読書録
シリアル番号 |
1151 |
書名
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林業の創生と震災からの復興
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著者
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久保田宏、中村元、松田智
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出版社
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鞄本林業調査会
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ジャンル
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ビジネス
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発行日
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2013/7/17第1刷
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購入日
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2013/7/20
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評価
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優
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著者よりの謹呈本
ざっと目をとおした。有益な提言であふれているが、気になる提言も若干ある。
有益な提言:
@森林を「水土保全林」70%、「森と人の共生林」13%、「資源の循環利用」17%の3区分に森林面積を分割し、83%の森林管理を税収で賄おうとして
硬直した森林行政が人工林の41.5%の利用放棄を強制している矛盾。これは水田を休耕田にするとおなじ、このような弊害のある官の干渉はようやく廃棄された。
A二酸化炭素排出権取引制度の根拠はIPCCの政治的なもので純粋科学的に証明されていない。
B外務省の権益であるODA予算を海外の環境植林のために使うのは持続可能でない。産業植林でマネーバランスのとれる持続的なものでなければならない。
C搬出コスト削減のための林業機械の活用。そのためには零細林業の統合が必用
D鹿の食害防止に高価なフェンスをやめて、ポリプロピレンシートで覆う
E森林のエネルギー生産量は小さいので期待するのはまちがい
FFIT制度をバイオマス発電に適用すると森林は荒廃する
Gカーボンニュートラルのレトリックで採用されたRPS法は海外の森林を荒廃させている
気になる提言:
@国産スギ材の価格は2000年以降米ツガ材の価格を下回ったが、2010年以降再度上昇傾向となった。更なる振興のためには搬出路網整備を税金で行うべ
きといっているが、税金を補助金として投入することは農林役人の権限をつよめるばかりで税金の無駄使いとなる。搬出路の整備は林業者が共同で共有地を出し
合い、1回限りの未舗装で使うべきであろう。なぜなら利用頻度が低いからである。このような税金を掠め取る原子力村の主張と同じ類の主張は林業関係者の利
益誘導のようにも見える。共著者の一人が商社系の林業経営者で産官学複合体を構成しているからであろうかと思ったがそうではないという。ならば現場を知ら
ない机上の空論のひとつであろう。
A外国産の広葉樹パルプを国産のスギをつかったパルプに置き換えるといっているが、スギは植林費用が掛かることに気がついていない。皆伐し、伐採後地には竹や
笹が茂っても、実生から発芽した広葉樹の二次林が自然に再生される。このことは昔の人は良く 知っていた。広葉樹林は放置林として人件費を含め、管理費がかからない樹種として再評価するべきであろう。でないと持続可能ではなくなる。
Bコンピュータをつかった欧米流製材技術全盛の木材マーケットに参入するには蒸気処理による木材加工後の狂い防止処理が必要だが、弱小森林所有者のそのような施設への投資法の見地が欠落している。