シリアル番号 | 450 |
書名 |
浮世の画家 |
著者 |
カズオ・イシグロ |
出版社 |
中公文庫 |
ジャンル |
小説 |
発行日 |
1992/4/10初版 1999/5/20第3版 |
購入日 |
2000/09/13 |
評価 |
良 |
原題:An Artist of The Floating World by Kazuo Ishiguro (English Library Serial No.449)
ロスの友人ロンの薦めで原著で読み始めたが、この日本語訳が手にはいったのでこちらで読んだ。人間関係の摩擦防止に発達した間接話法が生む、悲喜劇だというが、挫折したまま15年間がすぎた2018/1にカズオ・イシグロがノーベル賞を受賞したので興味がわき手にとる。
今回は歳とったせいか不思議と引き込まれて、2日程で読破した。戦前、軍国主義に同調して、積極的に体制に協力して高名になった画家が戦後、引退し
たのだが、世の中の価値観がひっくりかえってしまった。長女節子の夫は戦後の価値観から主人公を批判的な目でみているらしいことを長女からほのめかされ、
次女紀子の縁談がながれたのも自分の戦前の言動が悪さしていると思い込む。実際、戦前自分の密告が原因で画家仲間の一人を監獄に入れるということがあっ
たのだ。そこで次女のためと、再度持ちあがった見合いにおいて主人公は戦前の行いを反省する旨の挨拶をして皆を驚かせ、その縁談は上手く進む。主人公はア
ドバイスしてくれた節子にお礼を言うが、当人は「私そんなこと言ったかしらという??」確認のため読み返すと確かに「なぜ破談になったのかしら」と聞かれただけなのだ。これは映画でいえば小津安二郎の世界だ。日本では間接話法を多用するため全てがあいまいのまま進行する。
カズオ・イシグロは若くして家族と英国に渡り、英国で教育を受け、英国で作家になった。1993年の英映画「日のなごり」(The remain of the day)は映画化された名作で、2002年にはロケ地ディラムパークを訪問したのを懐かしく思い出す。
Rev. January 29, 2018