読書録

シリアル番号	1105
書名	哲学オデュッセイ : 挑発する21世紀のソクラテス
著者	リヒャルト・D・プレヒト
出版社	悠書館
ジャンル	哲学・思想
発行日	2011/11
購入日	2012/03/11
評価	優

総合知学会の上草先生の推薦本。

原題：Wer bin ich und wenn ja, wie vile? Eine philosophische Reine (私はだあれーーーしからば、どれほど？ある哲学の旅)

2012/3/11鎌倉図書館に注文したら、神奈川県立図書館蔵本が3/25日届いた。ドイツで100万部うれたベストセラーだとのこと。

イマヌエル・カントが人類にとって重要な問いを次の4つに分けた「私は何を知ることができるか？私は何をなすべきか？私は何を望んでよいか？人間とは何か？」本書はこれによって構成されている。

私は何を知ることができるか？についてまず脳科学から始まる。日本では文系哲学を哲学だと思っているがこれは時代遅れ。文系哲学は言葉が空転するだけで時間の無駄。この本は読む価値があると判断した。

まず出てくるのはニーチェの認識論。われわれは感覚器官で入力されるものしか認知できない。人の目は眼前のものを見ることしかできず、横は首を回さなければ見えない。したがって我々は一時に一つのことしかできないのもこの構造に由来する。水槽の中の父魚が息子に「世界は水で満たされた四角い箱である」と説明する印象的な花がでてくる。

脳科学はイタリアのサンティアゴ・ラモン・イ・カハールに始まるとする。そういえば2010年の年賀状に使ったニューロンのスケッチはカハールのものだった。その後、米国のポール・マクリーンが3つの脳説を出し、フランスのポール・ブロッカーとドイツのカール・ヴェルニッケが脳の領野を特定した。ついでオーストリアのエルンスト・マッハ、スコトッランドのデビッド・ヒュームが自我は諸知覚の複合集積のようなものでそれ以上ではないと証明。自我とは幻想で自我中枢というものはない。こうしてカントは間違いだとする。

無意識を発見したジークムント・フロイド

ラッセルの弟子ウィトゲンシュタインの業績は心を打たない。唯一「あらゆる哲学は言語批判である」くらいか。

ルソーも面白くない。

チャールズ・ダーウィンの「私の遺伝形質は地球全体で最も重要な実質である。これが生き延びることができるためには、他のものが損しようとも、あるいは必要とあればたとえ死のうとも、それは正当化されるのである」は原子力カルトの信仰か？

ショーペンハウアーは「心にそぐわないことは、頭もついていけない」といった。ベンジャミン・リベットはサンフランシスコのマウント・シオン病院で生きた患者数人の露出した脳に電極をつけて微弱電流をながし、刺激後被験者がピクッと反応するまで半秒かかるのを観察した。1979年にリベットは女性被験者が自由に手首を動かす決心をした時刻を覚えていてもらうという実験をした。その時の頭部の電極の動きが彼女が自己申告した時間より0.5秒はやく、手が動いたのは申告した時間より0.2秒あとだった。ショーペンハウアーの心とは無意識または前意識、潜在意識であることが実証された。

ダイナマイト事故で前頭葉の腹内側野（ventromediale Region）を失ったフィアネス・ゲージは道徳的な感情を失ったということから道徳観念もすべて本能に組み込まれていると考えられている。ちょうどノーム・チョムスキーが発見した生成文法があるように。

おなじことはハーバード大の心理学者マーク・ハウザーが30万人以上の人々に下記の２つの質問をして人種、宗教、年齢、性別、学歴、国籍、犯罪歴にかかわらず同じ回答を得たことからも分かる。

質問１：無人の貨車が5人のレール作業員員に向かって突進してくるのをみた。あなたは声で知らせることはできない。ふと見るとポイント切り替えがあなたの前にあるそれを右に倒せば貨車を待避線入れることはできる。ところがそこには別の作業員が１名作業している。あなたはどうする？

質問２：無人の貨車が5人のレール作業員員に向かって突進してくるのをあなたは跨線橋のうえで発見。あなたは声で知らせることはできない。そこであなたは何か落として貨車をとめられないか周りを見回したところ、近くに非常に肥った人がたっているのを発見。手すりは低い。たったひとつきで彼は下におち、貨車の下敷きになって、貨車はとまるかもしれない。あなたはどうする？

Rev. April 2, 2012

Rev. March 3, 2012

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