読書録
シリアル番号 |
1086 |
書名
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卑弥呼も赤い罠 |
著者
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吉村達也
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出版社
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集英社
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ジャンル
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小説
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発行日
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2011/4/25第1刷
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購入日
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2011/10/7
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評価
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良
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早稲田の木下先生の薦めで英国1ヶ月滞在中によむために購入。これは数日で読破。
考古学者が主人公でそれを取りまく人間たちのミステリー。卑弥呼が北九州か大和かの論争をうまく使ったミステリー。吉村達也は古事記や日本書記は中国語で
書かれていることを指摘している。
木下先生は文吉村達也の指摘を受け文法がちがえば人間の思考法も違うとの説を展開している。そこで英国人に木下先生の言わんとするところを話したところ、
英国人だとて人間だ、思
考法の違いがあるにしても文法の差ではないだろうと言う。日本書紀とか古事記(その前駆体も含め)は中国語(日本人は過去100年の優越をかさに中
国語とは言わず漢文という)で書かれ、その目的は中国の皇帝に日本国王の地位を認めてもらいためであった。と説明するとなるほどと納得顔で聞いてくれた。
日本人の漢文は英国人のラテン語やギリシア語で相似の関係にあるというと唸っている。
「言語と思考回路」の関係についてはノーム・チョムスキーは人間の頭脳の言語回路は基本的に同じで、言葉の違いはまさにコンピュータの機械語とC++の関
係のようなものだと言っているように理解している。要は機械語とC++の翻訳の約束事が違うだけで言語をインプットして認識し、行動にでるメカニズムは言
語に関係なく全く同じと考える。
日本の政治が西洋に比べておかしいのは本当の情報が秘匿されるというだけのことのように思う。日本のマスコミは権力に加担して肝心のことは報道しない。だ
から淘汰されるべきものが淘汰されずいつまでも残って悪をする。BBCは7チャンネルを持っていて、ニュース専用チャンネル
の他に議会専用がある。マードックスキャンダルのヒヤリングを延々とやっている。みなよくしゃべる。言語の影響よりも、他人とでくきだけマーマーとやって
ごまかす文化と素直に表現する文化の違いが大きいと思う。というわけで私のように裏表のない人間はロンドンでは過ごしやすいということになる。日本では相
手の気持ちを逆なでしないように自粛するばかりでなく、行き過ぎて、大勢(権力によって洗脳された見方)と異
なる
意見を持つ人間を排除する力学まで発生する。
木下先生は
日本人は虫の声や鳥のさえずりに心を揺すぶられるが、アングロサクソンやラテン系民族はそう感じないという。これもそういう環境に育ったかだかど
うかで、生まれつきの脳の構造が違うからとはいえないだろう。聞くのも人種差別主義者のようではばかられるが、あえて聞いてみると英国では寒いのでそもそ
も虫は
すく
ない。それにきれいな音をだす虫はいない。それにレイチェル・カールソンが「サイレント・スプリング」で指摘したように虫はほとんど農業のために絶滅して
しまった。という答え。私だってだ
いたい侘びだの寂だのわからない人間だから、虫やカエルの鳴き声はうるさいとしか感じない。セミ、コオロギはそうだし、鈴虫なんていない。
木下先生は日本人は民族の殺し合いを繰り返してきた欧州人とは違うというが、日本の歴史を見ると、戦国時代も西洋とおなじようなもの。聖徳太子が「和を
もって貴しとなす」といったのはそういわざるを得ないほど、当時は抗争に明け暮れていた。結
局、聖徳太子没後その子孫は滅亡してしまうくらいの乱世であったと木下先生は指摘する。そして太平洋戦争で
は
米国と派手にやりあったではないか。
木下先生は言語構造の違いが脳構造の違いからくるという想像をしているが、むしろ言語より個体差が大きいと感ずる。世界観が真っ向から対立することの多い
リ
ベ
ラル派と保守派だが、実際、脳の構造が異なっていたとする研究成果が、9月7日の米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)
に発表された。
英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College
London、UCL)の研究チームは、健康で若い成人90人を対象に実験を行った。自分の政治的志向を1の「非常にリベラル」から5の「非常に保守的」
まで5段階で評価してもらったあと、脳をスキャンした。その結果、リベラル派であるほど前帯状皮質の灰白質の容積が大きく、保守派であるほど右へんとう体
の容積が大きい傾向があることがわかった。前帯状皮質は複雑性の理解に関連しており、不確実性や対立をチェックする機能を持つ。そのため、前帯状皮質が大
きい人ほど不確実性や対立への認容性が高く、リベラルな物の見方を許容しやすくなると考えられるという。一方、へんとう体は恐怖心の処理に関連しており、
これが大きい人ほど、反感や脅すような表情に敏感で、危機的状況に際してはリベラル派以上に攻撃的に反応する傾向があるという。
これまで、一定の心理的特
性でその人の政治的志向を予測できることは知られていた。政治的志向を脳活動と関連付けた研究はあったが、脳の構造と結びつけた研究は今回が初めて。私が
参加している理系中心の学会の方々は前帯状皮質が大きい傾向があるといえるのではないか。それどころか複雑性研究を本職にしている現役の大学教授もいる。
一方、通産系の学会の文系会員は右へんとう体の容積が大きい傾向があるという感じ。どうも私の文系・理系二分法より説得力あるかもしれない。ただ理系には
どち
らかというと複雑性とかリスクを怖がらない性向があり、文系は感情の奴隷という傾向はあるだろう。だからこそ偉大な文学者がうまれるのだ。高校の同期の半
分は文系で役人やマスコミで働いた人間がおおいが、揚げ足取りは得意だし。失礼だが考えは硬直してだれか先人が言ったステレオタイプの歴史観を展開し、新
しいことに興味を持たず独自の見解を持た
ない。議論はしたがるが、既知の考えを壊れたレコードのように繰り返すので論争相手として退屈至極、時間の無駄と感ずる。さてこの脳
の構造が生まれつきなのか、その人の生きた環境の影響なのか、はたまた国によってこの比率がどうなっているのか興味がある。特にロンドン滞在中であったた
め、そういう意味で東洋と西洋でこの比に差があるではと気になった。
ノルウェー人2人と英国人1がロンドンでのお別れパーティーを開いてくれたとき、この違いを披露して、あなた方3人はいずれも理系だし、考え方はリベラル
に感じるがというとノルウェー人2人は特に異論はなさそうだったが、英国人は俺がリベラル???と異論がありそうだった。