読書録

シリアル番号 1349

書名

エキストラバージンの嘘と真実 スキャンダルにまみれたオリーブオイルの世界

著者

トム・ミューラー

出版社

日経BP社

ジャンル

医学

発行日

2012/11/26第1刷

購入日

2018/09/04

評価



原題:Extra Virginity 2012

鎌倉図書館蔵

第二次大戦後ミネソタの疫学者アンセル・キースが地中海式食事が心臓病を少なくしていることに気が付いた。その発見はオリーブオイルは健康に良いと言うこ とであったが、業界と政治的な動きは一価不飽和脂肪酸すら危険だという誤解が一般に広がった。こうしてすべての脂肪は危険とする観念が広がった。挙句の果ては不飽和脂肪に 水素添加して飽和脂肪酸にしてマーガリンにするとか、脂肪 の代わりに糖質を多量摂取する弊害が増えたのである。

オリーブは地中海に自生する灌木でオリーブの実からとれるオリーブオイルは食料油としてまたランブの燃料、エネルギーとしてギリシア・ローマ文明を支えて きた。しかし北ヨーロッパはオリーブの生育には敵さずラードやバターを使ってきた。オリーブオイルが健康に良い理由はオリーブオイルの主要成 分の一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸がその理由とされたが、それ以上にトコフェロール(ビタミンE)やポリフェノールのような抗酸化物質が有効と分かってきた。たとえばテースティングしたとき喉の奥がヒリヒリするような物質はオレオカンタールとよばれる。

エキストラバージンオイルとは採取したばかりのオリーブの実を粉砕し、遠心分離機で油だけ分離したもので、果実のジュースといえる。菜種油のように搾りカ スにヘキサンをくわえて加熱してヘキサンを飛ばした抽出オリーブオイルはポマスオイルとよばれ、これに少量のエキストラバージンオイルをブレンドしてピュ アオリブオイルとして安く売られる。もっと悪質になると菜種油、大豆油にエキストラバージンオイルをブレンドしている業者すらある。業界団体が自己規制で きていないし、米国や日本は規制法すらなく、日本の輸入業者はオリーブオイル文化に疎遠で、偽物をつかまされている恐れがある。

自らをまもるには自分でテースティングするしかないと覚悟させる本だ。そこで手持ちのオリーブオイルを早速テースティングしてみた。テースティングは小さ じ一杯のオイルを口に入れ、唇の両端かだ激しく空気を吸い込むというもの。ここで喉の奥がヒリヒリするようならエキストラバージンオイルである可能性は高 い。

かってエキストラバージンオイルとして高価なスペインのヌニェス・プラド・アーリーハーベストを使ったことがあるが、テースティングはしなかった。現在の手持ちのエキストラバージンオイルは安いイタリア産のTrasimeno S.p.A.と高価なギリアシア産のコロネイキ種のbiebon. Inc.である。テースティングすると価格の安いイタリア産の方が、高価なギリシア産より喉の奥がヒリヒリする。価格と味が一致しない。ギリアシア産のほうが精製されている感じ。

今後は小瓶を数種類購入してゆっくりテースティングして気に入ったものを使おうと思い、早速、藤沢クイーンズでオーストラリア産バージンオイル 「Olive Juice 100」という高価なオイルを購入してテースティングしてみた。というのも、この本ではヨーロッパのようにビジネスが腐敗しているところより、オースラリ アのような新天地産に良質なものがあるというのに乗せられたからだが、ギリアシア産のコロネイキ種と大差ない。

Rev. September 16, 2018

トップ ページヘ