクセッションが生じた。封建時代の残渣として長子相続制があった。宗教上の聖と俗の分離が早く生じた。また個人の自由もある程度認める社会である。第一地域は互いになれていたにもかかわらず文明の平行進化が生じた。

東南アジアと東ヨーロッパは第二地域ではあるが第一地域との中間地帯という共通性をもっている。そしてこの地域は民族移動の激しい地区であった。第一次大戦が東ヨーロッパを造り、第二次大戦が東南アジアを造った。
宗教は疫学アナロジーでよく説明できる。


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