読書録

シリアル番号 1102

書名

科学技術の視点から 原発に依存しないエネルギー政策を創る

著者

久保田宏

出版社

新潮社

ジャンル

環境

発行日

2012/2/5第1刷

購入日

2012/2/29

評価



著者は東工大の名誉教授である。先生はこの本で石炭こそ原発代替の本命と指摘している。そもそも石炭火力の発電単価は廃棄物処理を含めれば原発よりやす く、今後も安いことが期待される。

ところがなぜか日本では人々の頭の片隅にものぼらない。なぜかというとヨーロッパが工夫した京都プロトコルという魔法に洗脳されたからだ。温暖化二酸化炭 素主犯説はまだ科学的に厳密に証明されたわけではなく、先進国が発展途上国の無秩序な化石燃料利用を危惧して、政治的にこの仮説を利用したからと私はかん がえている。先生もそのように考えられている。

石炭といっても今後はガス化発電だから効率も向上し、大気汚染も引き起こさない。ただ人々の洗脳の度合いが深いのでこの提案は勇気が必要だ。

日本では原発事故後あわててスポットLNGを手配した結果、価格は高いし、PVはまだ普及していないし、本州には高緯度の安定した風が吹かないし、関係な いが半導 体工場は倒産するし、富士重工などの自動車会社の生産ラインは止まるし、で原発再稼働やむなしの風が吹き出した。もと来た道。石炭で活をいれないと原発が ゾ ロ、動き出すおそれあり。

そもそも日本の製造業は魅力的な商品開発せずコスト競争に血祭をあげてきたため、原発なしではという暗い雰囲気だ。コストしか頭にない石頭の経営者には石 炭で安い電力を作ったらどうですかと提案すべきだろう。電力はなにも電力会社から買う義務はないのだ。自分で安い単価で発電して余ったものを電力に売った らいいだろう。世界に売れる商品がないなら余った土地で電力をつくって売ればよい。電力の小売り自由化さえしてくれればいいのだ。

私の黙示禄もヨーロッパの魔法による洗脳の結果、石炭をあまり評価せず我田引水のLNGに偏重している。これを反省し3月末までに先生の説をエネ ルギーミックスを2030、2060、2090年ケースに反映しようかと思案したが、詳細な需給バランスはパスして言及するにとどめよう。

ドイツがやすやすと脱原発できるのは現在は石炭火力が中心だし、国内産の石炭と褐炭があるから、いざとなればそのまま使える安心感があるからではないかと 考えら れる。日本とドイツの2008年の電源構成と ⇒ 2050年のそれは下表のようになるのだろう。


2008年日本
2008年ドイツ
2011年ドイツ実 績(独エネルギー水道事業連合会資料)
2050年ドイツ計画
原子力 30.7
27.6
18
0
天然ガス 23.7
11.7
14
23.0
石炭 27.6
47.3
19(石炭)+25(褐炭)=44
23.1
石油 12.0
1.4
その他と5%
1.6
再生可能エネルギー、合計 3.2 15.0 20 49.5
再生可能エネルギー、水力
3.0
2.8
3
2.8
再生可能エネルギー、風力
-
-
8
-
再生可能エネルギー、バイオマス
-
-
5
-
再生可能エネルギー、PV
-
-
3
-
その他の再生可能エネルギー
-
-
1
-

ドイツでは瀝青炭の炭鉱はすべて閉山しているという。東ドイツの褐炭の露天掘りは、採掘コストが安いので、まだ掘っている。ただし褐炭火力発電は、上記の よう に、かなりの削減を予定しているという。私の感じではこれはあくまで目標であって経済競争力が弱れば石炭はそのまま残ると思う。世界的なグリーン運動のな かでは石炭とは公式には言えないがなにもしなければ石炭・褐炭があるという安心感は大きい。深く考えずに京都プロトコルを批准したのは浅はかな考えの電力 平岩の裏工作の結果だろう。2012年になったPVのコストダウンを反映してドイツではFIT制度のひずみ是正のため買い取り価格の削減することを検討し ている。

民間事故調の北澤氏がTVで語ったコメントは正月4日に2時間半かけて北澤氏から直接聞いた話と同じ内容だった。今日のTVでは役所が全く事故を想定して いなくて機能不全になったことを痛烈に批判していた。そ もそも役人に期待するのが間違い。政治家がしっかりしなければと飛び出した菅さんも自分の役どころを間違えた。でも私は菅首相を批判した側が間違っている と 思っている。

結局どう人間がじたばたしたってあの原子炉が頑としてメルトダウンにむかってまっしぐらにつきすすむように設計されていたのだから。(格納容器内のMO 隔離弁がAC電源喪失で開閉できなくなっていた)自殺内閣の野田某も困ったものですね。この自殺願望の原子炉の設計を変える決断ができない電力業界は原子 炉にマスクだけつけて運転したいなどといっている。どうしたらよいかも分かっていない連中だなーとあきれてしまう。化学プラントなら、さっさと設計変更し て 改造してから運転再開となるが、1年経過するのに原因解明と対策がばらばら。互いの顔をみながら小田原評定しているだけで、設計図を見ている奴がいないと いうか設計図がないのいかもしれない。すべてが空気をよみつつ手さぐりでそろりそろりとうまくやろうという輩の集団だ。グッドラックともいえない。こちと らが被害者になるかもしれないのだ。

Rev. March 17, 2012


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