読書録

シリアル番号 1067

書名

勝者の代償 ニューエコノミーの深淵と未来

著者

ロバート・B・ライシュ

出版社

東洋経済新報社

ジャンル

経済学

発行日

2002/8/1第1刷
2002/10/1第2刷

購入日

2010/09/13

評価

原題:The Future of Success by Robert B. Reich

鎌倉図書館蔵

ライシュの「暴走する資本主義」b981は2年前に新刊本で読んだ。この本はもっと古いが良書である。

大規模、多量生産が産業の中心だったオールドエコノミー時代はピラミッド型の官僚組織でトップは判断だけしていればよかったし、製造担当は黙々と繰り返しをしているに過ぎなかった。営業担当やセールスマンは特定の製品を詐欺師まがいの技芸で売ればよかった。オールドエコノミー時代の大企業はスリム化しようとしている。大勢居た世界中の誰か他の人によってとって代わられるような人は経済的基盤を失いかけている。大組合による賃上げと結果としてのインフレーションはボルカーの高金利時代を契機としてなくなり、ニューエコノミー時代に突入したのである。

ニューエコノミー時代はインターネットの普及とグローバル化時代により生産拠点は不要となり、低賃金国に発注すればよいだけとなる。結局企業は何かに夢中になってブレークスルーを生み出す変人(主として男の特性、芸術家、ディレクター)とそれが売れるかどうかを見抜く精神分析家(主として女の特性、エージェント、プロデューサー)が組んで富を生み出すことしかなくなってしまった。まさにシュンペーターの創造的破壊の理想郷が出現したのである。経営者は何かを生み出す変人と精神分析家の居所を作り、適切な場所に配置し、金の卵を産む環境を作る能力が必要となる。変人と精神分析家の両方の才能を持つ人は企業家的天才である。このような変人、精神分析家、経営者は金持ちになる。たとえばウィリアム・シェークスピア、アイザック・ニュートン、ベンジャミン・フランクリン、クロード・モネ、ヘンリー・フォード、ビル・ゲーツ、スティーブン・スピルバーグ、レナード・バーンスタインなど。成功するベンチャー・キャピタリストはこのような天才を見つけ出す力を持っている。このような人材が集積している地域はボストンのハイテク回廊、シリコン・バレー、ハリウッド。


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