読書録

シリアル番号 1261

書名

世界の歴史 5 ギリシアとローマ

著者

桜井万里子、木村凌二

出版社

中央公論社

ジャンル

歴史

発行日

1997/10/25

購入日

2016/01/06

評価



家人がその友人からもらった本。

2016年の正月は塩野女史の「ギリシア人の物語」を読破した。紀元 前490年の第一次ペルシャ戦争と10年後の第二次ペルシャ戦争の物語だ。ずっと腹這 いになってよんだので背中が凝ってしまった。日本の歴史物に出てくる英雄豪傑も顔なしの激しさと独創性のオンパレードで、こういう話を読んで育つ欧米の人 々のバックボーンになっていると感じた。西洋の制度をまねても人の育ち方が違う。どうりで日本では人材が枯渇するわけ。

塩野氏は司馬遼太郎の後継者としてその節回しはいまだ快調で、これ読むと刺激を受けるが、すべてを書いていないため???となる。そこでたまたまころがっ ていた歴史ダイジェスト本を紐解いたわけ。巻末のギリシア・ローマ、その他の世界、日本の関連表を見ながら読む。

ミケーネ文化は青銅器で中央集権国家だった。それが紀元前8世紀ころ何も出土しなくなり、徐々に市民共同体自衛都市(ポリス)が出現してくる。そして鉄器 時代になり、ギリシア 文字もできている。塩野女史の物語りはこのころの出来事、ペルシャの専制国家の20万の大軍を急ごしらえの自衛市民軍6万を編成して指導して勝利する英 雄が忽然と現れる。この文化はまだアーチ構造を知らない。それがミケーネの遺跡の獅子 門に見られる。

ミケーネ文化を維持した王制が侵入してくる異民族に対処できなくなり、逃げてしまう。そこへ北から移住してきたギリシア民族が定住し、ポリスを 作って自己防衛しながら勃興してくるのだが、アテネとスパルタが異なった体制を作ったところが面白い。アテネは市民の中に階層はあるが裕福さに応じて兵役 義務 に差をつけて対処し、決定は全員の投票できめる。しかしスパルタは一番初めに北からやってきた少数のドーリア民族から構成される市民だけで防衛を担 当するため、市民皆兵にせざるを得ず、その教育と規律が厳しい。そして行政もしたこともない市民兵が1年任期で選ぶ委員会が独裁するというシ ステムはギクシャクして作動する宿命を持つというお話し。

ギリシアのポリスは征服民族が一番上の層を形成する。そんの中でも特にスパルタは被征服民族の人口のほうが圧倒的に大きいので、彼らには武器を与えず、 征服民族のドーリス人だけで領土防衛戦いをしたため、すべての男は7歳にして共同生活して軍事訓練に従事したという極端なやりかただったというのを初めて 知った。上着1枚で1年過ごす。パンツなし。オリンピックのゲームも丸出しだったようだ。ギリシアの彫刻が丸裸なのは美しいからというのではなく、実際に 丸裸だったようだ。むろん夏だけだけれど。この彼らが戦いのときは鎧で重武装し、1mの盾と4mの槍を持って密集隊列を組んで進むと無敵だったようだ。

トロイ戦争をした人たちはドーリス人らしい。ホメロスのイリアスとオデュセイアはいつか読もうと蔵書にあったはずだが、物置に収納したらしく書棚には見当 たらない。

子供のころは誠文堂新光社刊の野尻抱影の「ギリシャ神話」を読んだくらい。プルーターク英雄伝は高校の図書館にあったが、手には取らなかった。ちなみに野 尻抱影氏の弟が大仏次郎。

会社に入ってからはベクテルとJVのダス島のLNGプラント建設現場になったアラビア湾の島に7ヶ月滞在したときにアイザック・アシモフ選集を読破し た。その中にギリシアの歴史があったと記憶している。建設部隊が引き上げて私だけ大きなクラブハウスで暮らしたとき、慰めになった。キャンプ・マネジャー だった作山さんが用意してくれていたものと聞いた。

この1997年本の付表では日本で稲作が始まり、鉄を手にいれたのは4世紀となっている。この本はその後の新しい発見は反映されていない。今ではプラント オパー ルと放射性炭素年代測 定などの調査により、紀元前9世紀ごろには水稲稲作が開始されたと推測されている。

我が国で見つかった最も古い鉄器は、縄文時代晩期、つまり紀元前3〜4世紀のもので、福岡県糸島郡二丈町の石崎曲り田遺跡のが居址から出土した板状鉄斧 (鍛造品)の頭部であるという。そうすると鉄の伝来はギリシアよりは1世紀程度の遅れということになる。

長野正孝の「古代史の謎は「鉄」で解ける 前方後円墳や「倭国大乱」 の実像」はこれらの鉄素材は交易で手にいれたものでたらら製鉄の遺跡がみつかるのは5 世紀と大分遅れる。しかし弥生時代中期以降急速に石器は姿を消し、鉄器が全国に普及したが、すべてが交易で維持されたというのも不自然で製鉄は諸外国のよ うに使用と製造がほぼ同時期だった可能性は否定できない。


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