読書録

シリアル番号 1117

書名

戦艦武蔵

著者

吉村昭

出版社

新潮社

ジャンル

歴史

発行日

1971/8/14発行
2012/3/5第75刷

購入日

2012/10/23

評価



新潮文庫

大学の同門、倉見から面白いから読めともらったもの。彼自身、高校の同期の元共同通信専務から勧められたという。読み始めると止まらない。

呉海軍工廠で1号艦大和、そしてそのデッドコピーとしての2号艦武蔵の建造は三菱が担当した。この本はその建造と沈没までの一部始終。

三菱の長崎造船所では武蔵建造時に棕櫚のロープを編んだすだれで船台を囲った。かつ、警察は興味を示す市民を逮捕しまくったという歴史が皮肉一杯に描写されて、 当時の狂気を描き切っている。それが評価されたのだろう、75刷の重版を重ねている名著だ。軍機密の設計図を焼却炉に投げ込んで、その職場を離れたかったと いう若年製図工の逸話などがでてくる。

現在は観光地になっているハリス邸やグラバー邸は機密保持のため海軍や三菱が買収したのだという。そして英国領事館から船台が見えないように長崎市が巨大な倉庫を建設した。

船台の勾配は3%あれば進水は可能なようだ。盤木と支柱を外して船体の重量を舟底に固定した滑走台と船台に固定した固定台に移す。最後に銀斧で支綱を切断 すると滑走台と固定台の間に取り付けられたすべり止め安全装置が一斉に落下して船体は滑り始める。当時は獣脂を塗ったが、現今では鉄のボールをはめ込んだ ボールベアリング方式となっている。武蔵の進水で小さな津波が対岸の住宅地を襲ったという。

横須賀で3号艦が起工されたがミッドウェーでの航空機の威力をみて、空母に改装された。そして呉での4号艦建造は放棄された。

武蔵は居住区が良かったため連合艦隊の旗艦となったがトッラック島泊地で米主力艦隊の決戦を待って無為に時間を費やした。肝心の山本長官がラバウルで戦 死。その後、武蔵は栗田艦隊のレイテ突入作戦に参加、シブヤン海(Sibyan Sea)で沈没。正確な沈没位置などは分かっていない。シブヤン海中央部にはロンブロン島、タブラス島、シブヤン島などからなるロンブロン諸島がある。かってネグロス島南部の地熱発電とバコロードの砂糖黍畑と粗糖製造工場を視察のためネグロス島にでかけたことがあるがこのとき、シブヤン海上を飛んでいる。

全乗組員2.399名中生存者1376名は武蔵沈没を秘匿するためにマニラに上陸 を許されず、コレヒドールに隔離された。輸送船で高雄に向かう途中バシー海峡で潜水艦に沈められ生き残りは120名に減る。この半数は内地に帰れたが、瀬 戸内海の小島に軟禁された。


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