シリアル番号 | 531 |
書名 |
言語の脳科学 |
著者 |
酒井邦嘉(くによし) |
出版社 |
中央公論新社 |
ジャンル |
脳科学 |
発行日 |
2002/7/25初版 2002/8/15再版 |
購入日 |
2002/10/16 |
評価 |
優 |
東京大学物理学科卒後、ハーバード大医学部、MIT言語・哲学科で学んだ新進の学者によるノーム・チョムスキーの「普遍文法」(universal grammer)または生成文法理論(generative grammer)の紹介とfMRIによる実証の紹介。
著者は「言語とは心の一部である」と考える。言語を研究することは、人間の心を理解すること。
チョムスキーは「言語学は心理学の一部である」という。脳には
言語
↑
心
↑
脳
という階層構造がある。言語は最も階層の高い脳機能。
プログラムを稼動させる前のチューリング・マシンは万能計算機である。これのアナロジーで万能脳が考えられる。サルがこの脳を持っている。プログラムとは 万能計算機の機能の一部を制約することによって機能する。これと同じようにサルの脳の一部が突然変異によって大脳皮質の一部が抑制されたとすれば言語を操 る人間の脳を理解できる。文脈依存文法の能力が発現するのだ。(Paradox Serial No.21)
子供が少ない刺激で母語を獲得する不思議をプラトンの問題という。ノーム・チョムスキーはこれを「普遍文法」で解決した。(Paradox Serial No.6)
著者はチンパンジーは単語の意味語順に意味をもたせる文法は理解できない。そしてfMRIを 使った測定で人間のブローカー野が文法処理しているらしいことを証明した。そういう意味でノーム・チョムスキーの生成文法説が正しいようにも見えるが、人口 知能の成功をみていると学習で鍛えられたかもしれないとも思う。
最後に日本では言語研究は文系の分野とみなされているため言語と脳の関係の研究は世界におくれをとっていると指摘して終わっている。
ところでノーム・チョムスキーはMITの名誉教授となって生成文法論を守るために人工知能に対し断固たる反対をし、ダーウィンの進化論を否定し
たのは行き過ぎであった。その後の人工知能の成功をみると生成文法説なんてのもイルージョンであったかもしれないなと思う。なにせgoogle
smartphoneに日本語で質問すれば検索してもっとも確かに見える検索結果を日本語の人工音声でしゃべってくれるので、もはやキーをたたく必要もな
い。
ノーム・チョムスキーは言語だけではなく、政治の世界でも活発に発言する左翼の理論家になっている。問題は左翼の理論家=民主党=国境を越えてビジネスするグローバル企業=米国東と西海岸の知的エリートの利益代表となりさがって老醜をさらしている。
Rev. January 27, 2018