読書録

シリアル番号 1322

書名

グローバル経済の誕生 貿易が作り変えたこの世界

著者

ケネス・ポメランツ/スティーヴン・トピック

出版社

筑摩書房

ジャンル

経済学

発行日

2013/8/25第1刷

購入日

2018/1/31

評価



原題:The World that trade Created  Society, Culture, and The World Economy 1400 to the Present by Kenneth Pomeranz/Steven Topik

鎌倉図書館蔵

イントロで「貿易というものは会話と同じように自分の感情や思いを表現し伝える手段である」そして「文明化への最大の近道である」としている。物の交換より知の交換。

過去500年間、全世界の貿易がどのように成長してきたのか、地域と時代毎に具体例をあげて解説してくれる。読後のイメージは東が遅れているというイメージが払しょくされる。ヨーロッパからアジアに来た交易商人は既にそこにあったシステムに乗っただけのようだ。

経済の発展と通貨供給量は見合っていなければならないが、紙幣や貨幣の供給量が少なかったため絹織物が通貨代わりになった。(シルクロード)英国はインドには投資せず、ムガール朝のなけなしの資本もインジゴ・バブルで消えた。

なぜ中国が海上覇権をにぎれなかったかといえば、@明朝が内陸の治安の手一杯だったこと、Aそれと木材供給が不足してい船は高価であったこと、B季節風の制約で中継港までの交易で満足せざるをえなかった。

100万人という大都市がなかなかできなかったのは周辺の農地の余剰食糧は20%程度であるため、港や水路などが無い限り、広大な周辺農地が必用となり、 そのような環境に恵まれた場所は港のあるインスタンブール、運河のある東京や北京、井戸による感慨システムと遊牧民パンジャ−ラ族の牛による輸送システム を備えたデリーなど少ない。

貿易には輸送手段が必用であり、西洋の帆船がキーとなった。運河、鉄道と英国内ではせいこうしたがインドの鉄道建設は兵の輸送位しか用途が無く、失敗だった。

米国ではミシガン州やミシシッピ州から東部への鉄道が建設されると大規模農場による小麦生産が始まった。このとき不足する労働力を解決すべくサイラス・マ コーミックが開発した刈り取り機とジョン・アップルビーが開発した束にし脱穀するバインダーという農機によりアメリカの農民はリッチになった。この機械は 後にインターナションル・ハーベスター社となる。しかしこのバインダ―に使われる麻紐はユカタン半島のマヤ人の奴隷が栽培するサボテンからとるエネケンと いう繊維が使われた。

ジャガイモ、ゴム、綿花をめぐる話。

現在の日本は資本・技術集約的な生産に特化し、労働集約的な産業は台湾や韓国に移している。こうして東アジアは世界の分業システムの下位部門に統合されつ つある。これが成功するかどうかは世界に通じるブランドを日本が確率できるかということだろう。このキーは地域の文化や伝統が重要な役を担う。それが成功 するかいなかがその地域の文化が魅力的であるかどうかであろう。


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