読書録
シリアル番号 |
1162 |
書名
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タイタン ロックフェラー帝国を創った男 上下
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著者
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ロン・チャーナウ
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出版社
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日経BP
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ジャンル
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伝記
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発行日
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2000/9/18
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購入日
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2013/10/01
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評価
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優
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原題:Titan by Ron Chhernow 1998
鎌倉図書館蔵
上下それぞれ4cmもある大部な本である。
吉澤均氏の「日本の弱体化と「官僚統治」の問題」にも指摘されていうようにフランス革命を起こしたイルミナティ、米国を建国したフリーメーソン、ユダヤ人
の建国の夢をついえさせた満州帝国建国の結果としてハル・ノート、そして、日本は敗戦国としていまだに国連では二等国扱い、米国の庇護からは独立していな
い。吉澤均氏は「宰相の器」たりうる人材の育成をしなければ官僚は動かないというが、育成などしようとしてもできない。そして現在の世界の金融の背後にいるビルダーバー
グ会議やユダヤネットワークのなかに日本人は入れないし、メンバーにしてもらえない。場がなければ人は育たない。結局米国にとって日本は従順な
官僚組織さえあればよいということになる。この米国には従うが日本のチンピラ政治家には従わない官僚機構をつうじて支配できる。選挙民が覚醒したところで、選挙ではなにも
変わらないという絶望の構造だ。どうすればよいのか?この構図は彼らにとって具合がよろしいから米国も中国も助けてはくれない。
イルミナティ、フリーメーソン、ユダヤ人について調べて備忘録1404を
作成した。ここでロックフェラー一族は15世紀までにスペインに入り込んで、広大な土地を領有する地主階級になっていたセファルディ・ユダヤの末裔だとの
説を紹介した。1492年にスペインのフェ
ルディナンド王とイサべラ女王は、ユダヤ人を国外追放し、ユダヤ人の財産を没収した。ロックフェラー一族が、トルコ帝国に移住したのは、
この時期である。当時、トルコはユダヤ人を、迫害されたかわいそうな人たちと信じ、歓迎したのである。副大統領だったネルソン・ロックフェラーの祖父は、
一族がトルコからフランスに渡ったと認めているとした。この点が気になってっていたのでこの本を借り受けた。
この本によるとトルコに関してはなにも書かれていない。ロックフェラーのルーツは9世紀フランスのロクフィユ一族に遡るとある。南フランスのラングドック地方(スチーブンソンの「旅は驢馬をつれて」
が舞台)の城にすんでいた。1685年ルイ14世がフォンテーヌブローの勅令によりナントの勅令を廃止したため、ユグノー教徒だった一族は宗教的迫害をさ
けるためライン地方のコブレンツにちかいザーゲンドルフに移住し、姓もロックフェラーと改名したという。ナントの勅令とはアンリ4世が発布。プロテスタン
ト(ユグノー)などの新教徒に対してカトリック教徒とほぼ同じ権利を与え、近代ヨーロッパでは初めて個人の信仰の自由を認めたもの。ナントの勅令の廃止に
よってプロテスタントの大半は国外へ逃れ、フランスの衰退を招くことになった。プロテスタントは、産業の中核を占めていたため、財政の悪化を招くことにな
り、フランス革命の遠因を生み出すきっかけにもなった。
このようにジョン・D・ロックフェラーの先祖はユグノー教徒だった一族出身とされている。その昔はわからない。祖母ルーシーはイギリスのデヴォンからマサ
チューセッツ州セーレムに移民したエイヴリー一族の出で、バプテスト派信者。母のイライザはスコトッランド系アイルランド人の血を引く、バプテスト派のデ
ヴィソン家の出身。妻はマサチューセッツ州出身のハーヴェイ・ビュエル・スペルマンとピューリタン直系の子孫であるルーシーヘンリーの娘。ハーヴェイ・ビュエル・スペルマンは奴隷制廃止主義者で禁酒運動家であった。
さて先祖問題はこれくらいにして、何がジョン・D・ロックフェラーの成功の原因だったのかだが、ちょうど南北戦争終了後の鉄道発達時期とペンシルバニアで
の石油の発見のタイミングが与えられていたこと。精製拠点がクルーブランドにあって製品を複数の鉄道とエリー湖の水運に価格競争させることができる位置に
いたこと。これに経理に強く、真面目で真摯な管理者的能力をもった男が自分の判断でバンダービルドなど複数の鉄道経営者と多量の貨物を安定的に運ぶ約束をして運賃
低下交渉をうまく行って、コストで勝ち抜くことができたからであることがわかる。
過剰生産に陥り、総倒れが予想されると、クリーブランドとニューヨークを結ぶペンシルバニア鉄道、エリー鉄道、ニューヨーク・セントラル鉄道に一定の比率
で石油製品輸送を依頼することを条件にリベート支払いという実質50%という値引きの秘密契約を結ぶにいたる。これは石油生産者の反対で頓挫するが間髪を
いれず、倒産におののく同業者を買収してしまうという手に出て成功。
次のフェーズがパイプライン敷設である。これも間髪をいれずパイプラインに投資し、リードを確保。ペンシルバニア鉄道がパイプライン敷設をして競争を挑ん
できたときもあらゆる手段をつかってつぶした。独立系のタイドウォーターがパイプラインで挑んできたときも価格を下げてつぶしている。
Rev. October 10, 2013