読書録
シリアル番号 |
1191 |
書名
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変化する地球環境 異常気象を理解する
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著者
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木村龍治
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出版社
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左右社
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ジャンル
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サイエンス
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発行日
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2014/3/10第1刷
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購入日
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2014/04/22
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評価
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優
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放送大学の教授のため、放送大学叢書
著者献呈本
西岡氏に紹介され、IPCCの予言が当たらないではないかとの質問をしたとき、いただいた著書。
先生の回答は真鍋博士のモデルは地球の放射層の二酸化炭素分子数が増えると放熱量がまし、これとバランスするために対流圏の温度が高めにシフトするという
ものだ。これ自体は問題ない。しかし本当にそうなるのかというと鉛直方向の温度分布を観測することは殆ど不可能。Gerhard
Gerlichが熱伝導がモデル化されていないというが、モデル化はされている。しかし数値予報の原理にはローレンツが発見したカオス現象という幽霊が付
きまとう。ゴルフと同じで初期値ですべてきまって以後制御できない。実は二酸化炭素の濃
度をいくらあげても平均温度は上昇しない。そこで海洋モデルをくっつけるのだが、海洋はゆっくり変化するに対し、大気はすぐ変化してしまう。したがって計
算のタイミングを合わせるのが難しい。というわけでIPCCの予測が当たらないのは至極当然。
人為的温暖化説を証明するために巨大なコンピュータモデルを作っても役に立たない。なぜ世の中はこんなあやしげなものに興奮するのでしょうかと先生はいう。
人為的温暖化説は原発推進者がことさら言及する。気象など10日先は闇の中なのだからそれを問題にすれば気象学者に対する不信感がますし、不要な炭素隔離
をしなければというバカバカしいことになる。正直に持続的成長のために省エネしましょうといえば政治への不信感はなくなるのだが。サッチャーはとんだ置き
土産を残したものだ。
このほか日本海は100年に1回の寒波の時に対流が生じて酸素が海底に供給されるなど一種のロールオーバー現象があることが紹介されている。ここで私が前から持っていた100年に1回の気候変動の波とIPCC予測の同期現象があるのではという疑問が脳裏に浮かぶ。
地震発生頻度と地震のエネルギーの対数であるマグニチュードはべき分布になるのは自然が不安定を解消するために状態で現れるとブルックヘブン国立
研究所のバックが指摘、砂山崩しも地震も自己組織化臨界系と呼んだとどこかで読んだことが書いてある。私は原発事故もべき分布になることを発見したが同じ
ことだろう。
この本はしたり顔がないところがよい。知的興味もわかせてくれる。