読書録

シリアル番号 1135

書名

手紙、栞を添えて

著者

辻邦生、水村美苗

出版社

朝日新聞社

ジャンル

文芸

発行日

1998/3/1第1刷

購入日

2013/03/04

評価



ノースウエスト・アース・フォーラムにおいて小笠原さんの思い出話「シルクロードで唯一取 材出来なかった国」を私のHPに掲載しているが2013/03/04に青年海外協力隊平成17年一次隊でアレッポの折田先生と同じ研究所に勤務さ れていたTさんからメールが入った。シリアに骨を埋めた折田魏朗氏について思い出を話したいということであった。

小笠原さんは辻邦生の「時の扉」にでてくるコーヒー占いをするリディアという女性が折田魏朗氏の奥さん(シリア人)だと書いてある。私は辻邦生の小説など 読んだこともない。図書館で借りて読みたくなったので図書館に行くが代表作しか置いてない。家内に聞くとこの本がでてきた。家内がアマゾンから中古本をとりよせたという。水村美苗は ファンなので手に取って1時間で大方読破してしまった。私が1時間で読めたのは水村の部分だけを拾い読みしたから。辻邦生は博識だが、学者の論文のようで 面白みがない。辻と同じころシリアに居たことのある女性のブログでは。『時の扉について人物像が類型的である。まず女性たち。「卜部すえ」と「梶花恵」 は、純情無垢と傲慢放埓、ひどく対照的に描かれているが、両者ともあまりに極端で、こんな女性は見たことがない。そのあとで会う女性達が、みな、この2種 類に分類されているので、この方、女性経験が殆んど無いのかしら、作家の割りに、と思ってしまう』と書いていたのを読んだため、図書館にでかける気力もな くなった。水村の部分をのぞけばアンブローズ・ビアスではないが「本書は表表紙と裏表紙とのあいだがあまりに離れすぎている」という一言でよいだろう。女房のほうは水村は苦手らしい。たで食う虫も好き好き。

この本は毎日新聞の企画でそれぞれが手紙というかたで文芸評論をするという趣向だ。水村の提案で最後まで二人は会わずに手紙の交換をしたという。そういえば昔、朝日 で連載していたのを記憶しているがついに読まなかった。なにか気取っている臭さをかんじたからかもしれない。それでも水村の書いたものは今までも53010121065と3冊ある。

水村からの最後の手紙、トスカーナの僧院で朝5時にかきあげたという長文の手紙がプロローグとして冒頭にでてくる。これが圧巻で、辻などは打っ ちゃり寄り切りで完敗。はたせるかな以後の辻の手紙を読んでも取り上げた作品も地味なら、書き方も平板で学者の論文のようだ。頭のなかにイメージがわか ず、飛ばしてしま う。だから1時間で済んだ。

水村のとりあげた吉川英冶の「宮本武蔵」、シャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」、エミリー・ブロンテの「嵐が丘」、ドフトエフスキーの「カラマー ゾフの兄弟」、スタンダールの「パルムの僧院」の評論はビビッドで目の前に記憶が鮮明に蘇る。「ジェーン・エア」は最近キャリー・ジョージ・フクナガ監督の2011年の映画をTV録画で観た。わたしの好みは水村と同じで「カラマーゾフの兄弟」を除いてすべて読んで いることもあるかもしれない。

それにしてもシリアはどうなるのだろうか。日本政府はゴラン高原から自衛隊を撤退させるなど国際感覚はゼロ。このように戦場から逃亡する国は世界から軽蔑される。尖閣はとてもまもれない。

Rev. June 30, 2013


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