読書録

シリアル番号 1298

書名

日本会議の研究

著者

菅野完

出版社

扶桑社

ジャンル

ノンフィクション

発行日

2016/5/114刷
2016/6/1第4刷

購入日

2017/01/18

評価



藤沢の書店で衝動買い。

国家基本問題研究所が新聞広告で「もんじゅ」の有効性を宣伝しているのをみて、どういう組織かとその資金源に興味を持って調べた。桜井よしこが設立した組織ということになっている。そして事務総長は椛島有三とわかって日本会議と同じ組織とわかった。朝日新聞の「日本会議をたどって」という特集も読んだが、どうもよくわからない。日本会議の資金源は神社本庁だという噂も友人きいたが、証拠はない。

「日本会議の研究」は登場人物に発行差し止めの訴えが出されていて、1月6日(金)に裁判所が訴えを認めたと報じられたので俄然興味を持った。だれが訴え たのだろうか。椛島有三からは文書が届いているだけのようだ。新聞では訴訟した男の名前は書いてない。アマゾンを見れば「2017年1月6日(金)以降のご注文 分につきましては、裁判所より削除を求められた第6章(289頁)の36字を抹消した【修正版】となります」とある。

たまたま藤沢の本屋で手に取った在庫本は2016/6/1第4刷だった。発禁本は価値があるというわけで即購入。第6章(289頁)の36字とはどれを指 すのかまではわからないが、どうも安藤巌が告訴人だろうということが推定できた。朝日新聞も言及を避けてる人だ。その後新聞は扶桑社が18日に決定を不服 とする異議申し立てをしたというので、まだ書店で売られているわけだ。裁判はどうなるかわからないが、まだ売られ続けることになるのだろう。

そもそもこの本は一介のサラリーマンが引退前に調べたことをハーバービジネスオンラインに連載したものをまとめたものだ。

とても面白く2時間で読破した。安東巌というなぞの人物が中心。殆どキリストとその弟子の関係のように展開する。キリストが谷口雅俊春、パウロが安東巌、 そしてその部下が椛島有三、皆、私より少しし若い世代だ。安藤の難病が信仰で治る奇跡、そして彼らの民主運動が成功して対抗する左翼運動家は霧散、結果、 安倍晋三とそれをとりまく政治家達という信者を得て、国家を動かすようになっていった過程が描かれている。

安藤巌の本態は最後の第六章まで殆ど姿を出さない。裏で日本会議の事務総長の椛島有三に指示をだしているという。この部分は裁判所は削除命令をだしていないので、裁判所が正しいとお墨付きをくれている感じ。

国家基本問題研究所の新聞広告の資金源はわからないが、安藤巌が始めた「元祖生長の家政治と関係を絶った後に「原理生長の家」というカルト集団を立ち上 げた。その資金源は「理想世界」という出版物100万部の売り上げだったようだ。どうもここが出版停止訴訟のツボのように思える。

 日本会議の主な資金源は正会員1万円、維持会員3万円、篤志会員10万円、議員会員1万円、支援会員3,800円、が会費収入だ。企業からの寄付や広告収入もあるだろうが「慢性的に資金不足だ」(日本会議)という。友 人O.は神社が金ずる ではと推定していたが、あまり大きな額ではないようだ。阿修羅によれば会員数はせいぜい3.8万人というので年間3.8-8億円にすぎず、専従職員で消えてしまい、数千万円必要な新聞広告費までは出 せない。会員数も高齢化が進行し、活動縮小傾向であることが指摘されている。また、世代交代がうまくいっていない可能性もある。安倍とともに引退という可能性もある。

椛島有三が事務総長を務める「日本会議」と「生長の家原理主義」とは同じ組織がかかげた別の名前にすぎない。政治家が「日本会議」に依存するのは資金源というよりその組織力と専従職員の事務だという。

日本会議の情念はアンチ左翼で立憲政治の破壊だ。安倍晋三のブレーンは皆この組織からでている。

@伊藤哲夫:「日本政策研究センター」を主宰しているが、「生長の家」が1983年に政治活動を停止したときに受け皿として設立した組織である。以後「生長の家」機関紙を繰り返し主張しているにすぎないが安倍政権の生みの親とよばれる。

A百地章(ももちあきら):憲法学者で「美しい日本の憲法を作る国民の会」の幹事長だが生長の家原理主義の日本青年協議会幹部にして「日本会議」政策委員。改憲論の中心。

B高橋史朗:明星大学教授で南京事件の記憶遺産登録反対意見起草者だが、正体は生長の家学生運動の闘士にして日本青年協議会幹部。南京事件が世界記憶遺産 に登録されたことに抗議する日本政府は、2016年9月末、ユネスコに反論のための意見書を提出したが、これを書いたのが、高橋で「南京大虐殺はなかっ た」と主張する東中野修道・亜細亜大学教授の本などを引用している。ところが南京大虐殺の証拠資料や生き残った女性の証言を捏造と断定したことが名誉毀損 裁判となり、東京地裁は「東中野の原資料の解釈はおよそ妥当なものとは言い難く、学問研究の成果というに値しないと言って過言ではない」として敗訴を言い 渡しているのだ。安倍政権のいい加減さがよく表れている。

C衛藤晟一(えとうせいいち)首相補佐官:生長の家学生運動家。伊藤哲夫を首相に紹介。「盟友中の盟友」となる。

日本会議の強さはその団結力と持続性である。市民運動が嘲笑され80年代以降、めげずに、愚直に、地動に、「そして極めて民を歩んできた、彼ら日本会議の人々によって日本の民主主義は殺されるのだろうと著者はいう。

なにもしないで傍観している一般の人々は選挙で彼らに投票しなければそれで終わりなのだが。ぼけた国民の感覚ではもう手遅れなのかもしれない。

この本を読んだときは雑情報として読み飛ばした部分が2017/2末になって、アッキー事件として国会で取り上げられ表面化する。本書で塚本幼稚園が日本 会議の集会の会場になっており、幼稚園児が教育勅語を暗唱しているという記述が出てくるのを著者のツイッターで知った。この塚本幼稚園の顧問弁護士だった 稲田朋実が戦前の成長の家の経典「生命の実相」をボロボロになるまで読んだという講演も出てくる。籠池なる名前も出てくる。これが安倍晋三記念小学校を開 講するために格安の国有地を財務省から払い下げてもらったというスキャンダルである。最終的に、申請書に不正があるという理由で学校法人の申請をみずから取り下げた。

神奈川県議がかなり日本会議に籠絡されているという情報がある。定員107名中、50名が日本会議メンバーだという。

以上読むとキリスト教系の団体かとおもうが、wikiでは日本会議は1997年5月30日に「日本を守る会」と「日本を守る国民会議」を統合して設立され たとある。日本を守る会は1974年4月に、円覚寺貫主・朝比奈宗源が神道・仏教系の新宗教に呼びかけて結成、政治課題に対して様々な保守的な政治運動を 行っていたとある。神道も仏教界もこぞって支持しているようだ。特に

Rev. October 22, 2018

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