読書録

シリアル番号 1333

書名

アメリカの真の支配者 コーク一族

著者

ダニエル・シュルマン

出版社

講談社

ジャンル

伝記

発行日

2015/12/8第1刷
2016/4/1第2刷

購入日

2018/03/20

評価



原題:Sons of Wichita  How the Koch Brothers Became America's Most powerful and Provate Dymasty  by Daniel Schulman

鎌倉図書館蔵

米国で2番目に大きい個人所有の企業のオーナで熱烈な共和党支持者というので興味を持って借り出す。コーク兄弟は私と同世代人だ。1998年に仕事でウィ チタを訪問したことがあり懐かしく読んだ。そのときコークインダストリーなどという会社があることも知らなかったが石油ビジネスやエンジニアリンで重なる 分野の会社であった。

人為的温暖化説に反対。個人の自由と市場を尊重するというもので、国家が補助金がなければ倒産してしまうような企業を助けることや、補助金によって公正な競争がゆがめられることに反対、というリバータリアンの立場とオーストラリア学派経済学を参考としている。

チャールズの市場に基づく経営管理法は一般社員が新しいアイディアを出すことが奨励された。上司の考えと合わないアイディアであってもいいこととされた。 そこでは職位は関係なかったし、アイディアを出す場では、誰がどの職位にあるかわからないようにした。同じ職位にある人でも、個人の長所や能力に基づい て、持たされる責任や権限に大きなばらつきがあった。コーク社の社員は自分がビジネスオーナーだったらどうするかを考えて行動するように教育され、全ての 活動で何らかの価値を生み出すように繰り返し訓練された。会社は職位毎のサラリーキャップを撤廃し、社員の事業家としての本能を刺激するインセンティブを 導入した。社員の給料はコーク社にもたらす「価値」だけで決められた。会社の最高の職位である経営陣は数十万ドルから数百万ドルのボーナスを受け取った。 特に有能な社員は上司より高い収入を得た。学歴や学校時代の成績は無視された。

混乱をさけるために社内を市場の様に管理した。ミーゼスやハイエクを読むことが奨励された。しかし会社の保守管理部門の評価は困難であった。

元々民主党ではなかった人間たちが大挙して共和党に入ってきて、ジョージ・W・ブッシュ前政権時代に外交政策と国家安全保障政策を牛耳り、必要のないイラク戦争を引き起こしてアメリカを泥沼に引きずり込んだ」という怒りがコーク兄弟にはある。

トランプはイラク戦争についても失敗だったとはっきり述べており、イラク戦争を推進したネオコンにしてみれば、まさに敵である。

コーク兄弟もネオコンを敵視するということになると、ネオコンはトランプとコーク兄弟にとって共通の敵となる。結果として、いまだに共和党の外交政策分野 で大きな影響力を持つネオコンを叩くために、コーク兄弟は、トランプを阻止する動きには出ず、トランプを使って共和党に荒療治を加えることができる。


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