読書録

シリアル番号 1264

書名

官邸の100時間

著者

木村英昭

出版社

岩波書店

ジャンル

政治学

発行日

2012/8/7第1刷
2012/9/5第2刷

購入日

2016/01/27

評価



友人のK氏からいただく。

著者は朝日の記者。福島第一事故後100時間の出来事が時系列で記録されているので歴史文書として価値がある。朝日に連載された「プロメテウスの罠」をベースにしてその後判明した事実も加え書き直したものだという。

読んでみると、同じ朝日の船橋洋一編集委員が「原発敗戦」で菅首相を内容のない形式論で非難したより本質を見ている本だ。

この本では事故時、首相を支える官僚組織が機能不全をおこしていたことを、当事者たちへの直接取材を通して描き出す。

これをよむということは当時TVにかじりついて見たこの事故を追体験することになる。官僚組織が機能不全をおこしたことの典型例が当時の原子力災害対策本 部長は東大経済学部出の文系官僚で原子力行政にかかわったこともない男だった。どうしてこうなるかというと「保安院長のポジションは文系と理系が交代でそ の地位にすわるという形式的悪平等の人事慣行のなせる業である。機能を目的とせず、給料をもらうことが目的となっているためだ。それに手持ちの携帯は危機 管理上通じないようになっていた。この携帯を特定のコンセントにつなげば自分の固定電話につながるのを知らなかった。そういう知識もなかったおそまつさ。 したがって原子力災害対策本部長は「おしでつんぼ」になっていたわけである。TVだけが情報源となる始末。最後まで読む気力が失せる。

これが日本政府の実力なのだ。


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